著者
古屋 紀之
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.14, pp.1-20, 2002-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
97

弥生時代~古墳時代の墳墓から出土する土器・埴輪類の出土状況をテーマとした研究は,幅広い時期・地域において行われている。しかし,墳墓研究における重要なテーマであるにもかかわらず,相互に連絡が無く,方法論においても未発達な部分を残している。本稿ではこの分野の総合的な研究の一環として,弥生時代後期~古墳時代前期の墳墓における土器・埴輪配置を,墓制の種類や土器・埴輪の区別を問わずに分析し,両時代間の社会変化の様子を葬送祭祀という側面から描き出そうとするものである。方法論の整備にも挑み,「配置位置」・「器種構成」・「使用土器系譜」・「出土時の状態」・「墓の階層性との関係」の五つの項目にわたって検討を加えた。そして,ある程度類例があり,志向性を読み取れるものについては「葬送祭祀」として認定する作業を行い,各祭祀の系譜関係を追及した。分析の結果,およそ次のような変遷をたどることができた。(1)弥生時代後期における地域性豊かな共同体的飲食儀礼の盛行。四国北東部地域・吉備地域・山陰地域・近畿北部地域で主体部上に土器配置を行う祭祀が共通して見られたが,土器配置と墓の階層との関係は地域によって様々であった。(2)祭祀の再編期。庄内式~布留式古段階併行期に各地で儀器の象徴化が進行し,地域限定型の囲繞配列が出現したが,これらの囲繞配列に使用された祭器は前代の在地の祭器の影響が濃く,地域色が濃厚である。(3)古墳における葬送祭祀の完成期。前期後半段階に円筒埴輪の普及に伴い囲繞配列を行う地域が増える。また,飲食儀礼が衰退し,供献儀礼へ移行していく。今回の分析の成果のうち重要なことは,弥生墓制における葬送祭祀と墓の階層性との関係が各地域で異なるということである。おそらく,各地域社会における葬送祭祀の社会的役割の違いがこの要因であり,このことが,次代の前方後円墳の葬送祭祀への影響の濃淡として表れると考えられる。

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後で読む。 古墳出現前後の葬送祭祀 土器・埴輪配置から把握される葬送祭祀の系譜整理 https://t.co/OPUWyAw3mz
@fushunia 成程、古代の頃には吉備の穴海があり、水際に沿って古墳が連なっていたのですね。それで豪雨の際には古代の頃に近い風景になってしまうのですねhttps://t.co/g75d56NEQf 。吉備地区の古墳に特徴的なのは飲食具が多い事ですかね。https://t.co/l9xkUUahlA器には吉備団子もあったのだろうか?

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