- 著者
-
生田 拓也
- 出版者
- 西日本整形・災害外科学会
- 雑誌
- 整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.2, pp.284-286, 2020-03-25 (Released:2020-04-30)
- 参考文献数
- 8
THA術後MRSA感染症に対して局所高濃度抗菌薬投与を行いインプラントを温存し感染を沈静化できた1例を経験したので報告した.症例は86歳,女性,当院で左THAを行い順調に経過し外来にて経過観察を行っていたが,術後2ヶ月時に尻餅をついてから左臀部痛が出現してきた.術後3ヶ月の再来時に創部より排膿があり,術後感染と診断した.起因菌はMRSAであった.関節切開掻爬を行い,術後はGM 240 mg/dayにて持続洗浄を行った.術後3週でGM 120 mg/dayとし,術後4週まで持続洗浄を継続した.術後3週でCRPは陰性化(0.3 mg/dl以下)し,術後6ヶ月時再発を認めていない.人工関節術後感染においてはbiofilmが形成されていることが想定され,抗生剤はMIC(minimum inhibitory concentration)よりMBEC(minimum biofilm eradication concentration)を基準として投与量を決める必要がある.本法はMBECを維持できる投与を行うことが可能であり有用であった.