- 著者
-
阿部 雅紀
- 出版者
- 日本大学医学会
- 雑誌
- 日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.4, pp.237-241, 2019-08-01 (Released:2019-09-20)
- 参考文献数
- 21
慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease: CKD) の食
事療法としてのエネルギー摂取量の設定にあたっては,
目標とする体重とともに,摂取たんぱく質との関係が重
要である.エネルギーは,性,年齢,身体活動レベルな
どを考慮するが,25~35 kcal/kg 標準体重/日で指導し,
身体所見や検査所見などの推移により適時に変更する.
過剰なたんぱく質摂取は糸球体過剰濾過を促進し腎機能
に影響を与え,腎機能低下時にはたんぱく質の代謝産物
が尿毒症物質として蓄積する.標準的治療としてのたん
ぱく質制限は,ステージ G3a では 0.8~1.0 g/kg 標準体
重/日,ステージ G3b 以降では 0.6~0.8 g/㎏標準体重/日
が推奨されている.たんぱく質制限とともに摂取エネル
ギー量も過度に不足すると Protein-energy wasting (PEW)
を引き起こす可能性があるため,十分なエネルギー摂取
量を確保することが重要である.CKD においては,高
血圧・尿蛋白の抑制と心血管疾患の予防のため,6 g/日
未満の食塩摂取制限が推奨されている.ただし,過度の
減塩は害となる可能性があるため,3 g を目安として個々
の症例に応じて下限を設定する.血清 K 値は 4.0 mEq/L
以上,5.4 mEq/L 以下で総死亡,心血管疾患の発症リス
クが低下する.