著者
鈴木 譲
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.331-344, 2000-10-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
15

本稿では、これまで主に哲学者、論理学者の間で議論されて来たニューコーム問題を数理社会学の観点から論ずる。ニューコーム問題とは、予言者の存在を仮定したパラドックス的設定の下での意思決定の問題である。予言者の能力によってこの問題の性質は大きく異なるが、本稿ではいわゆる予言者の完全性を仮定した場合に議論を限定し、この問題を2つの観点から論じる。第一は数理論理的な観点、特に公理系の無矛盾性の観点である。結論としては、ニューコーム問題は合理的意思決定の問題としてはそもそも決定不可能な命題であり、因果律の方向が本質的に重要であることを示す。因果律はその方向に応じて、順因果律と逆因果律の2種類を考えることが出来る。第二は社会学的観点であり、前述の数理論理的観点から得られた定式化を社会現象に応用することを試みる。この応用の具体例として、Weberのプロテスタンティズムの倫理のフォーマライゼーションを行い、カルヴィニズムにおける信徒の意思決定が逆因果律の論理に対応していることを示す。

言及状況

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再び。 https://t.co/uQy489sYi1 従って、ニューコーム問題における選択肢 D1 と D2 のどちらがより合理的な意思決定かという問題は、 逆因果律と順因果律のどちらがより合理的な論理体系かという因果律体系の選択としてのメタ論理問題 に帰着する。
https://t.co/uQy489sYi1 ニューコーム問題は、2 つの意味で論理的に決定不可能である。まず、第一には予言者の完全性を仮 定した場合には、意思決定の合理性そのものを分析する論理的意味がない。これは、意思決定者が自 由意思を持たないことになるからである。

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