著者
吉良 洋輔
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.107-124, 2013 (Released:2014-09-01)
参考文献数
21
被引用文献数
2

社会的ジレンマは,プレイヤー同士でコミュニケーションを行うことによって解決されやすくなることが知られている.しかし,このメカニズムを数理モデルによって説明することは,未だ行われていない.そこで本稿では,無限繰り返しN人囚人のジレンマ(INPD)ゲームの均衡精緻化を行う.サブゲーム完全ナッシュ均衡では,1人のプレイヤーが戦略を変更する逸脱しか考慮されていない.そのために,INPDにはパレート劣位な均衡が多数存在する.そこで本稿では,プレイヤー同士がコミュニケーションを行うことによって,複数人が同時に戦略変更を行う「結託による逸脱」が可能であることを仮定した.その結果,大多数のプレイヤーが非協力を行うナッシュ均衡は不安定となる一方,ある条件を満たせば全員が協力を行う均衡は頑健であり続けることが分かった.得られた知見は次の2点である.1点目は,社会的ジレンマを解決する上で,長期的関係とコミュニケーションは異なる機能を持つことである.2点目は,より自由なコミュニケーションと行動の変更が認められている状況の方が,社会的ジレンマが解決されやすい場合もある,ということである.

言及状況

外部データベース (DOI)

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去年集中講義に参加したRitsのKanazawa先生の8年くらい前の論文.これは大いに参考にしているし,これの参考文献はとてもいいものが揃っていると思う. https://t.co/KsA4S8dLwM

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