著者
沼尻 晃伸
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.3-23, 2011-05-25 (Released:2017-05-24)

本稿は,兵庫県尼崎市を事例とし,戦時期〜戦後改革期における組合施行土地区画整理事業の考察を通じて,農村の側から市街地形成の特質を明らかにすることを課題とする。本稿が明らかにした点は,以下の3点にまとめられる。第1に,戦時期の耕地についてである。地主は小作農民に対し土地区画整理実施前に離作料を支払ったが,戦争末期に事業は滞ったため小作農民による耕地利用が継続された。第2に,戦後改革期における地主・小作農民間の対立についてである。仮換地は小作地の移動や減少を伴うとする組合側の主張に小作農民は反対したため,地主と小作農民は激しく対立したが,政府の方針に沿っていた組合(地主)の主張が通ることとなった。第3に,形成された市街地の特質についてである。土地区画整理の実施により公共用地が創出される一方で,耕作面積の減少を賃耕等によって補った小作農民によって,農地が維持される場合もあった。このような小作農民による農地利用を農業委員会も承認し,農地が残存する市街地が土地区画整理地区内に形成された。

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