著者
鴨野 洋一郎
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.49-74, 2012-05-25 (Released:2017-06-10)

中世後期イタリアの都市国家フィレンツェは,15世紀半ばからオスマン帝国との間で外交的友好関係に基づく貿易活動を開始した。フィレンツェの中規模な毛織物会社はこの貿易によって活動の場を与えられ,フィレンツェ繊維製品をオスマン帝国まで輸送して販売し,その代金で東方物産を購入してフィレンツェへ輸送する,というオスマン貿易のパターンを確立する。これらの会社が貿易で成功するためには,オスマン帝国で販売した製品の代金を確実に徴収することが重要な条件となっていた。そこで本稿では,1480年代にオスマン帝国で毛織物を販売したグワンティ毛織物会社に着目し,ブルサに駐在したバルトロメーオ・グワンティの駐在員帳簿を基に,彼が行った代金徴収の過程を検討する。検討の結果,バルトロメーオは代金の大半を,バーター取引ないし現金徴収によって遅延なく徴収していたことが判明した。このことは,中規模会社でも確実な代金徴収に基づく国際商業を展開できたことを意味し,大規模会社中心に理解されてきた従来のフィレンツェ商業史像に対し再考を促す事例となるであろう。

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