- 著者
-
木村 雅史
- 出版者
- 東北社会学研究会
- 雑誌
- 社会学研究 (ISSN:05597099)
- 巻号頁・発行日
- vol.99, pp.133-155, 2017-02-28 (Released:2021-12-18)
- 参考文献数
- 23
本稿の目的は、アーヴィング・ゴフマン独自の「状況の定義」論として展開されている『フレーム分析』の分析枠組を対面的相互行為とメディアを介したコミュニケーション(以下、CMC)の両者を統合的に分析する枠組として捉え直した上で、その枠組をソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)上の相互行為実践に適用し、ゴフマンの分析枠組の意義を明らかにすることである。 まず、二、三節では、『フレーム分析』の理論的資源を成すジェームズの下位宇宙論やシュッツの多元的現実論に対するゴフマンの評価を検討することで、『フレーム分析』の意義を明らかにした。四節では、「状況の定義」の獲得や移行、メディアの効果に関するゴフマンの枠組を検討した。五節では、SNS上の相互行為実践を題材に対面的相互行為とCMCを往還するかたちで獲得、展開される「状況の定義」について記述、分析した。 本稿で明らかにした『フレーム分析』の意義とは、複数の経験領域間を往還するかたちで獲得、展開される「状況の定義」の重層性やその移行関係を記述する「多層的現実論」ともいうべき分析視点である。多層的現実論は、CMCが対面的相互行為に常に隣接し、影響を与えている今日のメディア状況において、対面的相互行為が担う機能や意味を考察する際、有効な枠組を提供するものとなる。