著者
木村 雅史
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.33-43, 2017-12-26 (Released:2019-01-28)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本稿の目的は,アーヴィング・ゴフマンの「状況の定義」論の観点から,「いじり」と呼ばれるコミュニケーションのあり方について扱ったメディア・テクストを分析することで,テクストが提供している「いじめ」と「いじり」の区別や関連性に関するカテゴリー適用の方法を記述・考察することである. ゴフマンの「状況の定義」論は,①「状況の定義」と自己呈示の関連性に着目している点,②人々の「状況の定義」活動を記述する枠組(「状況の定義」の重層性や移行関係)を提供している点において,独自のパースペクティブをもっている.本稿では,ゴフマンの「状況の定義」論の観点から,「いじめ」と「いじり」をめぐる「状況の定義」活動の記述・考察を行った.メディア・テクスト分析の結果,状況やオーディエンスの変化が,「いじめ」/「いじり」定義の維持や変化,それぞれの定義における意味世界の形成,参加者の自己呈示やその読みとられ方に影響を与えていることが明らかになった.本稿で分析したメディア・テクストは,それぞれ方法は異なるものの,「いじめ」カテゴリーと「いじり」カテゴリーの区別や関連性について,オーディエンスにカテゴリー適用の方法を提供している.
著者
木村 雅史
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.235-260, 2017-09-14 (Released:2021-12-12)
参考文献数
8

本稿の目的は、仙台市郊外A市の高齢者向け介護予防事業であるaサロン活動の支援者である地域サポーターへのインタビューを通して、地域サポーターがaサロン外における社会的役割や経験との関係性のなかで、どのようにサロン運営やサポート実践を行っているのかをアーヴィング・ゴフマンの相互行為儀礼論の視点から描き出すことである。 本稿では、aサロンのメンバーに対する地域サポーターの配慮や地域サポーター間の配慮のルールを相互行為儀礼と捉え、特徴の異なるX、Y、Zの三地区のaサロンについて分析を行った。X地区では、メンバー間の平等性と地域サポーター間の平等性が相互行為儀礼を通じて二重に維持されていた。Y地区では、地域サポーター自身が高齢化傾向にあるなかで地域サポーターの将来的な居場所づくりとして活動が捉え直されており、相互行為儀礼はさほど強く意識されていなかった。Z地区では、地域サポーターの個人的資源を活用したサポート活動が重視されており、相互行為儀礼は、地域サポーターがメンバーに対して適切な配慮を行うことと、地域サポーターが自らの個人的資源を活動に役立てることを両立させる調整的な役割を担っていた。 本稿の分析で明らかになったのは、メンバーと地域サポーターの適切な関係性やそれを維持する地域サポーターの適切な振る舞いを定義する役割を担っているのが相互行為儀礼であるという点である。
著者
木村 雅史
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.133-155, 2017-02-28 (Released:2021-12-18)
参考文献数
23

本稿の目的は、アーヴィング・ゴフマン独自の「状況の定義」論として展開されている『フレーム分析』の分析枠組を対面的相互行為とメディアを介したコミュニケーション(以下、CMC)の両者を統合的に分析する枠組として捉え直した上で、その枠組をソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)上の相互行為実践に適用し、ゴフマンの分析枠組の意義を明らかにすることである。 まず、二、三節では、『フレーム分析』の理論的資源を成すジェームズの下位宇宙論やシュッツの多元的現実論に対するゴフマンの評価を検討することで、『フレーム分析』の意義を明らかにした。四節では、「状況の定義」の獲得や移行、メディアの効果に関するゴフマンの枠組を検討した。五節では、SNS上の相互行為実践を題材に対面的相互行為とCMCを往還するかたちで獲得、展開される「状況の定義」について記述、分析した。 本稿で明らかにした『フレーム分析』の意義とは、複数の経験領域間を往還するかたちで獲得、展開される「状況の定義」の重層性やその移行関係を記述する「多層的現実論」ともいうべき分析視点である。多層的現実論は、CMCが対面的相互行為に常に隣接し、影響を与えている今日のメディア状況において、対面的相互行為が担う機能や意味を考察する際、有効な枠組を提供するものとなる。
著者
木村 雅史
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.49-74, 2015-01-30 (Released:2022-02-06)
参考文献数
19

本稿の課題は、アーヴィング・ゴフマンの後期の著作『フレーム分析』(Goffman 1974)において提示されている「人-役割図式(person-role formula)」概念を、ゴフマン独自の「状況の定義」論として展開されている『フレーム分析』の問題設定、概念枠組との関連において検討し、その意義を明らかにすることである。 人-役割図式概念を検討するにあたって、まず、二節では、『フレーム分析』の基本的な問題設定や概念の検討を行う。この作業を通して、「アクティヴィティー」概念が状況が定義された状態を記述するために設定されていること、「フレーム」概念がアクティヴィティーの獲得や変化を生み出している原理として設定されていることを確認する。三節では、二節の作業を踏まえた上で、人-役割図式概念やその関連概念(役割-役柄図式、バイオグラフィー)の検討を行う。こうした作業を通して、人に関する認知が「状況の定義」が獲得され、変化していく際の重要な資源を構成していることを示す。 四節では、三節までの作業を踏まえた上で、人-役割図式論の要点を整理する。最後に、人-役割図式論の意義を、個別の状況や「状況の定義」の多層性のもとに、そこに参加している人々の自己の立ち現れ方の多層性を描き出していく視角の提供として結論づける。
著者
木村 雅史
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.33-43, 2017

<p> 本稿の目的は,アーヴィング・ゴフマンの「状況の定義」論の観点から,「いじり」と呼ばれるコミュニケーションのあり方について扱ったメディア・テクストを分析することで,テクストが提供している「いじめ」と「いじり」の区別や関連性に関するカテゴリー適用の方法を記述・考察することである.<br> ゴフマンの「状況の定義」論は,①「状況の定義」と自己呈示の関連性に着目している点,②人々の「状況の定義」活動を記述する枠組(「状況の定義」の重層性や移行関係)を提供している点において,独自のパースペクティブをもっている.本稿では,ゴフマンの「状況の定義」論の観点から,「いじめ」と「いじり」をめぐる「状況の定義」活動の記述・考察を行った.メディア・テクスト分析の結果,状況やオーディエンスの変化が,「いじめ」/「いじり」定義の維持や変化,それぞれの定義における意味世界の形成,参加者の自己呈示やその読みとられ方に影響を与えていることが明らかになった.本稿で分析したメディア・テクストは,それぞれ方法は異なるものの,「いじめ」カテゴリーと「いじり」カテゴリーの区別や関連性について,オーディエンスにカテゴリー適用の方法を提供している.</p>