- 著者
-
池上 岳彦
- 出版者
- 社会政策学会
- 雑誌
- 社会政策 (ISSN:18831850)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.1, pp.63-76, 2017-06-05 (Released:2019-08-30)
- 参考文献数
- 30
租税・社会保険料とも法令に基づいて納付されるが,租税は特定のサービスに直結しないのに対して,社会保険料はサービスとの対価性があるとされる。本稿は両者を体系的に比較検討する。 ①個人所得税は総合課税により水平的公平を実現する。正規雇用者の社会保険料は主たる勤務先の収入のみに賦課される。②個人所得税は超過累進税率の適用により垂直的公平を実現するが,社会保険料の負担は逆進性をもつ。③社会保険だから権利性が生まれるとの議論もあるが,租税によるサービスを受けるのも国民の権利である。④租税の民主性は憲法・法律により担保される。社会保険に関する被保険者の参加度合いは多様である。⑤社会保険には租税が給付財源の半分を超える制度もある。他の社会保険への拠出金にも租税と同質のものがある。 普遍主義的給付の財源は,社会保険料から租税へシフトするのが自然である。その際,消費課税のみならず所得課税・資産課税も重要である。