著者
大矢 雅彦 松田 明浩
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.139-150, 2002-08-26 (Released:2010-04-30)
参考文献数
6

カガヤン川流域はフィリピン最大の平野であるにもかかわらず, 激しい洪水のため持続的開発が進まず, 国全体からみても経済開発の立ち遅れた地域となっている。筆者らは洪水対策の基礎資料となる, カガヤン川中流部の水害地形分類図を作成した。その結果, 調査地域には, 熱帯特有の環境によって形成されたと考えられる高位沖積面と低位沖積面が分布している事が判明した。主な集落は自然堤防, 高位沖積面上にある。水害地形分類図から, 上流側の地域IIIでは網状流がみられ, 拡散型洪水を繰り返したことがわかる。中核都市ツゲガラオ市付近の地域IIでは, 連続性のよい大規模な自然堤防および高位沖積面がみられ, 下流部ほど蛇行は著しくない。氾濫範囲がほぼ一定の洪水が流下していたと考えられる。北部の狭窄部に近い下流側の地域Iでは河川が蛇行を繰り返し, 大きく湾曲した旧河道や三日月湖が分布する。洪水の型は, 河岸侵食が著しい集中型である。カガヤン川中流部では, 堤防などの治水施設は皆無に等しい。その治水計画は全面的に日本に任されており, 現在ハード面とソフト面の治水案が立てられつつある。本図はその基本図として, 様々な場面で有効に活用できる。

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