- 著者
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大矢 雅彦
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.8, pp.407-425, 1979
- 被引用文献数
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バングラディシュ政府は,日本政府に対しブラマプトラ-ジャムナ川での架橋援助を要請してきた.しかし,この川は河道変遷・河岸変遷が著しく,巨大であるため,河道固定は不可能である.そこで,筆者はあらかじめ選ばれたバハドラバッド,ガバルガオン,シラジガンジおよびナガルバリ(アリチャ)の4地点のうち,いずれの地点が最も安定していて架橋に適するかを応用地形学的立場から調査することを要請された.<br> 筆者は, (1) 河岸線および流心の変化を調査するとともに, (2) ブラマプトラ-ジャムナ川沿岸地形分類図(1/5万), (3) ブラマプトラ-ジャムナ川,ガンジス平野地形分類図(1/100万)を作成した. (1) の結果,ナガルバリはガンジス川の背水の影響を受けて河岸,州および流心の位置の変化が最大であること,また,バハドラバッドも変化が大きいこと,これに比べてガバルガオン,シラジガンジの変化が少ないことがわかった. (2) の結果,バハドラバッド,ガバルガオンは形成開始以来180年しか経過していない扇状地上に位置し,将来河道変遷がおこりうること,シラジガンジ以南は自然堤防地帯河川の特色をもつこと,シラジガンジには地盤の隆起運動によって形成されたと見られる180年以上経過した古い沖積平野による狭さく部があって,河道が一定しており,この狭さく部は今後も存続しうると考えられることなどがわかった. (3) の結果,バハドラバッド,ガバルガオン付近には断層線,線状構造があるが,シラジガンジにはないことがわかった。上記の諸点にもとづいて,筆者はシラジガンジを4架橋候補地点中では最適であると判断した.