著者
武田 浩
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-8, 1992-01-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
20

糖尿病患者では, 血管内皮細胞 (以下EC) が高血糖により直接影響を受けるばかりでなく, 細胞外マトリックス (以下ECM) の糖化により生育環境が損なわれ, 血管障害発症に関与することも考えられる. 本研究ではin vitroにおけるECの生育環境を, 短期間に高濃度D-グルコース (以下HG) との接触と長期間におけるType IVコラーゲン (以下C) の糖化による影響とに分け, それぞれの機能変化の面から検討した. その結果HG培養のECにおいて有意に細胞増殖障害とPGI2産生の抑制を認め, 糖化Cの添加によりさらに強い抑制を認めた. アミノグアニジン (以下AG) 添加による架橋C抑制に伴い, ECの細胞増殖障害抑制を認めた. 以上の成績から長期間持続するHG環境により, ECMのCに架橋がおこりEC形質変化をもたらすことが示唆された。長期間持続するHG環境によりECM, 特にCの糖化に伴いECの抗血栓性が失われ, 糖尿病特有の細小血管障害をもたらす引き金になると考えられ, 糖尿病合併症の発症, 治療を考える上で興味深い知見を得た.

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