著者
井澤 友美
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.143-154, 2014 (Released:2020-01-13)

バリは、インドネシアを代表する国際観光地に発展した。しかし、その開発は、長年バリ島外部勢力が主導するものであり、地域住人の意向は反映されてこなかった。特にスハルト権威主義体制時代(1966-1998)における国際観光開発は、観光収益の島外への流出、地方行政府間における観光収入の格差、治安の悪化、環境の劣化などの弊害を伴った。1998年にスハルト政権が崩壊すると、インドネシアでは権威主義体制から民主化へ、中央集権から地方分権への移行が急速に進められた。では、民主化・地方分権化を経て、バリの観光開発はどのように変化したのか。また、観光による弊害の現状はどのようなものか。本稿では、これまで問題の原因の多くを外部の責任とみなしつつ議論されてきた観光開発とそれに伴う社会問題に対して、ポスト・スハルト時代に発言権を増した地元アクターに焦点を当てつつその実態を明らかにする。すなわち、体制移行を経てバリ社会は、地元アクター間における観光利潤の獲得競争という新時代に入ったのであり、それに伴ってスハルト時代に顕著となった社会問題がますます悪化せざるを得ないという皮肉な現状を議論する。

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