著者
佐藤 彰彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.MS3-2, 2014 (Released:2014-08-26)

1988年に塩野義製薬 医科学研究所が発足し,抗ウイルス薬研究を開始した.抗HIV薬研究の中で,我々が見出し,臨床試験入りした化合物として,NNRTI(非核酸系逆転写酵素阻害剤)のS-1153(Capravirine)をはじめとして,多くのINI(インテグレース阻害剤)を見出した. 抗HIV薬では,薬剤を長期に投与することから,薬剤耐性ウイルスの出現を克服することが最重要課題であり,耐性の出現メカニズムを詳細に研究し,その基礎研究を基にした創薬をすることが必要である.S-1153(Capravirine)の研究・開発時から,既存の抗HIV薬の耐性プロファイリングから,耐性ウイルスの克服を目標にした研究を続けてきた.我々は,安定して耐性ウイルスを分離する方法を見出し,このin vitroでの培養手法を用いることで,臨床試験と同じ耐性ウイルスが分離できることがわかった. この手法を用いて,薬剤耐性ウイルスの出現機構を考察したところ,耐性ウイルスの出現時期,頻度,変異部位は,ウイルスの変異率,変異ウイルスの増殖性,薬剤の抗ウイルス効果(選択性)に依存しており,薬剤濃度を高く維持できれば,耐性ウイルスの出現を抑えることができることを理論的に証明し,ウイルスの耐性出現をコントロールできるノウハウを習得した.この理論から,既存の耐性変異に対して活性が低下しない化合物を目標にして,多数の骨格をデザインし,長期培養しても高度耐性ウイルスが分離できない優れた特徴を持つ化合物群を見出した. 我々は,抗インフルエンザウイルス薬の研究も進めてきており,インフルエンザウイルスのin vitro試験での耐性ウイルス出現過程は,HIVと同じ傾向であるが,急性感染症であるインフルエンザ感染の場合は,耐性ウイルスに対するin vitroとin vivo効果は,HIVとは異なり,必ずしも一致しないことがわかってきている.各ウイルスの耐性出現理論について紹介したい.

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