著者
森井 悠太
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1-4, pp.15-26, 2019-05-15 (Released:2019-06-06)
参考文献数
33

森林の皆伐は森林生態系へ壊滅的な損害を与えうる。皆伐によって森林生態系の生物量や種多様性が著しく減少することが知られている。しかしながら,皆伐の長期的な影響を評価した研究は少ない。本研究では,原生林と二次林の林床土壌中の陸産貝類相を定量的に調査し,過去の皆伐の影響の評価を試みた。北海道,黒松内低地帯に位置するブナの優占する原生林と二次林をそれぞれ2箇所ずつ調査地とし,調査地それぞれの林床に50-cm × 50-cmの区画をそれぞれ6箇所,林床に設置した。リター層中の陸産貝類を目視で摘出したのち,双眼実体顕微鏡を用いて種を同定した。原生林と二次林との間で種密度と個体密度を比較したところ,種密度・個体密度共に二次林よりも原生林において有意に高い値が示された。原生林2箇所のうちのひとつ,歌才ブナ林では特に陸産貝類相の多様性が高く,50-cm × 50-cmの区画で平均239.2個体・7.2種もの陸産貝類が採集された。一方,二次林では2箇所の平均で12.3個体・4.8種を記録するのみであった。その中でも,殻長2.0 mm以下の微小貝の個体密度が二次林において有意に低かった。加えて,成長錐を用いて二次林の樹齢を推定した結果から,調査対象とした2箇所の二次林はいずれも100~150年前に伐採されたことが示された。これらの結果は,森林伐採が100年以上にも渡って林床の陸産貝類相に影響を与えることを示している可能性がある。

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