著者
石田 聖子
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.3-16, 2017 (Released:2018-01-13)

二十世紀初頭ヨーロッパに興ったアヴァンギャルドでは悉く笑いが称揚された。笑いは転換期に相応しい表現を創造する格好の契機と考えられたためだ。イタリアでは未来主義者アルド・パラッツェスキが宣言「反苦悩」を執筆し、笑いと創造の関係を鋭く照射した。本稿では、諸アヴァンギャルドのうち、ダダ、シュルレアリスム、未来派の宣言と理念の検討を通じて笑い認識を創造性との関連で探る。ダダ、シュルレアリスムにおいて笑いは主に伝統的な価値を揺るがせ無効化する手段として注目された。他方、未来派宣言「反苦悩」では、伝統的価値観が一掃された後、新たな価値を白紙状態から創造する手法が説かれた。アヴァンギャルドの時代に「反苦悩」が訴えたのは笑いの有用性に加え、人間と身体、そしてその笑いとの関係においてもひとつの転換点を迎えた事実であった。本稿ではまた「反苦悩」の一部を本邦初訳して紹介 する。

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