- 著者
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水谷 信夫
- 出版者
- 農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
- 雑誌
- 九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
- 巻号頁・発行日
- no.39, pp.15-78, 2001-12 (Released:2011-03-05)
卵寄生蜂カメムシタマゴトビコバチの寄主選好性や種間競争など、寄主カメムシや他種卵寄生蜂との相互作用を解明し、本寄生蜂がダイズ圃場でホソヘリカメムシの有力な天敵となり得る理由を考察した。さらに、本寄生蜂を誘引する物質を発見し、ダイズカメムシ類の防除技術への応用を試みた。以下に主な結果を記載する。本寄生蜂は、茎や莢よりも葉で寄生率が高く、寄主として他種カメムシ卵よりもホソヘリカメムシ卵を選好した。これら本寄生蜂の寄主探索行動と寄主種に対する選好性が、野外で寄生種による寄生率の差をもたらす最も重要な要因と考えられた。また、ホソヘリカメムシ卵では、幼虫の生存率が高く、羽化した雌蜂の寿命が長く蔵卵数が多いことから、本寄生蜂のホソヘリカメムシ卵に対する選好性は適応的な行動であることが明らかとなった。本寄生蜂は、寄生率の高いホソヘリカメムシ卵よりも、寄生率の低いイチモンジカメムシ卵で他種卵寄生蜂との幼虫間の種間競争に強く、種間競争の結果が、野外で寄生種による寄生率の差をもたらす主要な要因ではなかった。本寄生蜂は、ホソヘリカメムシ合成集合フェロモンの1成分である(E)-2-hexenyl (Z)-3-hexenoateに誘引された。本物質をダイズ圃場に処理することにより、ホソヘリカメムシを誘引せず、雌蜂の密度を高めることができた。雌蜂の絶対的な密度が高くなる秋ダイズでは、本物質を処理することにより寄生率が高くなり、防除素材としての利用が考えられた。