著者
松井 勝弘 手塚 隆久 原 貴洋 森下 敏和
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.49, pp.11-17, 2008-03

「そば中間母本農1号」は夏型品種の「牡丹そば」に普通ソバの近縁自殖性野生種Fagopyrum homotropicumを交配し、その後「牡丹そば」を戻し交配して選抜育成された自殖性の普通ソバである。「そば中間母本農1号」の花はおしべとめしべの長さがほぼ等しい花形をしており、この花形から自殖性が識別できる。「そば中間母本農1号」はF. homotropicum由来の子実脱落性対立遺伝子を除去してあるため、普通ソバと交配した後代でも子実が脱落することはない。「そば中間母本農1号」の種子の大きさは「牡丹そば」並みである。生育は旺盛でないが、自殖性の育種素材として利用できる。
著者
松井 勝弘 原 貴洋 手塚 隆久 森下 敏和
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.59, pp.23-37, 2013-02

普通ソバ品種「さちいずみ」は耐倒伏性が優れる中生の「朝日村在来 3」を母,早生で子実外観品質が優れる対馬収集の在来種「SOBA」(農業生物ジーンバンクJP番号86258)を父として,人工交配を行った雑種集団より選抜育成した。「さちいずみ」の開花期は「常陸秋そば」とほぼ同じで,「鹿屋在来」よりやや早い。成熟期は「常陸秋そば」とほぼ同じで,「鹿屋在来」より10 日以上早い中生である。草丈は「鹿屋在来」より短く,耐倒伏性は「鹿屋在来」より強く,鹿児島県における収量性は「鹿屋在来」を 20%程度上回る。麺の食味は「常陸秋そば」や「鹿屋在来」と同程度かそれ以上に良食味である。栽培型は秋まきに適している。栽培適地は,関東以西の様々な地域である。
著者
原 貴洋 手塚 隆久 松井 勝弘
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.58, pp.37-48, 2012-09

ソバ新品種「春のいぶき」は,九州沖縄農業研究センターにおいて育成された,西南暖地の春まき栽培に適する品種であり,「そば農林5号」として2008年農林認定品種となった。「春のいぶき」は中間夏型で多収性の「階上早生」から集団選抜法により選抜固定して得られた品種である。春まき栽培での「春のいぶき」の成熟期は「しなの夏そば」より晩い"やや早"で,子実重は「鹿屋在来」,「しなの夏そば」より多い。圃場での穂発芽は,「しなの夏そば」,「階上早生」より少ない。「春のいぶき」の食味は,前年秋収穫の北海道産「キタワセソバ」より優れる。「春のいぶき」は主に九州地域の春まき栽培での普及が見込まれる。
著者
伊東 栄作 池谷 文夫 濃沼 圭一 江口 研太郎
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-25, 2004-02
被引用文献数
1

サイレージ用トウモロコシの新品種「ゆめちから」は,耐倒伏性,高消化性,多収性およびごま葉枯病抵抗性を育種目標に「Mi29」を種子親とし,「Mi47」を花粉親として育成されたデント種×フリント種自殖系統間の単交雑一代雑種で,2000年8月に「とうもろこし農林交50号」として登録された。栽培適地の九州・四国・中国地域での熟期は早生に属し,絹糸抽出期は「DK623」より1日早く,「セシリア」より2日早い。稈長は「DK623」および「セシリア」より短く,着雌穂高は「DK623」より高く「セシリア」より低い。耐倒伏性は「DK623」および「セシリア」より有意に強く,既存の品種を上回る最強レベルである。ごま葉枯病抵抗性は「セシリア」より強く「DK623」並みの極強で,さび病抵抗性は「DK623」および「セシリア」より強い。乾物総収量は「DK623」並みで「セシリア」より低いが,茎葉TDN含量が「DK623」および「セシリア」より5~7ポイント高く,TDN収量は「DK623」および「セシリア」よりそれぞれ6ポイントおよび2ポイント高い。本品種は春播き栽培用であり,晩播・夏播き栽培に用いることはできない。最適栽植密度はアール当たり700~780本である。
著者
上山 泰史 桂 真昭 松浦 正宏
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-13, 2001-12

青刈り用エンバクの新品種「はえいぶき」は、暖地、温暖地で8月下旬~9月上旬に播種し年内収穫を育種目標に、秋季に安定して出穂する「Guelatao」を種子親、「ハヤテ」を花粉親として、個体選抜及び系統選抜を行う集団育種法によって育成され、1996年8月に「えん麦農林9号」として登録された。主な特性は次の通りである。秋の出穂日が「アキワセ」よりも3日、「ハヤテ」よりも10日早い極早生で、暖地では年内の収穫時までに乳熟期以降のステージに達する。収穫時の乾物率が高く、九州中部以北では予乾なしで、温暖な九州南部では乾物率の上昇が遅れるため若干の予乾処理で、ロールベールによる収穫・調製が可能である。乾物収量は「アキワセ」よりも高く、収量の安定性にも優れている。草丈は「アキワセ」よりも低く、茎数は多い。葉重割合が低く、草型は立型である。採種栽培での春の出穂及び種子の成熟期は「アキワセ」「ハヤテ」よりも早く、暖地で梅雨入り以前に採種できる。九州・沖縄から関東までの暖地・温暖地で利用でき、各地における播種及び収穫適期は、関東から瀬戸内海地域の暖地でそれぞれ8月下旬、12月上旬、九州北部で8月下旬、12月中旬、九州南部及び沿海部では9月上旬、1月中旬、沖縄で11月上旬、2月下旬である。冠さび病抵抗性や耐倒伏性が高くないので、これらの障害を避けるために適期播種及び収穫を行うことが重要である。播種量は青刈りエンバクの標準的な0.6~1.0kg/aとする。
著者
熊谷 亨 山川 理 吉永 優
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-16, 2002-03

"コナホマレ"は"ハイスターチ"を母、"九系82124-1"を父とする交配組合せから選抜したカンショ新品種であり、"九州126号"の系統名で関係各県に配布し、2000年8月農林水産省育成品種"かんしょ農林52号"として命名登録された。萌芽性は中、草型は匍匐型、茎はやや細く、茎の長さはやや長い。いもの皮色は淡褐、肉色は淡黄白、形状は短紡錘形、大きさは中、いもの揃いは中、外観はやや上である。いも収量、でん粉歩留は"コガネセンガン"や"シロユタカ"より高く、でん粉収量は"コガネセンガン"や"シロユタカ"を大きく上回る。黒斑病にはやや弱く、サツマイモネコブセンチュウにはやや強、ミナミネグサレセンチュウには中の抵抗性を示す。貯蔵性はやや難である。暖地の畑作地帯に適するが、当面、でん粉原料用や焼酎原料用として鹿児島県や宮崎県を中心に普及する。
著者
熊谷 亨 山川 理 吉永 優 石黒 浩二 日高 操 甲斐 由美
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-16, 2002-03

"コナホマレ"は"ハイスターチ"を母、"九系82124-1"を父とする交配組合せから選抜したカンショ新品種であり、"九州126号"の系統名で関係各県に配布し、2000年8月農林水産省育成品種"かんしょ農林52号"として命名登録された。萌芽性は中、草型は匍匐型、茎はやや細く、茎の長さはやや長い。いもの皮色は淡褐、肉色は淡黄白、形状は短紡錘形、大きさは中、いもの揃いは中、外観はやや上である。いも収量、でん粉歩留は"コガネセンガン"や"シロユタカ"より高く、でん粉収量は"コガネセンガン"や"シロユタカ"を大きく上回る。黒斑病にはやや弱く、サツマイモネコブセンチュウにはやや強、ミナミネグサレセンチュウには中の抵抗性を示す。貯蔵性はやや難である。暖地の畑作地帯に適するが、当面、でん粉原料用や焼酎原料用として鹿児島県や宮崎県を中心に普及する。
著者
上山 泰史 桂 真昭 松浦 正宏 大山 一夫 佐藤 信之助
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-13, 2001-12

青刈り用エンバクの新品種「はえいぶき」は、暖地、温暖地で8月下旬~9月上旬に播種し年内収穫を育種目標に、秋季に安定して出穂する「Guelatao」を種子親、「ハヤテ」を花粉親として、個体選抜及び系統選抜を行う集団育種法によって育成され、1996年8月に「えん麦農林9号」として登録された。主な特性は次の通りである。秋の出穂日が「アキワセ」よりも3日、「ハヤテ」よりも10日早い極早生で、暖地では年内の収穫時までに乳熟期以降のステージに達する。収穫時の乾物率が高く、九州中部以北では予乾なしで、温暖な九州南部では乾物率の上昇が遅れるため若干の予乾処理で、ロールベールによる収穫・調製が可能である。乾物収量は「アキワセ」よりも高く、収量の安定性にも優れている。草丈は「アキワセ」よりも低く、茎数は多い。葉重割合が低く、草型は立型である。採種栽培での春の出穂及び種子の成熟期は「アキワセ」「ハヤテ」よりも早く、暖地で梅雨入り以前に採種できる。九州・沖縄から関東までの暖地・温暖地で利用でき、各地における播種及び収穫適期は、関東から瀬戸内海地域の暖地でそれぞれ8月下旬、12月上旬、九州北部で8月下旬、12月中旬、九州南部及び沿海部では9月上旬、1月中旬、沖縄で11月上旬、2月下旬である。冠さび病抵抗性や耐倒伏性が高くないので、これらの障害を避けるために適期播種及び収穫を行うことが重要である。播種量は青刈りエンバクの標準的な0.6~1.0kg/aとする。
著者
森田 敏
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-78, 2009-08 (Released:2011-03-05)

近年、西日本を中心に多発しているイネの高温登熟障害の発生に及ぼす日射量、施肥、品種、高夜温の影響とその要因について解析した。1. 人工気象室で登熟期の気温を平年より3℃高くすると玄米1粒重と玄米外観品質が低下したが、作期移動など登熟期の気温と日射量がともに上昇する条件では玄米1粒重は低下せず、良質粒歩合の低下程度は小さかった。高温と低日射が重なると、普及品種ヒノヒカリでは高温耐性品種にこまるよりも粒重増加速度が低下し、玄米1粒重と玄米の粒張りが低下した。2. 穂肥の量を増やすと、高温年では玄米1粒重が増加し外観品質が向上した。穂肥を出穂前後の1ヶ月間に15回に分けて与える施肥法では2回与える慣行法に比べて、また、にこまるではヒノヒカリに比べて、それぞれ未熟粒歩合が低下した。これらの品質向上の要因として、穂揃い期の茎葉における貯蔵炭水化物の増加が考えられた。3. 玄米1粒重は高夜温(22/34℃)で低下し、高昼温(34/22℃)ではほとんど低下しなかった。穂と茎葉に別々に高夜温処理を与えた実験や粒重増加推移の解析、胚乳細胞の画像解析などにより、高夜温条件では粒重増加速度と玄米への乾物分配率の低下および胚乳細胞の成長抑制が玄米1粒重の低下に密接に関与していることが示された。以上、本研究では高温低日射条件でも登熟が不良になりにくい品種特性や施肥法を示したほか、高夜温が成熟期の玄米1粒重を低下させるプロセスを明らかにした。
著者
森田 敏
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-78, 2009-08

近年、西日本を中心に多発しているイネの高温登熟障害の発生に及ぼす日射量、施肥、品種、高夜温の影響とその要因について解析した。1. 人工気象室で登熟期の気温を平年より3℃高くすると玄米1粒重と玄米外観品質が低下したが、作期移動など登熟期の気温と日射量がともに上昇する条件では玄米1粒重は低下せず、良質粒歩合の低下程度は小さかった。高温と低日射が重なると、普及品種ヒノヒカリでは高温耐性品種にこまるよりも粒重増加速度が低下し、玄米1粒重と玄米の粒張りが低下した。2. 穂肥の量を増やすと、高温年では玄米1粒重が増加し外観品質が向上した。穂肥を出穂前後の1ヶ月間に15回に分けて与える施肥法では2回与える慣行法に比べて、また、にこまるではヒノヒカリに比べて、それぞれ未熟粒歩合が低下した。これらの品質向上の要因として、穂揃い期の茎葉における貯蔵炭水化物の増加が考えられた。3. 玄米1粒重は高夜温(22/34℃)で低下し、高昼温(34/22℃)ではほとんど低下しなかった。穂と茎葉に別々に高夜温処理を与えた実験や粒重増加推移の解析、胚乳細胞の画像解析などにより、高夜温条件では粒重増加速度と玄米への乾物分配率の低下および胚乳細胞の成長抑制が玄米1粒重の低下に密接に関与していることが示された。以上、本研究では高温低日射条件でも登熟が不良になりにくい品種特性や施肥法を示したほか、高夜温が成熟期の玄米1粒重を低下させるプロセスを明らかにした。
著者
水谷 信夫
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.39, pp.15-78, 2001-12 (Released:2011-03-05)

卵寄生蜂カメムシタマゴトビコバチの寄主選好性や種間競争など、寄主カメムシや他種卵寄生蜂との相互作用を解明し、本寄生蜂がダイズ圃場でホソヘリカメムシの有力な天敵となり得る理由を考察した。さらに、本寄生蜂を誘引する物質を発見し、ダイズカメムシ類の防除技術への応用を試みた。以下に主な結果を記載する。本寄生蜂は、茎や莢よりも葉で寄生率が高く、寄主として他種カメムシ卵よりもホソヘリカメムシ卵を選好した。これら本寄生蜂の寄主探索行動と寄主種に対する選好性が、野外で寄生種による寄生率の差をもたらす最も重要な要因と考えられた。また、ホソヘリカメムシ卵では、幼虫の生存率が高く、羽化した雌蜂の寿命が長く蔵卵数が多いことから、本寄生蜂のホソヘリカメムシ卵に対する選好性は適応的な行動であることが明らかとなった。本寄生蜂は、寄生率の高いホソヘリカメムシ卵よりも、寄生率の低いイチモンジカメムシ卵で他種卵寄生蜂との幼虫間の種間競争に強く、種間競争の結果が、野外で寄生種による寄生率の差をもたらす主要な要因ではなかった。本寄生蜂は、ホソヘリカメムシ合成集合フェロモンの1成分である(E)-2-hexenyl (Z)-3-hexenoateに誘引された。本物質をダイズ圃場に処理することにより、ホソヘリカメムシを誘引せず、雌蜂の密度を高めることができた。雌蜂の絶対的な密度が高くなる秋ダイズでは、本物質を処理することにより寄生率が高くなり、防除素材としての利用が考えられた。
著者
岡本 正弘 平林 秀介 梶 亮太
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.39, pp.127-141, 2001-12
被引用文献数
3

「柔小町」は暖地の普通期作に適する初めての低アミロースの水稲品種であり、1999年3月17日に第7084号として品種登録、2000年8月25日に水稲農林364号として命名登録された。「柔小町」は、中生の晩で多収の「ニシホマレ」を母、dull遺伝子を持つ低アミロース系統「探系2021」を父とした交配組合せから系統育種法によって育成された。熟期は育成地では「ニシホマレ」とほぼ同じ中生の晩に属し、粳種である。稈長は中、草型は中間型、耐倒伏性は中、止葉の直立程度はやや立で草姿熟色は良好である。いもち病抵抗性遺伝子、Piaをもつと推定され、葉いもち圃場抵抗性はやや弱、穂いもち圃場抵抗性は中である。白葉枯病抵抗性は金南風群に属し、圃場抵抗性はやや弱である。収量性は「ニシホマレ」と同程度で多収である。玄米の粒大はやや小で、外観品質は中の中である。登熟期間の気温が平年並みの場合には米はほとんど白濁しないが、高温年では低アミロース米特有の白濁を生じる。アミロース含有率は平均すると12%程度で低アミロース品種としては高い。タンパク質含有率は中である。低アミロース米のため、炊飯米の粘りが強く、食味の総合評価は「ヒノヒカリ」並の上の中である。また、他品種との混米による食味向上効果が大きく、ブレンド適性は良好である。暖地の平坦地から中山間地および温暖地西部の平坦地に適応する。
著者
岡本 正弘 平林 秀介 梶 亮太 福岡 律子 八木 忠之 西山 壽 西村 実 深浦 壮一 山下 浩 滝田 正 斉藤 薫
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.39, pp.127-141, 2001-12
被引用文献数
3

「柔小町」は暖地の普通期作に適する初めての低アミロースの水稲品種であり、1999年3月17日に第7084号として品種登録、2000年8月25日に水稲農林364号として命名登録された。「柔小町」は、中生の晩で多収の「ニシホマレ」を母、dull遺伝子を持つ低アミロース系統「探系2021」を父とした交配組合せから系統育種法によって育成された。熟期は育成地では「ニシホマレ」とほぼ同じ中生の晩に属し、粳種である。稈長は中、草型は中間型、耐倒伏性は中、止葉の直立程度はやや立で草姿熟色は良好である。いもち病抵抗性遺伝子、Piaをもつと推定され、葉いもち圃場抵抗性はやや弱、穂いもち圃場抵抗性は中である。白葉枯病抵抗性は金南風群に属し、圃場抵抗性はやや弱である。収量性は「ニシホマレ」と同程度で多収である。玄米の粒大はやや小で、外観品質は中の中である。登熟期間の気温が平年並みの場合には米はほとんど白濁しないが、高温年では低アミロース米特有の白濁を生じる。アミロース含有率は平均すると12%程度で低アミロース品種としては高い。タンパク質含有率は中である。低アミロース米のため、炊飯米の粘りが強く、食味の総合評価は「ヒノヒカリ」並の上の中である。また、他品種との混米による食味向上効果が大きく、ブレンド適性は良好である。暖地の平坦地から中山間地および温暖地西部の平坦地に適応する。
著者
梶 亮太 岡本 正弘 八木 忠之
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.47, pp.63-81, 2006-06
被引用文献数
1 1

「ふくいずみ」は,西海199号を母とし,北陸148号(どんとこい)を父とした交配組合せから育成された。2004年に水稲農林400号として登録され,「ふくいずみ」と命名された。「ふくいずみ」は育成地(筑後市)における出穂期,成熟期が「日本晴」に比べて2~4日程度遅く,暖地では"早生の晩"に属する。「日本晴」と比較して,稈長は1~4cm短く,穂長はわずかに短く,穂数は同程度かやや少ない。草型は"中間型"である。耐倒伏性は「日本晴」より明らかに強く"強"で,耐転び型倒伏性は"やや強"である。いもち病に対しては真性抵抗性遺伝子"Pii"を持つと推定され,葉いもち圃場抵抗性は"中",穂いもち圃場抵抗性は"やや強"である。白葉枯病抵抗性は"中",縞葉枯病には"罹病性"である。穂発芽性は「日本晴」並の"やや易"である。移植での収量性は「日本晴」並で,直播での収量性は「日本晴」を上回る。玄米品質は「日本晴」にやや優る"中上"である。白米のタンパク質含有率は"やや低",アミロース含有率は"中"で,いずれも「日本晴」より低い。食味は"上中"で「コシヒカリ」に近い良食味である。温暖地の平坦地および暖地の全域に適する。湛水直播栽培においても,「日本晴」より耐倒伏性が強く収量が安定して優れる。
著者
溝淵 律子 岡本 正弘 梶 亮太
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.46, pp.15-38, 2006-03
被引用文献数
2

「紅染めもち」(べにぞめもち)は,晩生,良食味糯の「西海糯197号(ひみこもち)」を母,晩生・赤米(粳)の「は系赤124(ベニロマン)」を父とした交配組合せから育成された赤糯品種であり,2004年1月に水稲農林糯395号として命名登録された。出穂期は「ひみこもち」より約3日早く,育成地では中生の晩に属する糯種である。稈長は中,草型は偏穂数型,止葉の直立程度はやや立で,草姿熟色は良好である。耐倒伏性は「つくし赤もち」より優れ,「ひみこもち」と同程度のやや強で倒伏しにくい。いもち病真性抵抗性遺伝子Pita-2を持つと推定され,圃場抵抗性は葉いもち,穂いもちともにやや強である。収量性は「ひみこもち」の約80~90%であるが,「つくし赤もち」に比べ標肥栽培では同程度,多肥栽培では優れる。玄米は赤褐色に着色し,「つくし赤もち」に比べ粒色は均一に濃く発色する。おこわにすると桜色を呈して美しく,おこわとしての食味の総合評価は「ひみこもち」より優れる。玄米の抗酸化性物質(プロアントシアニジン)含量は「ベニロマン」より少なく,「つくし赤もち」と同程度である。暖地の平坦地から中山間地および温暖地西部の平坦地に適応する。