著者
安部 哲人
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.151-156, 2007 (Released:2011-07-26)

既存の文献から、キブシの性表現には曖昧な点があることが示唆されているが、野外でキブシの性表現を含む繁殖状況について研究された例はみられない。そこで、キブシの花の性表現、性差、訪花昆虫、結果率を筑波山の林縁個体群で2年間調査した。花の形態や性器官(花粉と胚珠)の有無、結実状況よりキブシは雌性両全性異株であることが示唆された。性差は花序当りの花数が雌で有意に少なく、結果率が雌で有意に高かったが、それ以外には有意差がなかった。両性花には胚珠があるものの、結実は非常に稀(ほぼ0.0%)であり、強制受粉を施しても結実しなかった。このため、キブシの両性花はほとんど雄として機能しており、本種は機能的にほぼ雌雄異株であると考えられた。また、一つの花序内に両性花と雌花が混在する花序が調査個体群外で1個体発見されたことから、キブシの性表現は安定していないものと思われる。一方、雌花は両年とも35%前後の結果率であり、強制受粉でも結果率が増えなかったことから花粉制限は起こっていないと考えられた。訪花昆虫はハエ類や単独性ハナバチが中心であり、春先の林縁環境でこれらの送粉昆虫が有効に機能していた。

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和文誌でもなく報告書だった。 https://t.co/jpjQSch6Ql

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