著者
安川 通雄
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衞生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.65-74, 1996-03-31
被引用文献数
3

1)本研究の目的は,体脂肪率の増大に伴って身体各部位の皮脂厚がどのような割合で付着しているか,また,体脂肪率および身長調整周囲値(身長当たりの各部位の周囲値)と皮脂厚値の分布状態を,Aモード式超音波皮脂厚計で測定した皮脂厚値と水中体重測定法で求めた体脂肪率との関係から横断的に検討した.本研究の被験者は,18歳から49歳までの健康な白人男性60名および女性52名の計112名であった.皮脂厚の測定部位は,肩甲骨下角部,腹部,腸骨稜上部,上腕二頭筋部,上腕三頭筋部および大腿前部の計6部位とした. 2)本研究のすべての被験者の水中体重法による体脂肪率の平均値は男性が11.7±4.1%,女性が21.4±5.3%であった.体脂肪率の増大に伴って皮脂厚値の増加形成は,男女共に腹部が最も大きな値を示した.次いで,男性が腸骨稜上部,大腿前部,肩甲骨下角部,上腕三頭筋部および上腕二頭筋部の順となり,女性が腸骨稜上部,大腿前部,上腕三頭筋部,肩甲骨下角部および上腕二頭筋部の順となった. 3)皮脂厚の分布状態をみると,体脂肪率および身長調整周囲値が増大するのに伴って男女共に皮脂厚が増大するという傾向は認められなかった.特に腹部の皮脂厚値は,男女共に他のどの測定部位よりも大きなばらつきが観察された.すなわち,同じ体脂肪率でかつ同じ身長調整周囲値を有する被験者であっても,腹部の皮脂厚値は大きくばらついた. 4)以上のような腹部の皮脂厚値のばらつきは,皮下脂肪あるいは内臓脂肪のどちらかにより多く付着するといった,体脂肪の分布の個人差を考察すべきかもしれない.

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