- 著者
-
木下 睦
高橋 悟
山崎 友紀
金 放鳴
守谷 武彦
榎本 兵治
- 出版者
- 公益社団法人 石油学会
- 雑誌
- Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.4, pp.177-185, 2006-07-01
- 参考文献数
- 5
- 被引用文献数
-
12
オイルサンド層から熱攻法で採収されるビチューメンのオンサイト低粘度化・改質技術として開発研究中のアルカリ超臨界水熱改質法において,ビチューメンからベンゾチオフェン・ジベンゾチオフェン(BT・DBT)類が生成する挙動とそれらの分解挙動について考察した。アルカリ超臨界水熱改質法では,反応温度430℃,圧力30 MPaの条件でKOHを加えて処理した場合,反応時間が数分で終了する比較的迅速な初期の分解反応と,その後のゆっくりとした反応とに区分され,本報では後者を対象とした。得られた結果をまとめると以下のようである。(1)ビチューメンからBT・DBT類が生成し,主にこれらのうちのBT類が分解されることで脱硫が進行すると考えられる。(2)アルカリはビチューメンからBT・DBT類を生成する反応で消費される。(3)使用した2種のビチューメンについて,生成したBT・DBT類の種類は同様であったが,成分ごとの生成量は異なった。(4)生成したアルキルBT類の種類は構造上可能な化合物数の半数近くであり,アルキル基の炭素数が3以下のものがほとんどであった。(5)BT類はDBT類に比べ分解が容易であり,かつDBT類の生成量は多くないため,脱硫は主にBT類を経由すると考えられる。本研究で使用したビチューメンでは生成したDBT類の硫黄含有率は合計で0.3 wt%以下であった。<br>