- 著者
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兜 真徳
本田 靖
青柳 みどり
- 出版者
- SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
- 雑誌
- 環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.1, pp.45-57, 2006-01-30
地球温暖化やヒートアイランド現象に関連して,夏季高温日の個人の温度曝露実態を調べることは,対象地域についての健康リスク評価にとって重要である。筆者らはこれまで,携帯型の温度計を用いて直接測定を行ってきているが,その結果については別途報告予定である。一方,室内における空調機器(AC)による温度制御の実態は,温暖化対策との関連でも,重要な情報であるので,本研究では,質問調査によって,その実態を調査解析した。 約16000の対象者に郵送調査で質問紙を送り,2090の有効回答を得た(有効回答率=13%)。回答者を北海道,本州・九州,沖縄に分けると,AC利用率は北海道で低い(40%)が,その他の地域ではいずれも90%以上であった。AC利用者の中で,気温が25-30℃の範囲で「暑いと感じたらすぐに付ける」は238名,「我慢できなくなったら付ける」が1156名であった。前者では,15-30℃でスイッチを入れる人が60%,後者では30-35℃でスウィッチを入れる人は40%であった。全体的にみると,気温が35℃以上となると,ACを持っている人のすべてがACを利用していることが明らかであった。したがって,気温35℃は,ACを地域全体が一斉に利用する「行動的閾値」であると言える。暑熱日の主訴をみると,最も頻度が高いのが"よく眠れない"と"疲れるあるいは体が不調"が多く,前者は57%,後者が28%であった。また,これらの主訴はその他の地域より沖縄に高い傾向があった。一方,熱中症にかかったことがあるかどうかを聞いた質問に対しては,沖縄が一番低く,反対に北海道で高い傾向があった。北海道でも暑熱日には35℃を越える年もあり,そうした高温日にはその他の地域よりリスクが上昇することを示唆している。本調査結果のまとめには,有効回答率の低さ,また,郵送質問調査でもあり,バイアスがかかっている可能性が否定できない。別途報告している個人曝露調査結果のまとめと比較しつつこの結果を利用していただければ幸いである。