- 著者
 
          - 
             
             木村 聡
             
             相澤 寿子
             
             増山 智子
             
             仲間 恵美子
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 一般社団法人 日本環境感染学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.24, no.1, pp.21-26, 2009-01-23 
 
          
          
          - 参考文献数
 
          - 8
 
          
          
          - 被引用文献数
 
          - 
             
             
             2
             
             
          
        
 
        
        
          トイレの出入り口は不特定多数の者が接触し,病原体を媒介する可能性を有している.とりわけ最近普及した手指温風乾燥機(ハンドドライヤと略)では,水滴の飛散による周囲の汚染が指摘されており,底に溜まった水に触れる危険も考えられる.そこで我々は,ハンドドライヤの汚染状況を調査し,トイレ扉の取手等との比較を行った.あらかじめ手技を統一した男女各1名の検者が,病院の職員および患者用トイレ扉の取手と,ハンドドライヤの水滴受け部分など合計36箇所に,滅菌生理食塩水を含ませたシードスワブで拭き取り試験を行ない,生菌数の計測と菌種同定を行った.その結果,トイレ入り口扉からはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)をはじめとする皮膚常在菌が数10~数100個検出されたのに対し,ハンドドライヤの検出菌は1000個を超え,使用頻度が高いトイレでは10万個に達していた.男子トイレのハンドドライヤでは,黄色ブドウ球菌やCNSなど皮膚常在菌が主体を占めたのに対し,女子トイレではモルガネラ属,クレブシエラ属,エンテロバクター属などの腸内常在細菌が多く,皮膚常在菌の生菌数は有意に少なかった.以上よりハンドドライヤに貯留する水は,他の接触部位より汚染されている可能性が推定された.手洗い後はハンドドライヤの受け皿に触れぬよう注意が必要であり,水滴の飛散には何らかの対策が必要な可能性がある.<br>