著者
大野 洋美 須藤 元喜 小山 貴夫 矢田 幸博 土屋 秀一
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.627-633, 2008-11-25
被引用文献数
1

<b>目的</b>:高齢者の静的および動的姿勢制御の特性を明らかにするために,高齢者と若年者の安静立位時·動作時·動作後静止立位時の重心動揺を測定し比較検討を行った.今回は動的平衡能力を測定する際の動作として,排泄時の衣服の着脱動作に着目し,パンツ型オムツはき上げ動作時の重心動揺の比較を行った.その際はきやすさを調節したオムツを使用し,動作負荷を変化させたときの姿勢制御特性の調査を行った.<b>方法</b>:評価サンプルには,はきやすさを調整するために,お腹周り全体の収縮率を低応力から高応力まで5段階に操作したパンツ型オムツを用意した.被験者には最初に,開眼および閉眼立位状態で重心動揺の測定を行い,その後,重心動揺プレート上でオムツおよび下着を装着し,動作時および動作後静止立位時の重心動揺を測定した.さらにその後,はきやすさに関する主観的評価を行った.<b>結果</b>:安静立位時の重心動揺は,開眼時·閉眼時ともに高齢者群の方が若年者群よりも大きくなる傾向が見られたが有意差は認められなかった.また,はき上げ動作時では,はきやすいオムツを履くときの重心動揺の大きさは両群で同等であるが,はきにくいオムツを履いた時に,高齢者群で揺れが顕著に増大した.さらに動作後の静止立位時においても,高齢者群でのみ,はきにくいオムツを履いた後に重心動揺の増大が継続するという現象がみられた.<b>結論</b>:静的姿勢制御能力が低下していない健常な高齢者においても,動作時には動作の負荷に相関して重心動揺が増加する,つまり動的姿勢制御が低下することが明らかになった.さらに高齢者では動的姿勢制御相がその後の静的姿勢制御能力にも影響を及ぼし,機能を低下させる可能性が示唆された.転倒防止の観点から,介護者は明らかな身体能力低下がみられない高齢者に対しても,動作時および動作後の動向に注意を向けることが必要だと考えられた.<br>

言及状況

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