著者
左達 秀敏 村上 義徳 外村 学 矢田 幸博 下山 一郎
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.67, 2010 (Released:2010-04-08)
参考文献数
42
被引用文献数
3

歯磨き行為の積極的休息への応用について:左達秀敏ほか.花王株式会社東京研究所―目的:本研究の目的は,歯磨き行為における積極的休息としての有用性を明らかにすることである. 対象と方法:生理指標としてフリッカー値を,心理指標として主観的アンケートを用いて検証した.まず,17名の健康な若年男女(男性12名,女性5名,平均年齢±標準偏差;22.5±1.5歳,右利き)を歯磨き群と非歯磨き群に無作為に割り当てた後,両群にパソコン上で20分の連続計算課題を実施させた.その後,歯磨き行為を行わせ,その前後でフリッカー値と気分を計測した. 結果:歯磨き群のフリッカー値は,歯磨きをしない群と比べて有意に増加した( p<0.05).一方,気分については,“爽快感”が歯磨きをしない群と比べて有意に増加し( p<0.05),“集中力”,“頭のすっきり感”が増加傾向を示した(p<0.1).また,“倦怠”,“眠気”は,有意に減少した( p<0.01).考察と結論:歯磨き行為による体性感覚刺激や口腔内触覚刺激が総合的に大脳活動を賦活させたと考えられ,また,気分を爽快にする効果が認められたことから,歯磨き行為は,積極的休息として応用できる可能性が示唆された. (産衛誌2010; 52: 67-73)
著者
山本 由華吏 白川 修一郎 永嶋 義直 大須 弘之 東條 聡 鈴木 めぐみ 矢田 幸博 鈴木 敏幸
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.69-73, 2003-05-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
21
被引用文献数
6

We investigated the effects of cedrol, which is a sesquiterpene alcohol contained in cedarwood oil, on sleep using overnight polysomnography. This study included 11 healthy females (24.5±2.1 years). Days 1 and 2 were regarded as adaptation nights. Days 3 to 6 (4 days) were regarded as experimental nights. As the experimental condition, cedrol was volatilized for 4 hours starting from 2 hours before lights were turned off. No odor was given during the placebo condition. Each condition was performed for 2 consecutive days, in reverse order. Sleep time increased and sleep latency shortened in the presence of cedrol compared to those of sleep with placebo (p<0.05). Furthermore, sleep efficiency slightly increased in the presence of cedrol (p<0.10). Cedrol inhibited the excitement of the sympathetic nervous system and made the parasympathetic nervous system dominant, which may have made it easy to fall asleep.
著者
大野 敦子 佐久川 千津子 矢田 幸博
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.23-32, 2020-05-25 (Released:2020-05-25)
参考文献数
24

We have previously reported black tea aroma exhibits a sedative effect by suppressing sympathetic nerve activity and elevating parasympathetic nerve activity. Enhancement of sleep quality is also expected from the sedative effect of this aroma. The effect of black tea aroma on sleep in 20 women with high stress consciousness and sleep disorders; was evaluated in this study using data collected from questionnaires and physical activity measured over a 14 day test period. Psychological effects of reduced stress consciousness were improvement in sleep quality, and greater satisfaction with ease in falling and staying asleep; while physiological data showed reduced sleep latency, an increase in total sleep time, and a significant increase in sleep efficiency. These results strongly suggest black tea aroma improves overall sleep.
著者
須藤 元喜 上野 加奈子 大野 洋美 植田 章之 豊島 晴子 矢田 幸博
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.33-38, 2010-05-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Many infants wear paper diapers during the gait-forming period. We measured electromyography during walking in 10 infants under 3 conditions, and analyzed the motion: naked, wearing a paper diaper, and wearing a paper diaper containing physiological saline. The gait test was repeated in the same infants after 4 months to investigate changes in the influence of paper diapers. In the first test, the muscle burden was not significantly increased by wearing a paper diaper alone, but that on the biceps femoris was significantly increased by a paper diaper containing saline. In the second test 4 months later, the burden on the biceps femoris due to a paper diaper and that containing saline were significantly decreased. Motion analysis detected the minimum distance between the bilateral knees was significantly broadened when wearing a diaper containing saline in the second test.
著者
大野 敦子 鈴木 萌人 矢田 幸博
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.50-59, 2022-01-25 (Released:2022-02-10)
参考文献数
37

紅茶の香りが自律神経活動に及ぼす効果について検討した結果,ダージリン紅茶セカンドフラッシュの香り吸入後に縮瞳率および指尖皮膚温は有意に上昇した.その効果は,アッサム紅茶とウバ紅茶の香りの効果より大きかったことから,交感神経活動を抑制し,副交感神経活動を優位にする鎮静作用が高いことが示唆された.香気成分分析によりダージリン紅茶セカンドフラッシュに特徴的な香気成分;ゲラニオール,ホトリエノール,2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン,2-フェニルエチルアルコールを選定し,紅茶飲用時の規定濃度でそれぞれ吸入した結果,ホトリエノールのみが縮瞳率を有意に上昇させた.濃度依存性を検討した結果,ホトリエノールは5 ppm以下の低濃度において縮瞳率は有意に上昇した.さらに,ホトリエノール50 ppm吸入後に縮瞳率ばかりでなく,指尖皮膚温も有意に上昇したことから,ホトリエノールはダージリン紅茶セカンドフラッシュと同様の鎮静作用を有することが示された.以上の結果から,ホトリエノールはダージリン紅茶セカンドフラッシュの香りによる鎮静作用の発現に寄与する最も重要な成分であることが示唆された.
著者
大野 洋美 須藤 元喜 小山 貴夫 矢田 幸博 土屋 秀一
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.627-633, 2008-11-25
被引用文献数
1

<b>目的</b>:高齢者の静的および動的姿勢制御の特性を明らかにするために,高齢者と若年者の安静立位時·動作時·動作後静止立位時の重心動揺を測定し比較検討を行った.今回は動的平衡能力を測定する際の動作として,排泄時の衣服の着脱動作に着目し,パンツ型オムツはき上げ動作時の重心動揺の比較を行った.その際はきやすさを調節したオムツを使用し,動作負荷を変化させたときの姿勢制御特性の調査を行った.<b>方法</b>:評価サンプルには,はきやすさを調整するために,お腹周り全体の収縮率を低応力から高応力まで5段階に操作したパンツ型オムツを用意した.被験者には最初に,開眼および閉眼立位状態で重心動揺の測定を行い,その後,重心動揺プレート上でオムツおよび下着を装着し,動作時および動作後静止立位時の重心動揺を測定した.さらにその後,はきやすさに関する主観的評価を行った.<b>結果</b>:安静立位時の重心動揺は,開眼時·閉眼時ともに高齢者群の方が若年者群よりも大きくなる傾向が見られたが有意差は認められなかった.また,はき上げ動作時では,はきやすいオムツを履くときの重心動揺の大きさは両群で同等であるが,はきにくいオムツを履いた時に,高齢者群で揺れが顕著に増大した.さらに動作後の静止立位時においても,高齢者群でのみ,はきにくいオムツを履いた後に重心動揺の増大が継続するという現象がみられた.<b>結論</b>:静的姿勢制御能力が低下していない健常な高齢者においても,動作時には動作の負荷に相関して重心動揺が増加する,つまり動的姿勢制御が低下することが明らかになった.さらに高齢者では動的姿勢制御相がその後の静的姿勢制御能力にも影響を及ぼし,機能を低下させる可能性が示唆された.転倒防止の観点から,介護者は明らかな身体能力低下がみられない高齢者に対しても,動作時および動作後の動向に注意を向けることが必要だと考えられた.<br>
著者
大野 敦子 佐久川 千津子 矢田 幸博
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.10-22, 2022-02-25 (Released:2022-02-25)
参考文献数
62
被引用文献数
1

In this study, the effects of black tea aroma on sleep and psychological and cognitive functions were investigated in community-dwelling elderly women. Nocturnal inhalation of black tea aroma significantly shortened sleep latency and bed out latency while significantly increasing sleep efficiency. In the evaluation of psychological function using the MOS 36-Item Short Form Health Survey subscale, physical functioning and vitality significantly improved, and the evaluation of cognitive function showed a significant decrease in short-term memory reaction times. Significant correlations were found between shortened sleep latency and shorter short-term memory reactions, shortened sleep latency and higher Mini-Mental State Examination scores, shortened bed out latency and lower Athens Insomnia Scale scores, and shortened bed out latency and lower Self-rating Depression Scale scores. These results suggest that improved sleep onset and awakening resulting from nighttime exposure to black tea aroma may improve cognitive function and reduce the feeling of insomnia and depression.
著者
矢田 幸博 永嶋 義直 鈴木 めぐみ 鈴木 敏幸
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.310, 2006 (Released:2008-02-28)

【目的】冷え症状の愁訴と生理状態との関連性を明らかにすることを目的に冷え性意識を有する日本人女性の性格特性の調査と自律神経系評価計測を行った。【方法】東京近郊在住で冷え性意識のない女性群(健常群:20_から_60代)および本人愁訴とともに質問紙にて冷え性と判定された女性群(冷え性群:20_から_60代)を選択した。ストレス、疲労、性格特性および神経症を調査するためSCL30、CFSI、STAIの各質問紙およびCMI健康調査表を用いた。生理評価は、心拍変動解析、手掌部のペルチェ素子による温熱負荷時の血管反応性の周波数解析を行った。【結果】健常群のストレス得点に比して冷え性群の得点は、全年代で高く、ストレス得点が高くなるほど冷え性群の占有率が高かった。疲労感調査では、冷え性群で一般疲労、気力の減退が顕著であった。STAIおよびCMIによる性格特性、神経症調査では、冷え症群で特性不安が高い傾向が認められたとともに神経症の重症頻度が有意に高かった。一方、自律神経系計測では、冷え性群でRR間隔の有意な低値が認められた。また、温熱負荷時の血流周波数解析から冷え性群で血管拡張が起こりにくいことが示唆された。以上の結果から、冷え性意識のある女性は、生理心理両面において緊張状態にあり、冷え性の症状の発現や悪化につながっている事が示唆された。
著者
左達 秀敏 村上 義徳 外村 学 矢田 幸博 下山 一郎
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.67-73, 2010-03-20
参考文献数
42
被引用文献数
3 3

<b>歯磨き行為の積極的休息への応用について:左達秀敏ほか.花王株式会社東京研究所―目的:</b>本研究の目的は,歯磨き行為における積極的休息としての有用性を明らかにすることである. <b>対象と方法:</b>生理指標としてフリッカー値を,心理指標として主観的アンケートを用いて検証した.まず,17名の健康な若年男女(男性12名,女性5名,平均年齢±標準偏差;22.5±1.5歳,右利き)を歯磨き群と非歯磨き群に無作為に割り当てた後,両群にパソコン上で20分の連続計算課題を実施させた.その後,歯磨き行為を行わせ,その前後でフリッカー値と気分を計測した. <b>結果:</b>歯磨き群のフリッカー値は,歯磨きをしない群と比べて有意に増加した( <i>p</i><0.05).一方,気分については,"爽快感"が歯磨きをしない群と比べて有意に増加し( <i>p</i><0.05),"集中力","頭のすっきり感"が増加傾向を示した(<i>p</i><0.1).また,"倦怠","眠気"は,有意に減少した( <i>p</i><0.01).<b>考察と結論:</b>歯磨き行為による体性感覚刺激や口腔内触覚刺激が総合的に大脳活動を賦活させたと考えられ,また,気分を爽快にする効果が認められたことから,歯磨き行為は,積極的休息として応用できる可能性が示唆された.<br> (産衛誌2010; 52: 67-73)<br>
著者
木村 美可 河野 麻衣 中明 初予 鈴木 めぐみ 神川 康子 矢田 幸博
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-7, 2011-02-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
20

This study examined the mental and physiological responses to degree of comfort in using sanitary napkins. During menstrual period two types of napkins (thin type, thick type) were used by 8 women each. The indexes were 5 point scale, heart rate (HR), ratio of low frequency and high frequency (LF/HF) of heart rate variability and salivary chromogranin A (CgA). The results of 5 point scale (subjective evaluation) showed the thin type napkins were more comfortable than the thick type napkins. The results of LF/HF and CgA (physiological evaluation) indicated that sympathetic activities were lower in the thin type napkin users than in the thick type napkin users. From these results we concluded that using comfortable napkins have less mental and physiological stress.
著者
須藤 元喜 千葉 亜弥 上野 加奈子 矢田 幸博 赤滝 久美 三田 勝己
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.175-182, 2010
被引用文献数
3 1

下肢の細胞外液貯留における不快感は女性の代表的な愁訴の1つであり,むくみと呼ばれている.むくみは筋ポンプ運動による改善が勧められていることから,筋疲労との関連が考えられるが,その詳細については明らかになっていない.そこで,下肢におけるむくみと疲労の関連性を明らかにするために,化粧品販売職の女性182名にアンケート調査を行い,153名から有効回答を得た.その結果,下肢の疲れを94%,むくみを90%の回答者が感じており,疲れとむくみの意識は重なる部分が多く,下肢組織外液貯留の心理的評価には疲労の項目が必要であると考えられた.また,疲れ,むくみ感覚が最も多かった部位はふくらはぎであり,疲れで78%,むくみで85%の回答者が感じていた.また,むくみの不快感の原因を67%が大きさ,疲労の不快感の原因は66%が痛みという言葉でそれぞれ特徴的に表現していた.これらの結果をもとに心理的な疲れとむくみを評価するVAS主観評価調査表20項目を作成した.作成したVAS(visual analogue scale)主観評価調査表を用いて立ち仕事およびデスクワークの勤労女性19名を評価した.測定は就労前の午前9時から10時までの朝方と,就労後の午後4時から5時までの夕方に実施し,就労前後および立位と座位の勤労姿勢を比較した.全被験者19名の就労前後のVAS主観評価の結果は,20項目中16項目で不快感が有意に増加した.就労姿勢別の解析では,デスクワーク群9名に比して立ち仕事群10名の就労前後の不快感上昇が,足首周囲長,ふくらはぎ周囲長,下肢の重さ,ふくらはぎの痛み,足首の痛み,土踏まずの痛みの7項目で有意に増加していた.アンケート調査を手がかりに作成したVAS主観評価調査表は組織外液貯留の下肢不快感を実際の労働条件において評価することができた.
著者
横山 ハツミ 林 慎一郎 田中 秀樹 山崎 登志子 西川 まり子 白木 智子 糠信 憲明 廣川 聖子 片山 はるみ 矢田 幸博 吉田 伊織
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

看護学生の老化の理解に役立つエイジングメイクの技法(メイク道具と手順)と教材(DVDとライフイベントCAIゲーム)を開発した。この教材を用いた演習により、学生が老ける、衰退するなどの加齢のプロセスを体験することで、いずれ訪れる老いを偏見なく受容することができる。高齢者のフィジカル・メンタルの両側面から理解が深められ、高齢社会の主人公である高齢者ケアニーズの核心に迫る、主体的な学習教材として役立つ。