著者
高間 康史 瀬尾 優太
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.316-326, 2009-06-15
参考文献数
21

本論文では,可視化表現共有型掲示板システムに基づく地域防犯活動支援システムを提案し,防犯活動に関するオンライン議論の支援機能について有効性を検証する.近年,子供を狙った犯罪が各地で発生しており,地域防犯活動の重要性が高まっている.数多くの地方自治体などにおいても,防犯活動に向けた様々な取り組みが行われるようになってきているが,児童への安全教育,防犯情報の共有などの個々の活動は独立に行われており,連携はあまり考慮されていない.本論文では,児童による地域安全マップの作成から,得られた安全マップを保護者などで共有し,これを元に防犯活動についてオンラインで行う議論までの一連の地域防犯活動を包括的に支援可能なシステムを構築する.児童が作成した地域安全マップを題材としてオンラインで行われる,防犯活動に関する議論を支援するために,可視化表現共有型掲示板システムのコンセプトを採用する.近年,コミュニケーションやグループでのデータ分析における可視化表現共有の有効性が指摘されており,可視化表現に対する気づきや解釈を共有し,議論することで対象データセットの広い探索・深い理解につながることが期待されている.タスク志向の議論を支援するために,可視化表現共有型掲示板システムでは可視化表現中の着目部分に注釈(グラフィカルアノテーション)を付与してメッセージ中で引用する機能,議論のコンテクストを把握するための関連メッセージ検索機能を備えている.本論文では,議論対象とするアノテーションを効率的に検索する機能も新たに提案し,タスク志向の議論をより効率的に支援する事を試みる.提案システムを小学校の授業で実際に利用してもらい,得られた地域安全マップを題材とした地域防犯活動に関する議論を,提案システムを用いて行った.議論参加者による評価の結果,提案システムは防犯活動に関する議論支援に有効であることを示す.また,議論支援機能のオンライン議論における使われ方について,スレッドを分析して考察した結果,スポット引用機能,スポット検索機能が具体的なスポットに言及しながらの議論を促進する役割を果たすことを示す.本論文で提案したシステムの支援機能は現状では限られたものであるが,今後,犯罪・事故情報なども共有可能とすることや,議論中の情報見落としを防ぐ機能の追加などにより,地域防犯活動支援システムとしてより実用的なものへ拡張していくことが期待できる.

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