著者
掛谷 英紀 大南 勝
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.617-625, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
21

本論文では,国会会議録を機械学習することで,短命に終わる議員・大臣の発言の特徴を分析する.短命議員については,マスコミ報道の追い風に乗って大量当選したいわゆる「チルドレン議員」を対象に,一期で終わってしまった人物と,その後議員を続けることができた人物の間に,国会質問でどのような違いが見られるかを分析する.短命大臣については,大臣就任後舌禍や不祥事によって辞任した人物と,長期間大臣を務め上げた人物の間に,国会答弁でどのような違いが見られるかを分析する.機械学習には最大エントロピー法による学習と,判別分析の考え方を応用して特徴抽出を行うナイーブ・ベイズ法による学習をそれぞれ実装し,その分類性能を比較する.分析の結果,短命議員の質問には,尊敬語・謙譲語などの丁寧な表現が少ないこと,損得勘定に関する表現の使用が多いことが分かった.また,短命大臣の答弁には,国会の場にふさわしくない砕けた表現が多用されるほか,高い理想や自身の頑張りを主張する発言が多い傾向が見出された.
著者
高橋 英之 岡田 浩之
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.450-463, 2010-08-15 (Released:2010-11-15)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

コミュニケーションは人間の社会性の基盤となるものである.コミュニケーションは情報交換であり,一般的にはそこに曖昧さは必要が無いと考えられる.本論文では,人間のコミュニケーションに含まれる曖昧さが,特に大きな規模の社会集団では非常に重要な機能を持つという仮説を提起し,それを検討するためのシミュレーションと二つの顔表情を題材とした心理実験を行った.本論文ではそれらの研究の詳細を述べるとともに,それらの結果を受け,社会性やコミュニケーションの背後には曖昧さを処理する脳機能が大きな働きをしているのではないかという議論を行った.
著者
花房 竜馬 荒木 健治
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.683-692, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
14

現在,スマートフォンやスマートスピーカーの普及によって人と対話エージェントとの対話は日常的に行われている.しかし,これらのデバイスに搭載されている対話エージェントは雑談システムとしての能力が不十分であり,人同士の対話と同等の面白さを感じることはできない.この問題を解決するためには,対話中の文脈情報を考慮した高度なユーモア処理を実現する必要がある.これまでの研究において,対話中の文脈情報を含むユーモアの面白さや文脈情報が面白さに与える影響については明らかにされていない.本論文では対話文脈を考慮した駄洒落の面白さを評価する標準データベースを構築するために,駄洒落を含む対話を収集し,12,000件の駄洒落が含まれる対話に対して対話の面白さを複数人で評価した.それに加えて,対話文脈による駄洒落の面白さの変化について分析を行った.
著者
榊 剛史 松尾 豊
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.773-780, 2014-08-15 (Released:2014-09-23)
参考文献数
16

近年,ソーシャルメディア上のデータを分析することで社会調査やマーケティングを実現する試みが増加している.ユーザの投稿内容を分析し,マーケティングに活かすには,調査対象のユーザ属性を取得する必要がある.ユーザ属性によっては,推定しやすいものと推定しにくいものがあり,例えば年齢や性別などの属性の推定は,以前から研究が行われていた.一方,ユーザ属性のなかでも職業は取得することが難しく,これまで研究が行われていない.本研究では,ユーザの職業を判別するために,ユーザの投稿内容に加え,ユーザの自己紹介文およびユーザが他の人から付与されたタグの情報を使うことで精度を向上させる.提案手法では,サポートベクターマシン(SVM)を使い,ユーザの投稿内容や自己紹介文,被リスト名を素性とすることで,会社員の職業推定に関して,適合率0.85,再現率0.77という実用的な精度で職業判別を実現することができた.
著者
林 里奈 加藤 昇平
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.832-839, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
22

近年,ロボットとのふれあいを通して精神的な癒しを与えるロボット・セラピーが注目を集めている.ロボット・セラピーに使用されるセラピーロボットは,簡易な音声反応をするものが多い.本稿では,そのようなロボットに対し同調傾向の考え方を導入し,コミュニケーション活性時に最も強く同調する基本周波数を直前のユーザの発話音声の基本周波数と同調させることによる心理的・生理的ストレス緩和作用への影響を,評価実験を通して検証した.その結果,応答音声の基本周波数をユーザの発話音声の基本周波数に同調させた方が,得られる疲労の緩和と活気の向上作用,α波の含有率増進作用が有意に高いことを確認した.逆に,応答音声の基本周波数をユーザの発話音声の基本周波数とは無関係にランダムに調整させた方が,混乱の緩和作用が有意に低いことを確認した.したがって,応答音声の基本周波数は,ランダムに調整するのではなく,発話音声の基本周波数に同調するよう調整した方が,心理的・生理的ストレス緩和作用を引き出すことができると言える.
著者
高橋 英之 伊豆原 潤星 改田 明子 山口 直孝 境 くりま 小山 虎 小川 浩平 石黒 浩
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.852-858, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
17

コミュニケーションを円滑に行う上で,相手に対する事前知識や信念を互い有し,それを振舞いや発言にトップダウンに利用することは重要である.その一方で,多くの人間とロボットのコミュニケーションにおいては,ロボットに関する事前知識や信念を人間側が持っていないことが多い.本論文では,事前知識や信念が人間とロボットのコミュニケーションに及ぼす影響を調べるために,著名な文豪である夏目漱石のアンドロイドを用いて,被験者が“夏目漱石”や“ロボット”,“人工知能”に対して有している事前知識や信念がどのように“漱石アンドロイドとのコミュニケーション”に対する印象に影響を与えるのかを調べた.その結果,“夏目漱石”に対する事前知識は緩く漱石アンドロイドとのコミュニケーションにおけるリアリティと関連する一方,それ以上に“人工知能”に対する畏怖の念が強く漱石アンドロイドのリアリティと関連していることが分かった.
著者
棟方 渚 吉田 直史 櫻沢 繁 塚原 保夫 松原 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.243-249, 2005
参考文献数
6
被引用文献数
5 2

近年, コンピュータシステムの急速な普及により, 老若男女, 多様なユーザ層がコンピュータを利用している.このようなIT技術の進展の中で, ユーザがコンピュータを道具として使用するばかりではなく, コンピュータがユーザの身体情報に基づいてユーザと相互作用することにより, 人と機械の間にコミュニケーションを生み出すような新しいインタフェースを開発する試みがある[1].しかし, 人の身体情報の意味が十分に理解されつくしてはいないこと, また, 相互のコミュニケーションを可能とするには両者が能動的であることが要求されるため, そこに新しいコミュニケーションを生み出すことは困難である.本研究では, 人の生体信号をゲームに取り入れることで人とコンピュータの新しいインタラクションの実現を試みた.数ある生体信号の中でも皮膚表面抵抗に着目した.実験では, プレイヤの皮膚表面抵抗の変動から心理状態の変化を読み取り, それをプレイヤに提示する一種のバイオフィードバック系を利用したゲームを作成した.このゲームは, プレイヤの皮膚表面抵抗の変動を測定し, その変動が大きいほど敵が多く現れ, ゲーム画面上のオシロスコープやインジケータにリアルタイムに皮膚表面抵抗の変動をプレイヤ自身へ提示する仕組みとした.実験はこのゲームのバイオフィードバックの構成法やゲーム画面等の状態を変え, プレイヤの皮膚表面抵抗の変動を測定しそれらを比較した.比較は二通りの実験により行い, 一方はバイオフィードバックの有無によって皮膚表面抵抗の変動に与える効果を比較した.もう一方の実験では, ゲーム画面上に設けたオシロスコープやインジケータに, プレイヤの皮膚表面抵抗の信号を遅延させて表示し, リアルタイム表示の場合との変動の仕方を比較した.実験の結果では, バイオフィードバックがあるゲームと無いゲームではバイオフィードバックを使用したゲームの方がプレイヤの皮膚表面抵抗の変動が大きかった.また, バイオフィードバックを遅延させた表示のゲームよりもリアルタイムに表示させたゲームのプレイヤの方が, ゲーム中の皮膚表面抵抗の変動が大きかった.これらの結果から生体信号を用いたゲームにおいて, 生体信号をゲームの進行に反映させることの他に, ゲーム画面上のバイオフィードバックの表示を行うことが重要な要素であることがわかった.特に, 遅延表示の実験では, 表示を遅延したことに気付いた者はいなかったが, 変動量にはそれぞれ差がでたことから, リアルタイムにゲームの進行に反映させることや, バイオフィードバックの表示を行うことも重要であることがわかった.このような結果となったのは, ゲームを通じて無意識の自分自身を意識することが, 更に皮膚表面抵抗の変動を生じさせたからであると推測される.
著者
谷津 元樹 荒木 健治
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.875-886, 2016-10-15 (Released:2016-11-12)
参考文献数
25
被引用文献数
2

近年,対話システムの普及に伴い,機械が言語的ユーモアを理解する必要性が高まっている.これまでの研究において,駄洒落などの韻文のユーモアを対象に大規模な自然文の集合から検出を試みた例は確認されていない.駄洒落を含む文をブログテキストよりSVMを用いて分類する手法を提案し,有効な素性を調べるため,駄洒落全般の類型別の構成比の標本調査を行った.その結果,文内に音韻的に類似した1形態素およびそれに対応する音素列を有する駄洒落の類型が支配的であることが判明した.このため本論文では,語彙素性に加え,音韻類似度に基づく音韻類似区間の検出ルールを素性としたSupport Vector Machineを用いた分類による検出手法を提案する.検出性能評価実験の結果,提案手法におけるルールベース素性の付加の有効性が確認された.
著者
福田 悟志 難波 英嗣 庄司 裕子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.592-600, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1

新型コロナウイルスワクチンの開発会社や政府は,人々にワクチン接種への安心感を与えるために,ワクチンの効果や接種状況といった情報を日々発信している.しかし,ワクチンに対する関心やワクチンの接種状況は国や地域によって様々であるため,必ずしも人々に安心を感じてもらえないことがある.本稿では,Twitter上に投稿されたツイートを解析し,人々が新型コロナウイルスワクチンに対して持つ感情とその感情が表れる要因を分析した.日本,米国,英国,カナダ,オーストラリア,インドの6カ国を対象とし,プルチックの感情の輪で定義されている8種類の感情に基づいた機械学習による感情分類,および係り受け解析とバースト検知手法によるテキスト解析アプローチを適用した.感情分類の結果において,人々が持つ一般的な感情として,日本では恐れ,米国,英国,カナダ,オーストラリアでは怒りと嫌悪,インドでは喜びが表れていた.また,感情の時系列的変化において,バースト検出された係り受け関係に基づいて,特定の感情が盛り上がった期間におけるツイートを分析したところ,多くのユーザによりワクチン関連のニュースが投稿されたこと,1人のユーザにより同一内容のツイートが大量に投稿されたこと,ワクチンに関する同一の出来事でも個人の状況に応じて異なる感情が盛り上がる場合があるといったいくつかの特徴を発見した.
著者
岡本 雅史 大庭 真人 榎本 美香 飯田 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.526-539, 2008-08-15
被引用文献数
5 3

本研究は,漫才対話が二者間での対話形式を取りながら第三者である観客への情報伝達を可能とする<オープンコミュニケーション>構造を持つことに着目し,発話・視線・姿勢などのマルチモーダルな要素間の相互作用の分析を行うことにより,二体の擬人化エージェントの対話を通じてユーザに効果的にインストラクションを行う対話型教示エージェントモデルを構築する上で有用な知見を得ることを目的とする.特にオープンコミュニケーションの大きな特徴の一つであるコミュニケーションの「外部指向性」に焦点を当て,非明示的な観客への情報伝達である「外部指向性」と直接的に観客への働きかけを行う「内部指向性」の両者が,どのように演者内のマルチモーダルな振る舞いと演者間のインタラクションによって実現されているかをプロの漫才帥の対話映像の分析から探った.結果として,オープンコミュニケーションにおける指向性の顕在化は,今回分析対象とした二組の漫才コンビ間で異なる形式を持つことが明らかとなり,オープンコミュニケーションの指向性を捉える上でマルチモーダルなチャネル間の相互関係が重要な役割を果たしていることがわかった.

7 0 0 0 OA 目次

出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.toc, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)

5 0 0 0 OA 音楽する脳

著者
藤波 努
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.8-13, 2012-02-15 (Released:2018-01-11)
著者
星野 怜旺 椎名 孝之 森戸 晋 今泉 淳
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会誌 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.652-657, 2018-08-15
被引用文献数
1

<p>本研究では,プロ野球において,球団間の未消化試合数の差ができるだけ小さくなるようなスケジュールの作成を目的とする.確定的なスケジュールの作成のみにとどまらず,雨天中止という不確実性を考慮したスケジュールを考える.まず整数計画法によりスケジュールを生成する.そして雨天中止を考慮することにより,球団間の未消化試合数の差の最小化を図る.本研究では,実際の日程と比較して全体の未消化試合数を抑えるとともに,各チームの最大値と最小値の差も抑えることが出来た.これにより,球団間の未消化試合数の差を抑制できた.</p>
著者
宮本 雅人 酒井 浩之 増山 繁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.752-760, 2006-10-15
被引用文献数
1 2

研究のプレゼンテーションでは,限られた時間の中で,聴衆に研究成果をよく理解してもらうために,プレゼンテーションスライドの作成が必要不可欠である.しかし,スライドの作成には多くの時間と手間を要する.そのため,多くの研究者がスライド作成の効率化を望んでいる.本研究では,研究者の負担軽減を目的として,論文LATEX原稿からスライドを自動生成する手法を提案する.本手法では,LATEXファイルの解析,スライドへの内容の割り当て,接続詞を利用した箇条書き生成を行なう.LATEXファイルの解析では,スライド生成に必要な情報は残し,不要な情報の削除を行なう.LATEXファイルの定型的な構造を利用すれば,必要な情報を特定することが可能である.スライド割り当てにおいては,論文中での名詞の出現頻度,エントロピー,idf値に基づいて名詞の重要度を計算する.その重要度に基づいて,各セクションに対して,スライド枚数の割り当て,重要文の抽出を行なう.接続詞を利用した箇条書き生成においては,並列関係を表す接続詞を利用する.なぜなら,並列関係を表す接続詞を含む文には,その文と対になる文が存在する場合が多いからである.評価の結果,本手法は論文に忠実なスライド生成に有効であることがわかった.
著者
重田 桂誓 松村 敦 宇陀 則彦
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.609-623, 2013-02-15 (Released:2013-03-04)
参考文献数
14
被引用文献数
1

現在,Web コンテンツを対象としたキュレーションが注目されている.キュレーションとは,あるテーマに対して人が独自の視点でコンテンツを取捨選択し,1つにまとめることである.キュレーションにおいては,このようなコンテンツを解釈する視点であるコンテキストが重要とされている.しかし,Naver まとめをはじめとする既存サービスでは,多様なコンテキストを表現できない.さらに,コンテキストの直感的な把握ができないため,試行錯誤しながらよりよいキュレーションを行うことが困難である.この問題を解決するために,本研究では表紙生成エンジンを用いた二次元配置型 Web キュレーションシステムを開発した.二次元配置は Web コンテンツの自由なレイアウトやキュレーションされたページ全体の俯瞰を可能にする.一方,Web ページの表紙は,画像やテキスト,色を組み合わせて生成するため,個々のページの内容やコンテキストの直観的な把握を助ける.本システムの有効性を評価するため,学生 16 名を対象に Naver まとめとの比較実験を行った.その結果,本システムの方が多種多様な表現によるキュレーションが行われ,また,まとめたページに含まれる視覚的要素の割合も高かった.さらに,本システムの方がコンテンツの見た目や直観性を意識してキュレーションする傾向も確認できた.