- 著者
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笠原 里恵
神山 和夫
- 出版者
- 日本鳥学会
- 雑誌
- 日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.1, pp.35-51, 2011-04-28
環境省の行っているガンカモ類の生息調査で得られた数値データとモニタリングデータを解析するソフトウェアであるTRIMを用いて,日本で越冬するカモ類13種における1996年から2009年までの個体数の増減を日本の8地方区分による地方別,また都道府県別に解析した.結果として,分析期間中,マガモ <i>Anas platyrhynchos</i> とコガモ <i>Anas crecca</i> は全国的に減少傾向にあった一方でキンクハジロ <i>Aythya fuligula</i> やスズガモ <i>Aythya marila</i> は全国的に増加傾向にあった.ヒドリガモ <i>Anas penelope</i> では地方による個体数の増減は少なかった.多くの種において個体数の変化傾向は県や地方によって異なっていたが,13種中9種が関東地方で,8種が中部地方で減少傾向を示し,8種が近畿地方で,5種が中国もしくは四国地方で増加傾向を示した.この結果は調査が行われている1月中旬において,多くのカモ類の分布が変化していることを示唆している.カモ類の個体数に影響を及ぼし得る要因として,繁殖地や越冬地の環境変化,餌付け状況や地球温暖化による移動距離もしくは渡りの時期の変化等が考えられるが,今後のさらなる研究が望まれる.