著者
三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.161-170, 2009-10-24
被引用文献数
2
著者
岡 奈理子 土屋 光太郎 河野 博 菊池 知彦 丸山 隆
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.52-56, 2013-04-23

伊豆諸島鳥島(北緯30°29′02″東経140°18′11″)で,2000年5月中旬,巣立ち期に近いクロアシアホウドリ<i>Phoebastria nigripes</i>(Audubon 1849)のヒナが吐出した胃内容物を採取し同定した.4羽すべてが中深層性の遊泳動物を吐出した.このうちイカ類はアカイカ科トビイカ属トビイカ<i>Sthenoteuthis oualaniensis</i>,ダイオウイカ科ダイオウイカ属,サメハダホオズキイカ科オオホオズキイカ属,ユウレイイカ科ユウレイイカ属,魚類はクロボウズギス科,エビ類はヒオドシエビ科アタマエビ属アタマエビ<i>Notostomus japonicus</i>の成体であった.クロボウズギス科はクロアシアホウドリの胃内容物から初めて出現した.クロアシアホウドリの親鳥自らがこれらの中深層性の遊泳動物を自力で捕獲したとみるより,人間活動により投棄されたり,餌動物自らが潜水遊泳に長けた高次捕食者の採食活動や他の理由で死んで浮上したものを,採食した可能性が高いと考えられた.クロアシアホウドリが本来は採食機会がない中深層性の遊泳動物を採食していたことは,彼らが海洋のスカベンジャー,もしくは人間活動や他の高次捕食者の採食活動などに依存した採食ニッチを持つことを示す.
著者
清水 義雄 中村 雅彦
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.17-30, 2000-07-25
参考文献数
26

鳥類の混群形成の意義には,相利共生,片利共生,寄生の3種類がある.カモ類の採餌混群では,随伴種は中核種の採餌行動により利用可能となった餌を採餌することで採餌効率を上げ,中核種は随伴種による明確な悪影響を受けないことから,混群形成の機能的な意義は片利共生とされてきた.渉禽類やスズメ目鳥類の混群では,混群サイズの増加にともない餌をめぐる競争や攻撃頻度が増大するため,随伴種のみならず中核種も採餌効率が下がること,人為給餌による餌量の増加は混群形成を抑制することがわかっている.しかしカモ類では,実験的に餌量を操作し,餌量の違いが混群形成の様式,混群サイズ,種間順位,各構成種の採餌行動に与える影響を明らかにした研究はない.そこで本研究は,非繁殖期に混群を形成するコハクチョウ,ホシハジロ,オナガガモに人為給餌を施し,人為給餌前後の混群形成の様式,採食行動,社会行動を比較することにより,餌量が混群形成の機能的意義に与える影響を明らかにすることを目的とした.<br>調査は1996年10月15日から12月28日まで長野県南安曇郡豊科町の犀川貯水池で行なった.貯水池の一部に実験区を設定し,約30kgのイネの種子やもみがらを1日3回与え,餌量を操作した.群れは,単独,同種群,コハクチョウとホシハジロの2種混群,コハクチョウとオナガガモの2種混群,ホシハジロとオナガガモの2種混群,3種混群の6つのタイプに分け,人為給餌前後で各群れタイプの個体数を記録した.人為給餌前後の追従関係,混群タイプの構成割合,採餌割合,攻撃頻度を比較するため,コハクチョウ25個体,ホシハジロ22個体,オナガガモ21個体を一個体当たり8~13分間連続してビデオカメラで録画し,行動を分析した.各種の採餌テクニックや採餌頻度は,群れタイプで異なることが予想されたので,各群れタイプに属するコハクチョウ109個体,ホシハジロ91個体,オナガガモ79個体を一個体につき約5分間ビデオ録画し,人為給餌前後で採餌テクニックと採餌頻度を分析した.<br>採餌混群は,人為給餌前後とも,コハクチョウが首入れ採餌をする前に水中を脚で頻繁にかき回すときに形成された.脚のかき回しにより水底に沈むイネやぬかがわき上がり,ホシハジロはコハクチョウの直下に潜水採餌,オナガガモはわき上がった餌を両種の周囲で採餌した.各種の追従行動から,3種混群の中核種はコハクチョウ,追従種がホシハジロとオナガガモであり,オナガガモはコハクチョウに追従するホシハジロに追従することがわかった.追従頻度は人為給餌後に増加し,その結果3種混群の混群形成率が増加し,群れサイズは約2倍に上昇した.この時,構成種の76%がホシハジロだった.採餌割合は,人為給餌後の3種混群時に3種とも増加した.<br>人為給餌前のコハクチョウの首入れ採餌頻度は3種混群時が最も高く,ホシハジロも3種混群時及びコハクチョウとの混群時に潜水時間を短縮することで潜水採餌の頻度を高めた.オナガガモは3種混群時のみ,ついばみ採餌,首入れ採餌,こしとり採餌の3種類の採餌テクニックを併用し,こしとり採餌では移動距離を短くすることにより採餌頻度を高めた.人為給餌前は3種とも3種混群において採餌頻度を高めているため,採餌混群の機能的意義は相利共生といえる.人為給餌後の3種混群では,コハクチョウだけが採餌頻度を下げ,ホシハジロに対する攻撃頻度を増加させた.これに対しホシハジロとオナガガモは人為給餌前と同様に採餌頻度を高めていた.したがって人為給餌後の採餌混群の機能的意義は,宿主がコハクチョウ,寄主がホシハジロ,オナガガモの寄生関係といえる.<br>3種混群のコハクチョウにとって,ホシハジロの適度な個体数は,自らの採餌頻度を高めるのに有効だが,人為給餌による過度の群れサイズの増加はコハクチョウの採餌行動の混乱,攻撃頻度の増加をもたらし,採餌頻度は減少する.このことから,随伴種であるホシハジロの個体数が採餌混群の適応的意義を決定する主因と考えた.人為給餌の餌は3分以内に水中に沈み,沈んだ餌はコハクチョウが脚でかき回すことではじめてホシハジロ,オナガガモが利用可能となる.それゆえ,カモ類の混群では,与えた餌の絶対量ではなく,中核種により開発され随伴種が利用可能になった餌量が混群形成に影響を与えると考えた.
著者
樋口 亜紀 阿部 學
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-30, 2001-02-25
被引用文献数
1

本研究では,飼育している3羽の成体フクロウ <i>Strix uralensis</i> の摂食量•排出量を測定し,餌動物と排出物のエネルギー量からフクロウのエネルギー収支を求め,飼育下のフクロウの必要餌量を明らかにした.以下に結果を示す.<br>1)3羽のフクロウの同化エネルギー(AE)は,平均 447.2±9.1kJ/dayで,単位生体重あたりの同化エネルギーは0.702±0.014kJ/dayであった.<br>2)測定期間中のフクロウの体重は0-1.4%の範囲で変化し,生産エネルギーは5.2±1.OkJ/day,維持エネルギーは442.2±9.OkJ/dayと同化エネルギーの98.8±0.2 %を維持エネルギーが占め,成体では同化したエネルギーのほとんど全てを個体の維持に費やしていた.<br>3)体重639.6gのフクロウは,1日に567.9±10.4kJ のエネルギーを摂取し,ペリットとして43.4±1.4kJ, 糞として77.3±1.2kJの,合わせて120.8±2.OkJを排出した.<br>4)排出物の単位乾燥重量あたりのエネルギー含有量は,ペリットが13.2±1.1kJ/9,糞が11.0±0.3kJ/9であった.<br>5)フクロウは1日に体重の13.2%に相当するアカネズミ2.3個体(83.9g,567kJ)を摂食し,78.5%を同化し,ペリットとして7.5%,糞として14.0%排出して体重を維持していた.
著者
江崎 保男 橋口 大介 金沢 正文 今堀 るみ子 池田 善英
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.267-279, 2000-03-01
被引用文献数
3 6

1)京都府南部の丘陵地域に約40km<sup>2</sup>の調査地をもうけ,オオタカの目視調査を1年間おこなった.丘陵部はアカマツが混じりコナラを主とする山林,平地部は農耕地と市街地であった.<br>2)オオタカは周年にわたって出現した.調査地中心部の約5km<sup>2</sup>の孤立林で1つがいが営巣し,繁殖に成功した.孤立林の外側には広い山林あるいは農耕地•市街地が虫食い状にまじる山林が存在したが,これらの場所には営巣つがいが存在しなかったと考えられる.<br>3)翼羽の欠損によりつがいのオスは個体識別ができたが,繁殖期にはこのオス以外のオスは確認できなかった.繁殖期を前半と後半に区分すると,オスの行動圏の大きさはそれぞれ6.8km<sup>2</sup>と10.8km<sup>2</sup>であった.<br>4)7月から8月にかけて出現した幼鳥は調査地内で巣立った個体であると推測されたが,巣立ち直後の7月には巣の付近でのみ目撃され,8月にはかなりよく動き回るようになり活動域が季節とともに拡大する様子がみられた.<br>5)オオタカの出現パターンやその他の状況証拠から,孤立林を含む調査地中心部は繁殖期にはつがいによって独占使用されていて,行動圏の大きさは5-10km<sup>2</sup>であったと考えられる.一方,非繁殖期には同じ地域が複数の成鳥オスや亜成鳥を含むオオタカによって非排他的に共同利用されていたとみられる.<br>6)孤立林は繁殖期のみならず周年をとおしてオオタカの生息の好適地であったと考えられるが,尾根にかこまれた比較的安全な巣場所を有することにくわえて,比較的大きな孤立林であること,かつ狩り場として適当な農地につつく林縁部を有することなどがオオタカに好まれる理由ではないかと推察される.
著者
福田 道雄 成末 雅恵 加藤 七枝
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.4-11, 2002-05-31
被引用文献数
16 24

日本におけるカワウの生息状況は,非常に劇的な変化を示した.1920年以前は北海道を除く全国各地で普通に見ることができた鳥であった.ところが,明治以降から戦前までの間は,無秩序な狩猟などによって急減したとみられる.戦後は水辺汚染や開発などによって減少したと考えられ, 1971年には全国3か所のコロニーに3,000羽以下が残るのみとなった.しかしながら,その後カワウは残存したコロニーで増加し始め,それらの近隣広がった.1980年代からは愛知,岐阜,三重の各県で始まった有害鳥獣駆除の捕獲圧による移動や分散で,各地に分布を拡大していったと考えら れる.増加の主な理由は,水辺の水質浄化が進み生息環境が改善したこと,人間によるカワウへの圧迫が減少して営巣地で追い払われることが少なくなったこと,そして姿を消した場所で食料資源である魚類が回復したことなどが考えられる.2000年末現在では,50,000~60,000羽が全国各地に生息するものと推定される.
著者
高橋 晃周
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.22-35, 2004-07-30
被引用文献数
3 3

海鳥類は通常,繁殖地から遠く離れた餌資源に依存し,繁殖地と採餌場所の間を繰り返し往復しながら繁殖を行っている.このような繁殖における基本的制約から,海鳥類の親の餌の選択や,採餌にかける努力量,採餌効率の個体間の違いは繁殖成績に大きく影響すると考えられる.本論文では,海鳥類の採餌行動と繁殖成績の関係を個体レベルで調べた研究について簡単にレビューした.海鳥の個体ごとの食性は,これまで伝統的に餌•ペリットのサンプリングや直接観察により調べられていたが,最近では安定同位体比を用いた解析も行われ始めた.これらの研究では,エネルギー価の高い餌を専門的または高い頻度で採餌する個体の繁殖成績が高いという傾向が見られる.しかし,食性の個体変異の研究例はカモメ類に偏っており,他の海鳥類での研究が必要である.海上での海鳥の採餌行動は,近年発達した小型の動物装着型記録計や,衛星またはVHF発信器によって追跡されてきている.このような計測器によって,親の海上での採餌努力量を定量化したペンギンにおける2つの研究では,親の採餌努力量と雛の成長速度の間に関係は見られなかった.繁殖成績に結びつく個体の採餌行動として,採餌の努力量よりも採餌効率が重要であることが示唆された.採餌効率の個体間の違いは主に,個体間の1)形態の違い,2)学習による採餌技術の違い,3)他個体との競争,によって生じると考えられる.採餌生態を個体ごとに追跡し,これが親自身のエネルギー配分プロセスを通じていかに繁殖成績に影響するか調べることは,今後,採餌戦略と生活史戦略をリンクさせる重要な研究となる.鳥類の中でも特徴的な採餌生態•生活史特性を持ち,また近年採餌行動を個体ごとに追跡する手法が整いつつある海鳥類をはじめとした魚食性鳥類での研究の発展が期待される.
著者
金子 尚樹 中田 誠 千葉 晃 伊藤 泰夫
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.100-111, 2012-04-20
被引用文献数
2

新潟市の海岸林において,秋季2シーズンにわたる標識調査で捕獲された鳥類の糞分析により,鳥類の果実利用を評価した.メジロは糞から得られた種子数,種子含有率とも最も高く,12種の比較的小型の果実を利用していた.ウグイスの糞の種子含有率は低かったが,捕獲個体数が多く,林内の下層に生育する9種の植物を利用していた.鳥類が利用していた果実は口角幅よりも有意に小さいか,または口角幅と統計的な有意差が認められない場合が多かった.果実サイズが口角幅より有意に大きい場合でも,両者の測定値の範囲には重複があった.ヒヨドリと大型ツグミ類の口角幅は,本研究で種子を得られたすべての植物の果実サイズよりも有意に大きく,海岸林内に多数生育し,比較的大型の果実を着けるタブノキ,シロダモ,モチノキなどの常緑広葉樹の果実を利用していた.しかし,口角幅の大きな鳥種が大きな果実を選好して利用する傾向は見られなかった.本調査地では,秋季には鳥種ごとの生息・採食場所において,十分な種数と量の果実資源が存在していると推測された.糞から種子が得られた植物のほとんどは,海岸林内で果実が見られるものだった.とくに,エノキのように調査地付近に多数生育し,比較的小型の果実を着ける植物が多くの鳥類により利用されていた.しかし,今後,周辺の住宅地の庭木などから新しい植物種が侵入する可能性も示唆された.
著者
笠原 里恵 神山 和夫
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.35-51, 2011-04-28

環境省の行っているガンカモ類の生息調査で得られた数値データとモニタリングデータを解析するソフトウェアであるTRIMを用いて,日本で越冬するカモ類13種における1996年から2009年までの個体数の増減を日本の8地方区分による地方別,また都道府県別に解析した.結果として,分析期間中,マガモ <i>Anas platyrhynchos</i> とコガモ <i>Anas crecca</i> は全国的に減少傾向にあった一方でキンクハジロ <i>Aythya fuligula</i> やスズガモ <i>Aythya marila</i> は全国的に増加傾向にあった.ヒドリガモ <i>Anas penelope</i> では地方による個体数の増減は少なかった.多くの種において個体数の変化傾向は県や地方によって異なっていたが,13種中9種が関東地方で,8種が中部地方で減少傾向を示し,8種が近畿地方で,5種が中国もしくは四国地方で増加傾向を示した.この結果は調査が行われている1月中旬において,多くのカモ類の分布が変化していることを示唆している.カモ類の個体数に影響を及ぼし得る要因として,繁殖地や越冬地の環境変化,餌付け状況や地球温暖化による移動距離もしくは渡りの時期の変化等が考えられるが,今後のさらなる研究が望まれる.