- 著者
-
伊藤 ゆり
中村 正和
- 出版者
- Japanese Society of Public Health
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.9, pp.613-618, 2013-09-15
- 参考文献数
- 12
<b>目的</b> 1998年にたばこ特別税が創設されて以来,2003年,2006年,2010年と過去 3 回のたばこ税•価格の引き上げが実施された。我が国におけるたばこ販売数量および販売代金に関する統計データの年次推移を用いて,過去のたばこ税•価格引き上げの影響を評価する。<br/><b>方法</b> (社)日本たばこ協会による紙巻たばこ統計データより,平成 2 年~平成22年度(1990~2010年)の年度別販売実績(数量および代金)をそれぞれ,Joinpoint Regression Model に適用し,年次推移を分析した。また,過去三回のたばこ税•価格引き上げの影響を平野らの方法を用いて,たばこ価格引き上げ前の販売数量の減少(税•価格引き上げ以外の要因による減少)を考慮した上で,価格引き上げによる販売数量減少効果を推定した。<br/><b>結果</b> Joinpoint Regression Model により,1998年度以降たばこ販売数量は減少に転じ,2005年度以降は年率平均 5%で減少傾向にあることがわかった。また,2003年度,2006年度,2010年度のたばこ税•価格引き上げ年度における減少効果はそれぞれ−2.4%,−2.9%,−10.1%(震災影響の補正後)であり,価格弾力性はそれぞれ−0.30,−0.27,−0.28(同補正後)であった。2010年度の大幅値上げ時に販売数量の減少効果がもっとも大きくなった。一方,価格弾力性は2003年度,2006年度とほぼ同レベルで,税•価格を大幅にあげても販売代金および税収への影響は小さいことが示唆された。<br/><b>結論</b> 2010年度におけるたばこ税•価格の大幅引き上げは,たばこ販売数量を大きく減少させたが,価格弾力性は2003年度,2006年度とさほど変わらなかった。今後我が国における喫煙の被害を減少させるためにも,さらに大幅なたばこ価格の引き上げが必要であることが示唆された。