著者
中谷 友樹 矢野 桂司 井上 茂 花岡 和聖 伊藤 ゆり 田淵 貴大 埴淵 知哉
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は(1)日本社会を対象としたADI指標(地理的剥奪指標)の提案と、(2)小地域(近隣地区レベル≒町丁字スケール)におけるADIと健康指標との関連性を近隣環境要因の媒介に着目した評価、の2点である。ADIについては、貧困・剥奪に関連した国勢調査の小地域統計資料を利用して算出し、各種の健康指標との関連性を分析した。結果として、主観的健康感やがんの生存率など、各種の健康指標の悪化と地理的剥奪の高さとの関連性を報告し、その背景となる近隣環境との関係を考察した。これらを通して、健康の地理学における学際的研究の推進とともに、日本における小地域統計を利用した統計の高度利用について検討した。
著者
伊藤 ゆり 中村 正和
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.613-618, 2013-09-15
参考文献数
12

<b>目的</b> 1998年にたばこ特別税が創設されて以来,2003年,2006年,2010年と過去 3 回のたばこ税•価格の引き上げが実施された。我が国におけるたばこ販売数量および販売代金に関する統計データの年次推移を用いて,過去のたばこ税•価格引き上げの影響を評価する。<br/><b>方法</b> (社)日本たばこ協会による紙巻たばこ統計データより,平成 2 年~平成22年度(1990~2010年)の年度別販売実績(数量および代金)をそれぞれ,Joinpoint Regression Model に適用し,年次推移を分析した。また,過去三回のたばこ税•価格引き上げの影響を平野らの方法を用いて,たばこ価格引き上げ前の販売数量の減少(税•価格引き上げ以外の要因による減少)を考慮した上で,価格引き上げによる販売数量減少効果を推定した。<br/><b>結果</b> Joinpoint Regression Model により,1998年度以降たばこ販売数量は減少に転じ,2005年度以降は年率平均 5%で減少傾向にあることがわかった。また,2003年度,2006年度,2010年度のたばこ税•価格引き上げ年度における減少効果はそれぞれ−2.4%,−2.9%,−10.1%(震災影響の補正後)であり,価格弾力性はそれぞれ−0.30,−0.27,−0.28(同補正後)であった。2010年度の大幅値上げ時に販売数量の減少効果がもっとも大きくなった。一方,価格弾力性は2003年度,2006年度とほぼ同レベルで,税•価格を大幅にあげても販売代金および税収への影響は小さいことが示唆された。<br/><b>結論</b> 2010年度におけるたばこ税•価格の大幅引き上げは,たばこ販売数量を大きく減少させたが,価格弾力性は2003年度,2006年度とさほど変わらなかった。今後我が国における喫煙の被害を減少させるためにも,さらに大幅なたばこ価格の引き上げが必要であることが示唆された。
著者
田栗 正隆 高橋 邦彦 小向 翔 伊藤 ゆり 服部 聡 船渡川 伊久子 篠崎 智大 山本 倫生 林 賢一
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.129-200, 2024 (Released:2024-04-25)
参考文献数
167

Epidemiology is the study of health-related states or events in specific populations and their determinants, with the aim of controlling health problems. It encompasses various research fields, such as cancer epidemiology, infectious disease epidemiology, and social epidemiology, molecular epidemiology, environmental epidemiology, genetic epidemiology, clinical epidemiology, pharmacoepidemiology, spatial epidemiology, and theoretical epidemiology, among others, and is closely related to statistics and biometrics. In analytical epidemiological studies, data is collected from study populations using appropriate study designs, and statistical methods are applied to understand disease occurrence and its causes, particularly establishing causal relationships between interventions or exposures and disease outcomes. This paper focuses on five topics in epidemiology, including infectious disease control through spatial epidemiology, cancer epidemiology using cancer registry data, research about long-term health effects, targeted learning in observational studies, and that in randomized controlled trials. This paper provides the latest insights from experts in each field and offers a prospect for the future development of quantitative methods in epidemiology.
著者
片野田 耕太 伊藤 秀美 伊藤 ゆり 片山 佳代子 西野 善一 筒井 杏奈 十川 佳代 田中 宏和 大野 ゆう子 中谷 友樹
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.163-170, 2023-03-15 (Released:2023-03-23)
参考文献数
40

諸外国では,がん登録を始めとする公的統計データの地理情報を用いた研究ががん対策および公衆衛生施策に活用されている。日本でも2016年に全国がん登録が開始され,がんの罹患情報のデータ活用が制度的に可能となった。悉皆調査である全国がん登録は,市区町村,町丁字など小地域単位での活用によりその有用性が高まる。一方,小地域単位のデータ活用では個人情報保護とのバランスをとる必要がある。小地域単位の全国がん登録データの利用可否は,国,各都道府県の審議会等で個別に判断されており,利用に制限がかけられることも多い。本稿では,がん登録データの地理情報の研究利用とデータ提供体制について,米国,カナダ,および英国の事例を紹介し,個人情報保護の下でデータが有効に活用されるための方策を検討する。諸外国では,データ提供機関ががん登録データおよび他のデータとのリンケージデータを利用目的に沿って提供する体制が整備され,医療アクセスとアウトカムとの関連が小地域レベルで検討されている。日本では同様の利活用が十分に実施されておらず,利用申請のハードルが高い。全国がん登録の目的である調査研究の推進とがん対策の一層の充実のために,他のデータとのリンケージ,オンサイト利用など,全国がん登録を有効かつ安全に活用できる体制を構築していく必要がある。
著者
加茂 憲一 福井 敬祐 坂本 亘 伊藤 ゆり
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.93-115, 2021 (Released:2021-05-11)
参考文献数
52

In this paper, we implement a micro-simulation (MS) model for colorectal cancer and report the process of the MS model applying to Japanese data. As an advantage of MS, it is possible to evaluate the effects of interventional cancer control program based on various scenario setting. Although there are many advanced MS projects in policy making in other countries, they are still on the way of developing in Japan. Then, we have tried to construct a colorectal cancer MS model in Japan. The purpose of this paper is to describe the process of colorectal cancer MS in Japan as a useful manual for future reference, and to introduce an on-going research project and future possibility of research extensions.
著者
片岡 葵 村木 功 菊池 宏幸 清原 康介 安藤 絵美子 中村 正和 伊藤 ゆり
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.682-694, 2021-10-15 (Released:2021-10-06)
参考文献数
21

目的 2020年4月に改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例が施行された。現行の法律や条例では,喫煙専用室や飲食可能な加熱式たばこ喫煙専用室を認めている他,客席面積や従業員の有無で規制の対象外となる,客席での喫煙が引き続き可能な飲食店(既存特定飲食提供施設)が存在するため,飲食店の禁煙化に地域差が生じる懸念がある。また日本では,路上喫煙防止条例がすでに多くの自治体で施行されているため,店舗外での喫煙が困難となり,店内の禁煙化が妨げられる可能性がある。本研究では,既存特定飲食提供施設を対象として,法律や条例施行前の飲食店の屋内客席喫煙ルールと施行後のルール変更に関する意向を把握し,法律や条例制定による屋内客席喫煙ルールへの影響を地域ごとに検討することとした。方法 東京都,大阪府,青森県の20市区町村で営業している飲食店6,000店舗に対し,2020年2~3月に自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,法律や条例の施行前および施行後に変更予定の屋内客席喫煙ルール,業種,客席面積,従業員の有無,客層や客数,禁煙化に関する不安,国や行政に期待する内容とした。解析は,屋内客席喫煙ルールを「全面禁煙」「分煙」「喫煙可」に分け,変化の推移を割合で算出した。解析対象は既存特定飲食提供施設とした。結果 回答は879店舗より得られ,既存特定飲食提供施設は603店舗であった。分煙・喫煙可能から禁煙化にする予定の店舗は,東京都で5.2%(3/58),大阪府で23.1%(31/134),青森県で17.2%(57/326)であった。現在すでに全面禁煙であり,法律や条例施行後も変更予定がない店舗を加えると,法律や条例施行後に全面禁煙となる予定の店舗は,東京都で46.6%(55/118),大阪府で49.6%(113/228),青森県で48.6%(125/257)であった。結論 既存特定飲食提供施設において,分煙・喫煙可能から禁煙化にする予定の店舗は17.6%(91/518)であった。禁煙化に踏み切らない背景として,顧客数や売り上げ減少への不安,喫煙者からのクレームなどの懸念が考えられるため,禁煙化による営業収入の変化についての知見の蓄積を行うとともに,店内を禁煙にした場合の喫煙者への対応や,公衆喫煙所などの環境整備が禁煙化の促進に必要と考える。
著者
伊藤 ゆり 中村 正和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.613-618, 2013 (Released:2013-10-11)
参考文献数
12

目的 1998年にたばこ特別税が創設されて以来,2003年,2006年,2010年と過去 3 回のたばこ税•価格の引き上げが実施された。我が国におけるたばこ販売数量および販売代金に関する統計データの年次推移を用いて,過去のたばこ税•価格引き上げの影響を評価する。方法 (社)日本たばこ協会による紙巻たばこ統計データより,平成 2 年~平成22年度(1990~2010年)の年度別販売実績(数量および代金)をそれぞれ,Joinpoint Regression Model に適用し,年次推移を分析した。また,過去三回のたばこ税•価格引き上げの影響を平野らの方法を用いて,たばこ価格引き上げ前の販売数量の減少(税•価格引き上げ以外の要因による減少)を考慮した上で,価格引き上げによる販売数量減少効果を推定した。結果 Joinpoint Regression Model により,1998年度以降たばこ販売数量は減少に転じ,2005年度以降は年率平均 5%で減少傾向にあることがわかった。また,2003年度,2006年度,2010年度のたばこ税•価格引き上げ年度における減少効果はそれぞれ−2.4%,−2.9%,−10.1%(震災影響の補正後)であり,価格弾力性はそれぞれ−0.30,−0.27,−0.28(同補正後)であった。2010年度の大幅値上げ時に販売数量の減少効果がもっとも大きくなった。一方,価格弾力性は2003年度,2006年度とほぼ同レベルで,税•価格を大幅にあげても販売代金および税収への影響は小さいことが示唆された。結論 2010年度におけるたばこ税•価格の大幅引き上げは,たばこ販売数量を大きく減少させたが,価格弾力性は2003年度,2006年度とさほど変わらなかった。今後我が国における喫煙の被害を減少させるためにも,さらに大幅なたばこ価格の引き上げが必要であることが示唆された。
著者
伊藤 ゆり 杉本 知之 中山 富雄 中村 隆 ベルナルド ラシェ ミシェル コールマン
出版者
地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所)
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

地域がん登録資料を用いて、がん患者の治癒割合および非治癒患者の生存時間の中央値を推定し、その時代変化を検討することによりがん医療の評価を行った。1975~2000年において、食道、胆嚢・胆管、肺がんは全期間を通じて治癒割合、生存時間ともに向上し、診断・治療技術の向上が示唆された。一方、肝がんでは治癒割合は向上せず生存時間だけが延長した。また、前立腺がんでは生存時間の延長がなく、治癒割合だけが向上し、過剰診断の可能性が示唆された。