著者
山本 輝雄
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.87-98, 1999-03-05

黄檗派寺院にのみ国内では特異な天王殿という建物について,全国的に調査研究した結果,19寺院に天王殿の存在を確認した。これらの天王殿に関して,その建物の向き,伽藍全体に占める位置,安置される中心的仏像などを調べた結果,天王殿とは従来の見解のように「寺門の特異様式」とは考えられず,前方には弥勒像を安置して世俗の"救済"を,後には韋駄天像を安置して仏教の聖なる空間の"護法"という宗教上の機能(働き)をもつ大雄宝殿同様に仏教寺院にとって大変重要な堂宇の一つであることを明確にした。ただし,建築の形式としては,天王殿は中国建築の「屏門(屏風門)」を採用したのであろう,と考えた。さらに,江戸時代を通じての天王殿の歴史の理解を試み,天王殿が"護法"のみの機能から始まったが,"救済"と"護法"の機能を兼ね備えることで黄檗派寺院の確立がなった後,両機能の中を揺れ動きながらの歴史的な展開過程を経て,遂に仏教の"擁護"の機能になって幕末を迎えた,と考えた。

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