著者
兪 慰慈
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.51-66, 2003-02-18

五山文學(1191-1620)は日本臨濟宗の禪僧らの漢詩文を中心として、公家・僧侶・儒家・武将などの漢詩文も含む日本中世漢文学である。本論文の焦点を五山文學の柱である五山漢詩に絞って、その起源を探ってみたい。
著者
黒木 彬文
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.67-73, 2003-02-18

1880年設立の興亜会は近代日本最初にアジア主義組織であり、そこには大きく分けて五つの担い手を異にするアジア主義の思潮があった。日本の文明開化の先進性を意識した日本盟主論の強いものからそうではなくアジアの対等性に重きを措くものまで、日本とアジア(おもに朝鮮中国)との関係性についてはニュアンスの違いがあった。それは思想の重点を日本ナショナリズム(国権拡張)におくか、アジア地域主義(興亜主義)におくか、の違いに照応していた。しかし、そこに共通するのは通商貿易をとおしてのアジアの基本的には水平関係形成の志向性であった。これは日清戦争後の軍事力を背景とする垂直関係形成の志向性とはことなっていた。そのようなアジア主義を初期アジア主義と規定してみたい。
著者
栗原 昌子
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.55-62, 2000-02-02

チリが1980年代に経験した対外債務危機は民間債務比率の高さ, 危機発生に繋がる経済政策の失敗など, 1997年のアジア通貨危機との類似点が多い。また, チリは対アジア貿易依存度が高いにもかかわらず危機の影響が軽微であった。これにはチリが独自に採用している短資流入規制が有効に機能したとの評価があり, 新興市場の通貨危機予防策としてこの規制が注目を集めている。しかし, 危機の伝染を回避できたのはこの規制導入の効果だけによるものではない。チリが80年代の危機を教訓に金融システムを再建し, 競争力のある為替相場を導入, 節度あるマクロ経済運営に努めたからに他ならない。短資流入規制はそうした文脈のなかで採られた政策手段のひとつである。チリの経験は, 金融のグローバル化が一層進展するなかで新興市場国が通貨投機の標的になることを回避する上で示唆に富むものである。
著者
鈴木 敏英
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.47-62, 2002-09-10

外国離婚の承認に関するアイルランド国際私法規則は,1980年代後半からの外国離婚承認法の成立,アイルランド憲法の改正,新家族法の登場などによって根本的な変革がもたらされた。その一方で,イギリス法の情況とはかなり相違しており,伝統的なコモン・ロー準則は,承認法の立法化により廃棄されることなく健在そのものなのである。イギリス国際私法において,コモン・ロー準則の一翼を担っていたにもかかわらず,外国離婚の承認法の現出によって発展的に廃棄された,相互主義の原則を提唱するTravers準則が,アイルランド国際私法において導入されて復興したことは興味深いところである。本稿では,伝統的なコモン・ロー準則および承認法により展開してきたイギリス国際私法について比較法的に考究しながら,アイルランド憲法と外国離婚の承認規則についての相関関係,Travers準則の復興の要因と承認規則としての新たな展開の様相,さらに,EUブラッセル条約についても分析する。そして,裁判離婚を唯一の婚姻解消方法として認めるアイルランド法における,裁判の手続きによらない外国離婚の承認問題についても検討したい。
著者
安達 義弘
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.9-24, 2003-02-18

Muneyoshi Yanagi is known as the founder of Mingei Undou (folk arts revitalistic movement) in which he and his comrades reevaluated many traditional arts that had been regarded as valueless in many cultural areas. It is not well known, however, that the starting point of Mingei Undou was Yanagi's encounters with the Korean people and their traditional folk arts. On his first trip to Korea, Yanagi came across the beauty of its traditional folk arts and found the Korean people's collective mind within them. In those days (1910-1945), the people were suffering under Japanese colonial rule. They were not allowed to say or do anything against the colonial policy. Yanagi and his comrades decided to speak and work on behalf of the Korean people. Yanagi praised Korean traditional folk arts, defended the Korean people who created those arts, and made efforts to build an environment in which Japan and Korea could coexist in peace. These activities gave rise to Mingei Undou. This article focuses on the relationship between Yanagi and Korea.
著者
安達 義弘
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
no.12, pp.5-12, 2004-07

How can we understand that a man lives as a man? This is one of the main concerns in this paper. The focus of consideration here is the final letters that Kamikaze soldiers sent to their families and friends. These Kamikaze soldiers were odered to make sorties with only enough fuel to go one way. Writing the letters was the last opportunity for the soldiers to declare their beliefs to their families and friends and confirm the meaning of their being. Writing a letter was one of the means for each one of the soldiers to confirm his self-identity as a narrative just before his death. Living ( in this case, dying ) according to the narrative he wrote in his letter was the means for each soldier to realize his self-identity as a man at the last of his life.
著者
栗原 昌子
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.85-91, 2001-02-14

本稿は, 筆者が1998年8月から9月にかけて国際交流基金の日本研究客員教授派遣事業により派遣されたメキシコのグアダラハラ自治大学経済学科において「日本経済入門」の一環として行った講義(使用言語スペイン語)「日本の金融」で用いたメモをこのたび書き起こしたものである。第1部は第二次世界大戦直後から90年代までの日本の経済発展過程を4段階に分け, その中で金融機関が果たしてきた役割, また, 日本モデルともいうべき独自の経済発展モデルを紹介したものである。第2部(次号掲載予定)では, 1990年代に戦後初めての長期不況と金融危機を経験したなかで着手された21世紀にむけての金融制度改革ならびに金融業界再編の進展を辿る。
著者
山本 輝雄
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.87-98, 1999-03-05

黄檗派寺院にのみ国内では特異な天王殿という建物について,全国的に調査研究した結果,19寺院に天王殿の存在を確認した。これらの天王殿に関して,その建物の向き,伽藍全体に占める位置,安置される中心的仏像などを調べた結果,天王殿とは従来の見解のように「寺門の特異様式」とは考えられず,前方には弥勒像を安置して世俗の"救済"を,後には韋駄天像を安置して仏教の聖なる空間の"護法"という宗教上の機能(働き)をもつ大雄宝殿同様に仏教寺院にとって大変重要な堂宇の一つであることを明確にした。ただし,建築の形式としては,天王殿は中国建築の「屏門(屏風門)」を採用したのであろう,と考えた。さらに,江戸時代を通じての天王殿の歴史の理解を試み,天王殿が"護法"のみの機能から始まったが,"救済"と"護法"の機能を兼ね備えることで黄檗派寺院の確立がなった後,両機能の中を揺れ動きながらの歴史的な展開過程を経て,遂に仏教の"擁護"の機能になって幕末を迎えた,と考えた。
著者
李 海珠
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.79-85, 1999-03-05

日本は,韓国に22年先立って開港にふみきり,いち早く西洋の科学文明を吸収し,工業化と近代化を推進することによってみごとに先進工業国としての経済大国を築きあげた。一方,韓国は徹底した鎖国攘夷政策を固く守り続けたが,1876年,外圧による江華島条約で開港を余儀なくされ,これがきっかけとなつて半植民地(植民地)・半封建社会へのコースをたどらざるをえなくなった。日本統治からの解放後も国土分断,韓国戦争など苦境を経てようやく新興工業国としての地位を固めることとなった。それゆえ,本稿では韓日両国における工業化・近代化の諸条件を初期,戦後復興期,高度成長期,高度情報化と先進産業社会への移行期にかけて比較し,その特質を明らかにすることによって「後発国の利益」を模索しようと試みたのである。
著者
清水 良三
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-6, 1999-03-05

臨床動作法は,臨床心理学の視点から成瀬悟策により開発された,わが国独自の心理治療法である。もともと,脳性麻痺児や脳卒中患者の動作不自由の,催眠療法による研究を契機とし,その後自閉症児・者のコミュニケーション障害の改善に著効が見られたことから,さらに精神分裂病患者や,神経症患者など精神科心理臨床領域に新しい心理療法・カウンセリングの方法としての展開を示している。ここではこの新しい心理治療法としての臨床動作法について,特にその具体的実施手続きであるリラクセイション法とタテ系訓練法についてその実施プロセスを考察する。