著者
戸梶 亜紀彦
出版者
広島大学
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-40, 2002-03-20

本研究は, 近年, 脳の血流を改善する働きがあるとされ, 痴呆症の治療薬として注目されてきているイチョウ葉エキス(EGB)と, 脳を活性化する働きがあるとされる咀嚼という両者に着目し, EGBの含まれたガム咀嚼を一定期間継続することによる記憶への効果について実験的な検討を行った。実験参加者は, 3つの大学から集められ, 無作為に統制群, ガム咀嚼群, EGBタブレット群, EGB入りガム咀嚼群のいずれかに振り分けられた。実験課題には, 改訂版ウェクスラー成人知能検査の中の数唱課題, および, 有意味語と無意味語からなる単語記憶課題が用いられた。また, 別室で歯科医によって実験参加者全員の咀嚼機能(咀嚼面積と咀嚼力)の測定が行われた。これらの測定は, 一週間間隔で2度行われ, その変化の程度が検討された。分析の結果, EGB入りガム咀嚼群がその他の群よりも数唱課題において成績が向上する傾向のあることが示された。また, 咀嚼機能は有意味語の記憶に関する正方向への変化と関連し, さらに, 咀嚼機能と単語の記憶に関する正方向への変化の傾向には, EGB入りガム咀嚼群が関与していることが示唆された。本研究では, EGB入りガム咀嚼の記憶における効果が若干ではあるが確認された。しかしながら, 咀嚼機能の訓練効果はみられなかったことから, 咀嚼による継続的な脳への刺激とEGBの働きが相乗的に働き, 記憶の促進効果を生みだしたのではないかと推断される。今後の課題として, EGB入りガム咀嚼の効果を明確にするためには, 対象年齢層や訓練期間, 認知・記憶課題等に対する多様な検討を行う必要性が示された。

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