著者
戸梶 亜紀彦
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.360-368, 2001-12-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
27
被引用文献数
10 10

This study deals with just a emotion of emotions. When we see good movies or wonderful landscapes, read heart-warming stories, our hearts are frequently moved. This phenomenon evokes fairly certain emotions. However, it has hardly been studied in psychology. Many researches by the author were reviewed in order to investigate and elucidate mechanisms of evoking emotional responses of “Kandoh (the state of being emotionally moved)”. On the basis of these researches, first, the various types of “Kandoh” are categorized, and secondly a comprehensive process model is proposed. The outlines of this model are as follows. It is suggested that event related knowledge and information are very important factors for an audience (that is spectators, listeners, viewers, readers, and so on) to become highly involved, and then high involvement states elicit psychological and physiological stress. Therefore, desirable developments of a story produce stress reduction or relaxation, and finally people evoke “Kandoh”. Based on these results, some characteristic aspects of our cognitive system and some significance of emotional responses of “Kandoh” are discussed.
著者
戸梶 亜紀彦
出版者
広島大学
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.27-37, 2004-03-19
被引用文献数
3

人間は, さまざまな経験をとおして成長・発達していく。そして, 個々の体験から, 何らかの影響を受け続ける。特に, 強烈な情動を伴った出来事の影響は強いと考えられる。そこで本研究は, 「自分の何かを変えた感動的な出来事」について調査を行い, 感動の効果に関するメカニズムについて詳細な検討を行った。その結果, 感動には大きく分けて, 動機づけに関連した効果, 認知的枠組みの更新に関連した効果, 他者志向・対人受容に関連した効果という3つの効果のあることが示された。また, 感動体験は, 単に個人の何かを変化させる契機となるだけではなく, 出来事に対する総合的な評価を背景とした外的事実の成立の瞬間と, 心身の感覚および認知的作用の相乗効果とが重奏的に作用して, 個人の何かを変化させた出来事をより印象的な事象として記憶の貯蔵庫に精緻化して各効果を増強し, 持続させる役割を果たし, さらに, 個々人の問題意識に関連するような潜在的および顕在的目標行動を始発させる契機となっているという可能性が示唆された。これらの結果に基づいて, 感動的体験の応用可能性について論じられる。
著者
戸梶 亜紀彦
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 = Cognitive studies : bulletin of the Japanese Cognitive Science Society (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.360-368, 2001-12-01
被引用文献数
3

This study deals with just a emotion of emotions. When we see good movies or wonderful landscapes, read heart-warming stories, our hearts are frequently moved. This phenomenon evokes fairly certain emotions. However, it has hardly been studied in psychology. Many researches by the author were reviewed in order to investigate and elucidate mechanisms of evoking emotional responses of “Kandoh (the state of being emotionally moved)”. On the basis of these researches, first, the various types of “Kandoh” are categorized, and secondly a comprehensive process model is proposed. The outlines of this model are as follows. It is suggested that event related knowledge and information are very important factors for an audience (that is spectators, listeners, viewers, readers, and so on) to become highly involved, and then high involvement states elicit psychological and physiological stress. Therefore, desirable developments of a story produce stress reduction or relaxation, and finally people evoke “Kandoh”. Based on these results, some characteristic aspects of our cognitive system and some significance of emotional responses of “Kandoh” are discussed.
著者
江口 圭一 戸梶 亜紀彦
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.84-92, 2009 (Released:2009-08-25)
参考文献数
30
被引用文献数
3 5

本研究は,使用が簡便な労働価値観測定尺度短縮版の開発を目的として行ったものである。開発にはこれまでに蓄積された全データ(n=720,平均年齢41. 4歳±13. 3,18~74歳)を使用した。労働価値観測定尺度の原版(38項目版)の探索的因子分析の結果に基づき,因子負荷量が高い3項目が短縮版の項目として選択された。短縮版の下位尺度はいずれも高い内的一貫性を示した(α=.814~.878)。いずれの下位尺度についても,労働価値観測定尺度の原版(38項目版)と短縮版の間に高い相関係数が示され(r=.906~.976),基準関連妥当性は支持された。また,検証的因子分析でもモデルの高い適合度が示され(GFI=.929, AGFI=.902, CFI=.953, RMSEA=.056),因子的妥当性が支持された。以上の結果から,短縮版はより少ない項目数で38項目版と同様の構成概念を測定できることが示唆された。
著者
田中 亮 戸梶 亜紀彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.157-163, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

〔目的〕本研究の目的は,運動療法に取り組む外来患者の顧客満足と運動に対する動機づけの関連性を明らかにすることである。〔対象〕対象は,運動療法に取り組んでいる外来患者189名とした。〔方法〕顧客満足の測定には,Customer Satisfaction Scale based on Need Satisfaction(CSSNS)を使用した。運動に対する動機づけの測定には,Behavioral Regulation in Exercise Questionnaire-2(BREQ-2)を使用した。〔結果〕相関係数の算出およびカテゴリカル回帰分析の結果,顧客満足全体や顧客満足の下位概念は,運動に対する自己決定的な動機づけと有意に関連することが認められた。〔結語〕運動療法に取り組む外来患者の顧客満足は,運動に対する自己決定的な動機づけと関連するといえる。
著者
小玉 一樹 戸梶 亜紀彦
出版者
広島大学マネジメント学会
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
no.10, pp.51-66, 2010-03

組織に対する労働者の帰属意識を説明する概念は, 組織論の観点から組織コミットメントが幅広く研究されてきた。本研究では, 社会心理学の観点から帰属意識を自己の側面からも検討した。本研究では, 社会的アイデンティティ理論および自己カテゴリー化理論を組織の文脈に援用した概念である組織同一視(Organizational Identification)に着目し, 先行研究のレビューを行った。その目的は, (1)組織同一視の再定義, (2)組織同一視および, その類似概念である組織コミットメントの構成概念の明確化, (3)組織同一視と組織コミットメントを弁別した上での理論モデルの検討であった。まず, 先行研究を検討し, 組織同一視を再定義した。つぎに, 組織同一視には認知的要素と情緒的要素があり, それらが相互に作用していることを指摘した。さらに, 組織同一視と組織コミットメントの構成概念の比較を行い, 双方を統合した理論モデルを提示した。以上の研究により個人の組織への帰属意識に関する研究に新たな視点を加えた。
著者
田中 亮 戸梶 亜紀彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.737-744, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
27
被引用文献数
4 3

〔目的〕本研究の目的は,我々が開発を進めている「欲求の充足に基づく顧客満足測定尺度(Customer Satisfaction Scale based on Need Satisfaction: CSSNS)」の因子的妥当性を検証するために,検証的因子分析を行って因子構造モデルの適合度を検討することである。〔対象〕対象は,リハビリテーションサービスの利用者311名とした。〔方法〕CSSNSの因子構造モデルとして仮定した斜交モデル,直交モデル,二次因子モデルの適合度を検討するために,構造方程式モデリングによる検証的因子分析を行った。〔結果〕分析の結果,モデル適合度の絶対的指標であるCFIとRMSEAが基準値以上を示したモデルは,斜交モデルと二次因子モデルであった。さらに,モデル適合度の相対的指標であるAICを比較した結果,斜交モデルは二次因子モデルよりも適合が良いことが示された。〔結語〕CSSNSの因子的妥当性は斜交モデルにおいて検証された。
著者
江口 圭一 戸梶 亜紀彦
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.84-92, 2009
被引用文献数
5

本研究は,使用が簡便な労働価値観測定尺度短縮版の開発を目的として行ったものである。開発にはこれまでに蓄積された全データ(<i>n</i>=720,平均年齢41. 4歳&plusmn;13. 3,18~74歳)を使用した。労働価値観測定尺度の原版(38項目版)の探索的因子分析の結果に基づき,因子負荷量が高い3項目が短縮版の項目として選択された。短縮版の下位尺度はいずれも高い内的一貫性を示した(&alpha;=.814~.878)。いずれの下位尺度についても,労働価値観測定尺度の原版(38項目版)と短縮版の間に高い相関係数が示され(<i>r</i>=.906~.976),基準関連妥当性は支持された。また,検証的因子分析でもモデルの高い適合度が示され(GFI=.929, AGFI=.902, CFI=.953, RMSEA=.056),因子的妥当性が支持された。以上の結果から,短縮版はより少ない項目数で38項目版と同様の構成概念を測定できることが示唆された。<br>
著者
戸梶 亜紀彦
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.21, no.Supplement, pp.41, 2013 (Released:2013-09-19)
参考文献数
2
著者
戸梶 亜紀彦
出版者
広島大学
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-40, 2002-03-20

本研究は, 近年, 脳の血流を改善する働きがあるとされ, 痴呆症の治療薬として注目されてきているイチョウ葉エキス(EGB)と, 脳を活性化する働きがあるとされる咀嚼という両者に着目し, EGBの含まれたガム咀嚼を一定期間継続することによる記憶への効果について実験的な検討を行った。実験参加者は, 3つの大学から集められ, 無作為に統制群, ガム咀嚼群, EGBタブレット群, EGB入りガム咀嚼群のいずれかに振り分けられた。実験課題には, 改訂版ウェクスラー成人知能検査の中の数唱課題, および, 有意味語と無意味語からなる単語記憶課題が用いられた。また, 別室で歯科医によって実験参加者全員の咀嚼機能(咀嚼面積と咀嚼力)の測定が行われた。これらの測定は, 一週間間隔で2度行われ, その変化の程度が検討された。分析の結果, EGB入りガム咀嚼群がその他の群よりも数唱課題において成績が向上する傾向のあることが示された。また, 咀嚼機能は有意味語の記憶に関する正方向への変化と関連し, さらに, 咀嚼機能と単語の記憶に関する正方向への変化の傾向には, EGB入りガム咀嚼群が関与していることが示唆された。本研究では, EGB入りガム咀嚼の記憶における効果が若干ではあるが確認された。しかしながら, 咀嚼機能の訓練効果はみられなかったことから, 咀嚼による継続的な脳への刺激とEGBの働きが相乗的に働き, 記憶の促進効果を生みだしたのではないかと推断される。今後の課題として, EGB入りガム咀嚼の効果を明確にするためには, 対象年齢層や訓練期間, 認知・記憶課題等に対する多様な検討を行う必要性が示された。
著者
江口 圭一 戸梶 亜紀彦
出版者
産業・組織心理学会
雑誌
産業・組織心理学研究 (ISSN:09170391)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.89-101, 2011

The present study discussed how organizational citizenship behavior, which is considered to improvethe effectiveness of an organization, is affected by cultural views of self and work values. We surveyeduniversity students who had working experience (N=115, mean age 21.7 years, SD=4.0). Independenceof cultural views of self was positively correlated with two subscales of organizational citizenshipbehavior. However, Interdependence of cultural views of self was not significantly correlated withorganizational citizenship behavior. Using hierarchical multiple regression analyses, Independence ofcultural views of self and Development of Self of work values positively influenced part of organizationalcitizenship behavior, while Sense of Achievement of work values negatively did. In addition,Development of Self and Contribution to Society of work values indicated significant moderator effects.Therefore it was suggested that cultural views of self and work values were antecedence factors oforganizational citizenship behavior.