著者
井東 廉介
出版者
石川県公立大学法人 石川県立大学
雑誌
石川県農業短期大学研究報告 (ISSN:03899977)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.89-100, 1990

現代日本語の統語構造の分析は,格助詞を中心的な手がかりとしている。[名詞句+格助詞]を一つの文構成要素として分析の基盤とするのである。その名称や理論的基盤や展開は日本語学者によって微妙に異なるところもあるが,それぞれの理論構築上の最も基本的な形態上の単位となっていた。特に変形生成文法的日本語分析では,[名詞句+格助詞]を英語のように形態的に同じで語順のみで格標示している共通格と同じように,名詞句と同じ範疇として扱い,格標示形態素は基底構造から派生的に生じるものとしている。即ち,日本語の格助詞を格表示に不可欠の専用的機能語としているわけである。このような考え方が日本語の統語構造のモデル化の主流になっていることは否定できないが,本論では敢えて主要格範疇-「主格」,「目的格(対象格)」-について,いわゆる格助詞の格表示機能の多様性や格助詞無しの格標示を観察し,日本語の統語構造の一般化の基盤から洩れた事実を再確認する。このことによって,日本語統語構造の特徴を独自の形で把握する一資料にしようとするものである。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 2 posts, 0 favorites)

モメモメ:http://t.co/fihwQipj
モメモメ:http://t.co/fihwQipj

収集済み URL リスト