著者
笹川 滿廣
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-36, 1967-10-15

スズメガ類幼蟲における密度依存的な多型現象については従来知見がなかったので, クチナシを加害するオオスカシバについて幼虫期の生息密度によって体色や発育にどのような影響をうけるかを検討したところ, 明らかに密度に依存した変異がみられた。すなわち, ふ化直後から集合状態で育った幼蟲は第2令期から体色が黒化し, 第4令期に入れば4つの色彩型に区別できる。通常野外で見られる全体淡緑色の幼虫は全幼虫期を通じて単独飼育した場合に多く現われ, 密度の増加につれて黒化程度が増大し, 特に全幼虫期間中集合飼育をすれば最高度の黒化をみた。しかも黒化は第1令期の幼虫密度によって決定される。全体暗褐色型幼虫の出現には低温も多少関与しているようであるが, 光の有無は黒化には全く影響を及ぼさない。また全体淡緑色型幼虫は黒化型に比べて非常に多量の食物を摂取し, 酸素消費量もはなはだ多い。幼虫密度の増加と共に死亡率は極度に高くなり, 蛹体重は有意に減少するが, 幼虫および蛹の発育日数, 頭幅そして幼虫体重(第5令期を除く)については本実験の生息密度間では有意差を認めなかった。以上の結果から, 単独生育をする淡緑色幼虫が生活により適応していると考えられる。

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