著者
笹川 滿廣
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-36, 1967-10-15

スズメガ類幼蟲における密度依存的な多型現象については従来知見がなかったので, クチナシを加害するオオスカシバについて幼虫期の生息密度によって体色や発育にどのような影響をうけるかを検討したところ, 明らかに密度に依存した変異がみられた。すなわち, ふ化直後から集合状態で育った幼蟲は第2令期から体色が黒化し, 第4令期に入れば4つの色彩型に区別できる。通常野外で見られる全体淡緑色の幼虫は全幼虫期を通じて単独飼育した場合に多く現われ, 密度の増加につれて黒化程度が増大し, 特に全幼虫期間中集合飼育をすれば最高度の黒化をみた。しかも黒化は第1令期の幼虫密度によって決定される。全体暗褐色型幼虫の出現には低温も多少関与しているようであるが, 光の有無は黒化には全く影響を及ぼさない。また全体淡緑色型幼虫は黒化型に比べて非常に多量の食物を摂取し, 酸素消費量もはなはだ多い。幼虫密度の増加と共に死亡率は極度に高くなり, 蛹体重は有意に減少するが, 幼虫および蛹の発育日数, 頭幅そして幼虫体重(第5令期を除く)については本実験の生息密度間では有意差を認めなかった。以上の結果から, 単独生育をする淡緑色幼虫が生活により適応していると考えられる。
著者
笹川 滿廣
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.119-133, 2003-09-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
35

Japanese species of the Mycetophilidae and Sciaridae were reviewed. Ten Palaearctic species of the mycetophilid gnats, Mycomya matilei, M. simulans and M. neodentata, Sciophila dziedzickii and S. interrupta, Leia alternans and L. bilineata, Exechia dorsalis, Trichonta vittata and Phronia willistoni, and eight Palaearctic species of the sciarid gnats, Bradysia subbetuleti and B. brachystyla, Ctenosciara nudata, Phytosciara flavipes, P. ninae and P. ussuriensis, and Sciara humeralis and S. lackschewitzi, were recorded from Japan for the first time. Larval host fungi for the mycetophilid gnats were given. A replacement name, subgenus Merizomma nom. Nov., for the subgenus Chorizomma Sasakawa, 1997, of the genus Lycoriella Frey (Sciaridae) was proposed, because Chorizomma was preoccupied as an arachnid genus name by Simon, 1872.
著者
笹川 滿廣 赤松 学
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.26-30, 1978-11-30

近年, 京都市及び安城市で, ハウス栽培植物(ユリとキュウリ)の根部を食害するハエ幼虫による被害が問題になっている。両地で採集された標本を調査したところ, 本害虫はクロバネキノコバエ科の新種であったので, チビクロバネキノコバエBradysia agrestis Sasakawaと命名し, ここに記載したほか, 2・3の生態的知見を述べる。成虫の寿命は雄で約6日間, 雌は産卵後間もなく死亡するので約4日である。雄は翅を振動させながら雌に接近し, 生殖器の交接後は互に逆方向を向いて数分間交尾する。雌は通常25卵くらいの卵塊を腐植物の裏側に2∿3塊に分けて産みつける。親雌は個体によって雌雄いずれかの単性を産み, その比は1 : 1である。幼虫はトウモロコシ寒天培地での人工飼育が可能であるが, 種々のそ菜の葉や根も摂食することを確かめた。幼虫は4令を経過して蛹化する。理論的発育零点は卵で5.8℃, 幼虫では9.0℃, 蛹では8.7℃であり, 卵から蛹期までの発育有効積算温度は193.1日度である。
著者
笹川 滿廣 塩澤 幸雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.55-60, 1979-05-25
被引用文献数
1

京都府下夜久野町のクリ園(筑波5年生植栽)で, クリイガアブラムシの発生消長と移動及び分散との関係を調査し, 以下の結果を得た。1.幹母→普通型(5世代)→産性型→有性型の計8世代を経過する。2.発生消長には2つの型がある。ひとつは樹皮上の幼虫が, 6月下旬ごろからきゅう果へ第1次移動を行った後に増殖して高密度に達するもので, 他は8月中旬ごろまでほとんど寄生が認められないのに第2次樹内移動及び樹間分散後に急増するものである。当然, 若はぜによる被害は前者に大きく, 後者ではほとんど認められない。3.第2次移動は8月下旬から9月中旬にかけて, 主として1令幼虫によって行われ, かなり大視模な樹内・樹間の分散が起こる。ただし, 1令幼虫の推定歩行距離や各樹の寄生きゅう果率変動からみて, 樹間分散は広域に拡がるのではなくて狭い範囲にとどまる。