- 著者
-
齋藤 秀樹
- 出版者
- 京都府立大学
- 雑誌
- 京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, pp.47-57, 1990-11-19
落葉資料に欠けるアカマツ壮齢林(40,60,75及び85年生)で調査を行なって落葉型, 林分間での落葉の同調性, 気温と落葉期の関連などを考察した。主な結果は次の通りである。(1)落葉盛期は秋であった。秋の落葉期に二つのピークをもつ林分があった。春5月にも小ピークがみられた。(2)地域内の林分では, 林齢とは無関係に, 落葉の季節変動は同調していた。近接の林分ほど高い同調性を示した。(3)秋の落葉盛期は暖かさの指数が低い年ほど早期にあらわれた。地域間(82∿130℃・month)でも同じ傾向がみられた。(4)既往の資料を含めて落葉型を考察すると, 日本のアカマツ林は秋型である。例外として, 個体の占有面積がある限界値(0.7m^2/tree, 15,000/ha)より小さい林分では, 春の小ピークが肥大し, 生育期に盛期をもつことがある。これはアカマツの分枝, 葉の着き方, 個葉の長さなど形態上の特徴にもとずく, 狭小な空間への適応の低さに起因すると考えた。これは密度効果であり, 大畠・渡辺が指摘するマツの過去の性質の発現でもある。(5)春(生育期)の落葉が顕著な林分の年間落葉量は, 秋だけの盛期の林分に比べて多い。