著者
上里 健次
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-7, 1993-12-01
被引用文献数
1

沖縄諸島におけるヒカンザクラの開花期が,北部地域から始まって南下するという現象について一考してみた。同植物の開花に対しては主として温度要因が考えられることから,八重岳の山道に植栽されているものについて開花,出葉の様相を調べて標高差との関係を検討し,また那覇,宜野湾地区の調査を加えて,地域差も比較した。開花,出葉の程度の調査については,個体毎にその程度をそれぞれ10レベルに分けて行った。得られた結果の概要は,次の通りである。1. 標高290m以上の所では開花は1月下旬にピークを示してきわめて早く,ついで開花が早いのは標高100m以下の低いところであった。標高の中位部の所では総じて開花は遅く,開花期の標高差による傾向も不明で,むしろ標高の高いところほど遅咲きであった。2. 八重岳の山道に連続して植栽されているものすべてをまとめて標高差を見ると,標高の高いほど早く開花するという傾向は,かろうじて有意であった。3. 沖縄北部と南部における開花期の地域差については,八重岳の低標高地のものと比較すると明かに北部に早かった。しかし中位部標高地のものと比較すると有意な差はみられなかった。4. 低温の地域ほど早く開花することの理由については,ヒカンザクラの開花に必要な低温度域が沖縄の最低温期の温度より高いところにあり,そのために12月前後に低温に遭遇する機会の多い地域ほど開花が早くなることがあげられ,結果的に山頂ないし北部において早い開花となるといえる。

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