- 著者
-
仲宗根 平男
- 出版者
- 琉球大学
- 雑誌
- 琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.192-202, 1970-12-01
亜熱帯地域に属する沖縄に300年前よりさし木法によって受け継がれたといわれる, いわゆる地スギが北部山奥へ小面積ながら残っている。その地スギ3本を採取し, その幹材の理学的性質を明らかにすることにより, 造林樹種として, 価値判定の資料に役立てる目的でこの実験を行なった。なお福岡産のスギ1本も実験に加えた。測定結果は下記の通りであった。1)年輪巾 : 地スギ材は未成熟材部で変動が大きく, 成熟材部で安定している。2)晩材率 : 晩材率が70%を示し, 本土産スギ材10∿25%と比較すると著しく高い値を示している。3)気乾比重 : 早材は地スギ材0.3∿0.5,福岡産スギ材0.2∿0.3で地スギ材が高く, 晩材は0.7∿0.9と産地による差がない。4)細胞膜厚 : 早材で6∿12μ, 晩材6∿14μと産地による差はない。5)細胞径 : 早材は地スギ材20∿40μ, 福岡産スギ材40∿50μと福岡産スギ材が大きい。6)細胞径に対する細胞膜厚割合 : 早材は地スギ材が20∿40%, 福岡産スギ材10∿20%と地スギ材が高く, 晩材は地スギ材50∿80%, 福岡産スギ材50∿70%で両者に差はない。この高い値は明らかに早材と区別される。7)仮道管長 : 地スギ材の未成熟材は髄から10番目年輪程度までで, 成熟期に達する期間は福岡産スギ材と大差ないが, 仮道管長は短かい傾向がある。8)地スギ材の特徴 : 晩材率が70%と著しく高く, 早材細胞径も小さく, したがって比重の高い緻密な材である。