著者
小田 一幸 仲宗根 平男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.343-353, 1980-11-29

樹冠の生長と木部形成の間には密接な関係があり, 樹幹での木部形成を理解するためには, シュートの生長と発達について知る必要がある。ここでは, 沖縄本島に生育しているリュウキュウマツを対象に, シュートおよび針葉の伸長パターンについて述べ, 芽の形成過程, シュート頂の形態, 伸長期の観察結果を報告した。1.シュートおよび針葉の伸長パターンをそれぞれFig.1とFig.2に示した。2.芽の形成は2月から始まり, 2月から6月にかけてはえき芽をつくらないりん片葉だけが形成された。えき芽をつくるりん片葉の形成は7月から始まり, 7月から12月にかけての期間に短枝の原基が, 翌1月に長枝の原基が形成された。したがって, 芽の形成期は2月から1月までで, 明らかな休止期は認められなかった。3.シュート頂の形態は芽の形成過程の各段階に応じて変化し, シュート頂は芽の形成の最盛期には突出したドーム状となり, 直径に対する高さの比は0.42∿0.45であるが, 緩慢な時期には平らなドーム状となり, その比は0.15∿0.18に減少した。4.シュートの伸長期は9月から10月と2月下旬から5月上旬の2回認められ, 9月から10月にかけての期間にはえき芽を持たないりん片葉の部分が伸長し, 2月下旬から5月上旬にかけての期間にはえき芽を持つりん片葉の部分が伸長した。
著者
仲宗根 平男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.703-708, 1975-12-01

以上の刺針法による植栽地, 低温ビニール室の実験結果から1)沖縄産スギ材は, 3月初旬から早材形成が始まり, 6月末の梅雨明けまで継続される。2)梅雨明けより気温も上昇するため, 7月から晩材形成が始まる。3)8,9月も高気温が続くため, 成木, 幼令木とも晩材形成が継続される。4)10月より気温低下が始まり, 実生幼令木のヤナセ, ヤクは早材形成となるが, 地スギの幼令, 成木, 実生成木は晩材形成が継続される。5)11月から日照時間も短かくなり, 気温も下降するため, これまでの晩材細胞より小径の, 厚膜の細胞が形成され, 12月末まで続き, 休眠期に入る。6)1,2月は休眠期となる。7)細胞数は早晩材共約同数に近いが, その巾は早材部が広く, 晩材が占める面積割合(晩材率)は, 40∿50%となって, 内地産スギ材より高い値を示している。8)晩材形成の主要因は, 30℃前後の高温が続く7,8,9月と, 日照時間が短くなり, 気温も低下する11,12月の異なった二つの要因と考えられる。9)10月の気温は, 4,5月の気温に近いため, 春材形成となると考えられるが, 地スギ幼, 成木, 実生成木は晩材形成を継続する。それらの要因については, 今後の課題としたい。
著者
仲宗根 平男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.192-202, 1970-12-01

亜熱帯地域に属する沖縄に300年前よりさし木法によって受け継がれたといわれる, いわゆる地スギが北部山奥へ小面積ながら残っている。その地スギ3本を採取し, その幹材の理学的性質を明らかにすることにより, 造林樹種として, 価値判定の資料に役立てる目的でこの実験を行なった。なお福岡産のスギ1本も実験に加えた。測定結果は下記の通りであった。1)年輪巾 : 地スギ材は未成熟材部で変動が大きく, 成熟材部で安定している。2)晩材率 : 晩材率が70%を示し, 本土産スギ材10∿25%と比較すると著しく高い値を示している。3)気乾比重 : 早材は地スギ材0.3∿0.5,福岡産スギ材0.2∿0.3で地スギ材が高く, 晩材は0.7∿0.9と産地による差がない。4)細胞膜厚 : 早材で6∿12μ, 晩材6∿14μと産地による差はない。5)細胞径 : 早材は地スギ材20∿40μ, 福岡産スギ材40∿50μと福岡産スギ材が大きい。6)細胞径に対する細胞膜厚割合 : 早材は地スギ材が20∿40%, 福岡産スギ材10∿20%と地スギ材が高く, 晩材は地スギ材50∿80%, 福岡産スギ材50∿70%で両者に差はない。この高い値は明らかに早材と区別される。7)仮道管長 : 地スギ材の未成熟材は髄から10番目年輪程度までで, 成熟期に達する期間は福岡産スギ材と大差ないが, 仮道管長は短かい傾向がある。8)地スギ材の特徴 : 晩材率が70%と著しく高く, 早材細胞径も小さく, したがって比重の高い緻密な材である。