著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.73-79, 1959-02-28

1)両卵寄生峰ともイナゴ(Genus Oxya)の卵にのみ首尾よく寄生し,他のバッタ属卵には全く注意を払わない.これは寄主卵をつつむ卵塊構造の物理,化学的な差異にもとづくもののようである.また,両卵寄生蜂とも寄主卵胚子の発育状態に関係なく寄生するが,イナゴ仔虫脱出直前の寄主卵からは寄生峰の脱出は認められなかった.一方,寄生蜂の脱出した寄主卵においては,寄主胚子の進んだ卵ほど,寄生してから成虫脱出までの所要日数が長引く傾向が認められた.これは寄主匹子の発育にともなって,寄生峰の発育が阻害されるためと推察される.2) 両卵寄生蜂とも地下lcm前後の深さまでは潜土して寄主卵を発見出来る.この場合,寄主卵をつつむ卵塊は明らかに寄生峰の視覚のおよばないところにある.一方,卵塊をいろいろに処理した場合,卵塊を構成するコルク質状物質を取除いた卵粒は真の寄主であるにかかわらず,寄生蜂は全く注意を払わない.この事実は,両卵寄生蜂が寄主卵それ自体に誘引されるのではなく,卵粒をつつむコルク状物質の化学的臭気に誘引されたものと考えられる.

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