著者
高橋 永治
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.401-419, 1961-03-28

【摘要】 1959年7月29日,大鳥池の北岸で午前7時と午後6時の2回5メートルの綱のついたプランクトンネットを用いて,50センチメートルと3メートルの深さの層から採集したプランクトンと7月30日午前7時間じ北岸の地点で広口瓶で採水した1.5リットルの水の中のプランクトンを観察した結果及び,マロモナス2種とその他3種を電子顕微鏡で観察した結果を報告する.大鳥池沿岸部のプランクトン種数は,35種と珪藻類で,動物性プランクトン15種,植物性プランクトン20種と珪藻類,その他に昆虫幼虫,ミズダニ1種,線虫類1種が採集された.沿岸部のプランクトン群集の構成は,動物性プランクトンでは,Conochilus unicoruisが優占的に多数であり,Polyarthra trigla, Bosmina longirostris, Holopidium yibberumがそれに次いで多数であった.植物性プランクトンではDinobryon cylindricumが優占種で,次いで珪藻類が多数であった.動物性プランクトンについては,湖心部の表層部のプランクトン組成と類似している.しかし,植物性プランクトンは,総個体数の99%以上もあり,Dinobryon cylindricumは60%以上を占めている.沿岸部プランクトンを10リットルの水に生息する個体数に計算すると,約247,000となる.湖心部の結果より可成り多く,沿岸部の方が湖心部より栄養に富んで生産力が高いと思われる.叉その数は当地方の荒沢ダムの夏期のそれの1/4,鶴岡公園堀の1/10であって,大鳥池は貧栄養的であると云えよう.
著者
羽根田 栄四郎
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.117-127, 1950-12-25

【緒言】 筆者は砂丘地の作物栽培に対する農業気象学的研究を進めつつあるが、本研究は砂丘地の作畦法に就いて研究した結果である。砂丘地は日中地表温が著しく高温となり、夜間は亦甚だしく冷却するので極端な気候を呈し、昼夜の温度差は40度にも達すると言はれて居る。原田氏は4月以後の気温の上昇に伴って地面温度は相当高温となり、7月に於て最高温を示し、60度以上に達することを認め、叉高須氏も8月末に56度を観測して居る程で砂丘地表面近くに沿いては作物の致死温度に達することが多い。一方砂丘地に治ける土壌水湿も作物の生存にとって重要な意義を有することは論をまたない所で、一般に砂は他の土壌に比べて吸湿水、毛管水等は共に少なく、かつ砂粒の大小によって、保水力、毛管作用等が異なり、粒径の小さい程大となることがwollnyや原、吉良氏等によって認められて居る。従って砂丘地の畑地管理に当っては充分地温や土壌水分等の物理的条件を究明して栽培が行われねばならないことは当然である。しかるに地温及土壌水分は作畦法によって影響されるととは前調査によって明かであり、古宇田氏は乾燥地の低畦栽培の合理性を指摘し、叉秋田試験場では大根の低畦栽培は深耕することによって高畦栽培に匹敵する収量を得ることを明かにして居るが、乾燥の激しい当地方の砂丘地に沿いては甘藷、大根等の高畦栽培が行はれて居り、之は耕耘に相当の労力をはらいかつ干害に遇うことがしばしばである。此処に於て筆者は砂丘地微細気象調査の一部として、畑地管理上の見地から畦の高低による地温に就いて、播種、甘藷挿苗期に当る6月初めと干害を被り易い夏期8月の二期に調査し、取り纏め得たものを報告し諸賢の御教示を仰ぐ次第である。
著者
池田 道正 叶 季文 貫名 学
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.p849-852, 1989-01
被引用文献数
1

【要旨】本論文はニンギョウタケ子実体のメタノール抽出から得られる脂溶性区分に含まれている植物生長阻害物質の化学的研究結果をまとめたものである.本区分の分画・精製で得た植物生長阻害活性を有する二種の化合物について,種々のスペクトル分析と化学反応によって化学構造の解析を行い,これらがネオグリフォリンおよびグリフォリンであることを明らかにした.ネオグリフォリンはハクサイ発芽種子のその後の根の生長を, 50PPMの濃度でコントロール区の根長に比べ50%阻害した.一方,グリフォリンは100PPMの濃度でネオグリフォリンと同程度の阻害を引き起こした.
著者
北村 利夫 板村 裕之 福嶋 忠昭
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.201-204, 1990-01-20
被引用文献数
1

【緒言】メロン(Cucumis melo L.)は非常に多形態な種で,多くの変種(variety)に分化しているが,主なものとして次の4種類がある. ①var.reticulatus ②var. cantalupensis ③var. inodorus ④var. makuwa また,① var.reticulatusはいわゆる温室メロンと称するイギリス系ガラス室栽培アミメロンとアメリカ及び中近東系露地栽培のcantaloupeに分けられる.近年メロンの消費の増加,高級品種志向に伴い,これらの変種, 系統間の交雑によるF1品種が続々と誕生しており,現在メロン果実の外観,風味,成熟の進展の様相が品種間で著しく異なるゆえんとなっている.既報において4品種のメロン果実の採取後の成熟・追熟生理を検討し,おのおの特徴のある3つのタイプを示すことを明らかにした.すなわち,'ライフ'では呼吸量及びエチレン発生量の急激な増大(クライマクテリック・ライズ)がみられた.一方,'アールス・フェボリット'系の'ハニーキング'ではクライマクテリック・ライズが起こることなく追熟を完了した.'プリンス'および'エリザベス'では'ライフ'のような明確なクライマクテリック・ライズは起こらないが,呼吸量及びエチレン発生量の多少の増大がみられた.本報では,'クリネット','マドンナ'及び'サンジュエル'の3品種のメロン果実について,収穫後の呼吸量及びエチレン発生量の変化を調査した結果を述べる.
著者
田川 伸一 森田 昌孝 堀口 健一 吉田 宣夫 高橋 敏能
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-7, 2014-02

2番草リードカナリーグラス(Phalaris arundinacea L., RCG)を材料とした発酵TMR(Total mixed ration)の発酵品質に及ぼす豆腐粕と製造元の異なる2種類のトウモロコシジスチラーズグレインソリュブルの利用,並びに酵素(商品名:プロセラーゼ10)0.2%添加効果をRCGの混合割合(原物)を45%と65%でパウチ法により検討した。先の報告の1番草RCGを供試したときより2番草RCG発酵TMRの発酵品質のうち,pHは高く乳酸含量は低かった。しかし,酪酸が殆ど検出されなかったためV-スコアとフリーク評点は高かった。また,何れのRCGの混合割合の場合も,酵素添加による発酵品質の改善効果は弱かった。2番草RCGを利用した時の発酵品質の評価が高かった原因に1番草より水分含量が低かったことが考えられた。
著者
高樹 英明
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.p215-307, 1979-02
被引用文献数
1

【緒言(抄)】ニンニクの栽培は南は沖縄から北は北海道に至るまで広く行われているが,たいてい秋植え初夏~夏どりの普通栽培で行われている.他の作型としては,暖地の一部で冷蔵種球を秋植えして早春~春どりする種球冷蔵早出し栽培と,極早生の品種を秋植えして1月中旬からトンネルをかけて春どりするトンネル早熟栽培とが行われている.種球冷蔵早出し栽培はニンニクの球形成が冬の低温経過によって誘起されるという性質を利用したもので,島田・庄崎(1954)がこの作型の成立可能性を明らかにし,山田(1959a,1959b,1963),幸地・松江(1959)およびその他の研究により実用化されたものである.(中略)ところで,ニンニクは以上の作型により,初夏から夏にかけては新鮮な球が多く供給されるが,秋から早春までの聞は収穫がない.(中略)冬から早春の端境期に新鮮な球を多量に供給するためには,現在はまだ問題がある種球冷蔵早出し栽培法の技術的改善をはかり,栽培面積の拡大をうながすことや,この作型の前進化を進めることがまず考えられるが,その他に収穫球の良品質を長く維持する貯蔵法の開発や新たな作型の開発,例えばタマネギで行われている春纏え秋どり栽培のような作型の開発を行うことも考えるべきであろう.しかしこれらの作型開発を進めるにあたっての基礎となるニンニク球の休眠の生理生態や球形成の生理生態はまだ十分明らかにされていない.本研究は上記の作型開発および球の貯蔵の基礎となる理論を明らかにする目的で行ったもので,ニンニクの発育(球形成・休眠)を進める最適および限界の外的条件を明らかにしニンニクの生活環の展開と外的および内的条件との関係を解明しようとした.さらに,温度,日長操作による球形成・休眠の人為的制御法を探求した.そして,これらの実験結果と本研究以外の筆者の研究成果とに基づいて種球冷蔵早出し栽培等の栽培改善の処方を考察するとともに収穫時の球の良品質性を長期間維持する貯蔵法や春植え秋どり栽培の可能性について検討した.
著者
富樫 二郎 生井 恒雄
出版者
山形大学
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.307-311, 2001 (Released:2011-12-19)

1999年7月山形県鶴岡市で鉢植しているベンケイソウ科の多肉植物Graptopetalum paraguayense(N.E.Br.)E.Walth,園芸名「おぼろづき」の葉身に軟腐症状が発生した.その後葉身全体が軟化腐敗して落下し,隣接葉,茎にも拡大,進展して株全体が倒伏した.本症状の病原学的調査の結果,本症は野菜類軟腐病菌と同種のErwinia carotovora subsp. carotovoraによるこれまで未記載の新病害であることが判明し,多肉植物G.paraguayense,「おぼろづき」の軟腐病(Bacterial Soft Rot)と命名した.
著者
田沢 一二 阿部 利徳 笹原 健夫
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.395-401, 1997-01

【摘要】一般にアスパラガス(Asparagus officinalis L.)では雄株の方が雌株より生産性が良いことが知られている.このことは同じ雌雄異株植物である山菜のシオデ(Smilax old hami Miq.)でも経験的に認められている.本研究は,雌雄異株植物であるアスパラガスとシオデにおけるアイソザイムパターンの差異を調べ雌雄の判定ができるかどうかの基礎的知見を得ようとしたものである.幼植物の茎葉部から抽出用の緩衝液で粗タンパク質を抽出した後2種類の電気泳動によってタンパク質を分離し,その後それぞれの活性染色を行って差異を調べた.ネティブポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後に,エステラーゼ,リンゴ酸脱水素酵素,酸性ホスファターゼ,およびグルコース6-リン酸脱水素の活性染色を行った結果,アスパラガスおよびシオデの雌雄間で差異が認められた.等電点電気泳動後に各種酵素の活性染色を行った結果では,エステラーゼおよび酸性ホスファターゼにおいて,雌雄間で差異が認められた.以上のことから,これらアイソザイムは雌雄異株植物であるアスパラガスおよびシオデの雌雄識別の基礎資料になると推察される.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.95-100, 1959-02-28

1) 両卵寄生蜂は1958年現在著者によって,本州,四国及び九州の一部府県にその分布が確認されたにすぎない.しかし,両卵寄生峰の活動,習性から判断して,何れの寄生蜂も新農薬の水田への多量投入以前においては,本州,四国及び九州の水田地帯に広く分布していたものと考えられる.エゾイナゴ Oxya yezoensis SHlRARI の卵にも寄生可能であるが,北海道でのこの種卵塊は採集出来なかったので,この地の分布については将来の調査を必要とする.2) 両卵寄生蜂の敵虫としては,寄生峰の卵,幼虫及び桶を捕食するアオバアリガタハネカクシPaederus fuscipes CURTIS,ベニイボトビムシ Achorutes roseus GERVAISの2種が日本各地の調査で確認されたが,両敵虫とも被寄生寄主卵ばかりでなく,不寄生寄主卵をもそれを包むコルク状物質とともに喰害するので,寄生峰の生物的抵抗としては余り重きをなさないようである(東北地方における被寄生卵塊の被害度は10%以下).第2次寄生峰は発見出来なかった.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.73-79, 1959-02-28

1)両卵寄生峰ともイナゴ(Genus Oxya)の卵にのみ首尾よく寄生し,他のバッタ属卵には全く注意を払わない.これは寄主卵をつつむ卵塊構造の物理,化学的な差異にもとづくもののようである.また,両卵寄生蜂とも寄主卵胚子の発育状態に関係なく寄生するが,イナゴ仔虫脱出直前の寄主卵からは寄生峰の脱出は認められなかった.一方,寄生蜂の脱出した寄主卵においては,寄主胚子の進んだ卵ほど,寄生してから成虫脱出までの所要日数が長引く傾向が認められた.これは寄主匹子の発育にともなって,寄生峰の発育が阻害されるためと推察される.2) 両卵寄生蜂とも地下lcm前後の深さまでは潜土して寄主卵を発見出来る.この場合,寄主卵をつつむ卵塊は明らかに寄生峰の視覚のおよばないところにある.一方,卵塊をいろいろに処理した場合,卵塊を構成するコルク質状物質を取除いた卵粒は真の寄主であるにかかわらず,寄生蜂は全く注意を払わない.この事実は,両卵寄生蜂が寄主卵それ自体に誘引されるのではなく,卵粒をつつむコルク状物質の化学的臭気に誘引されたものと考えられる.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, 1954-11

【緒言】 イナゴRice HopperはイネOryzasativa L.その他の作物害虫として東亜諸地域に広く分布しており、その防除などについてもかなり沢山の報告がある。しかしこの害虫の寄生蜂に関する研究は、応用昆虫学的見地からみて一層興味深いものがある。そしてイナゴ卵に寄生する寄生蜂については、ハネナガイナゴOxya velox F ABRICIUS の卵に寄生するScelio oxya GIRAULT (RAMACHANDRA 1921)やChinese grass hopper、Oxya chinensis THUM.の卵に寄生するScelio pembertoni TIMBERLAKE(PEMBERTON 1932)などの報告がみられるが、本邦においては卵寄生蜂の発生は全く知られず、したがってこの寄生蜂に関する研究は全く行われていない。たまたま1953年8月山形県庄内地方において、この卵寄生蜂が発見され、しかも新種であることが判明したので、筆者は主とじてこれが生態について研究を行っている。ここに現在まで調査した結果の一部を取麗めて報告したいと思う。本稿を草するに当り、絶えず御懇篤なる御指導と御鞭撞をいただく、本学阿部嚢博士に深謝の意を表すると共に、寄生蜂の同定及び文献については東京農工大学石井悌博士、北海道大学渡辺千向博士、農林省農業技術研究所加藤静夫技官にその多くを負い、また東北大学加藤陸奥雄博士、農業技術研究所深谷昌次博士並びに同所の各技官からは数多くの御ー教示をいただいたので、ここに深謝の意を表する。なお年平均気象図作製に当つては、 本学気象研究室から資料をおかりしたのでお礼を申し上けたい。
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.311-317, 1960-03-30

【摘要】 第1報においては卵寄生蜂の新種Scelio sp.として日週活動と温度反応などを報告したが,翌年渡辺博士により数多くの送付標本から形態的に若干の差異ある個体が見出され,ムライクロタマゴバチとツルオカクロタマゴバチの2新種に分けられた.著者はその後種類別に追調査を行い2種の日週活動と温度反応にも著しい差異のないことを第2報【緒言】にのべたが,詳しいデーターは示さなかった.本報は両種を同一日時に,しかも同様環境条件下で調査した結果を示し,第1報と併せ考察したものである.1)両卵寄生蜂の日週活動については著しい差異は認められなかった.しかじ1957年8月13日の追調査時には降雨による活動抑制が観察された.前回の,そしてその後の調査から,両種の日週活動には気温と日射量が1次的な影響を及ぼし,風雨などは2次的な影響を及ぼすものと思われた.一方照度は日中の気温が活車有効温度以下(約200℃以下)に降る時期には2次的に働くが,日夜活動有効温度内(約20℃以上)にある時期には活動支配の要因に変るようである.2)温度反応においても,両卵寄生蜂に著しい差異は認められなかった.即ち両種とも95%信頼限界値の平均では,9℃前後で微動をはじめ,18℃前後で正位となり,約20℃前後で匍匐あるいは歩行をはじめる.更に飛翔は23℃前後ではじまり,33℃前後で興奮状態となり,46℃前後で不正伎となり転倒,47℃前後で熱死する.もし,匍匐あるいは歩行開始から興奮状態に至るまでの間を正常活動とみなすならば,その温度範囲は約18℃となる.一方微動から熱死に至るまでの活動可能限界範囲は約40℃となる.これら両種の温度反応の結果は,他の多くの昆虫のそれに較べるとイネツトムシ成虫のそれにかなり似ている.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.245-255, 1968-01

前報において水田に近接した雑草地は,いわゆる水田害虫の生息の場として水田とは密接不可分の関係があり,これら水田と雑草地相互間の虫の移動をつきとめることは,生態学的にも興味深いばかりでなく,害虫防除の面からも是非必要であることを強調した.そして先の1960年と1963年の調査結果から,水田では農薬散布の影響が強くあらわれ,雑草地にくらべて単純な群集構造を示しているが,農薬の散布回数や種類などによって年によって変化があることを推論し,さらに水田と雑草地の間を行き来する2,3のある種害虫では,水田への農薬投入によって水田での個体数は減少するが,時を同じくして雑草地では個体数に増加の傾向が認められ,加えて農薬効果の薄らいだ後は水田と雑草地とでは上とは全く反対の現象のおこることを指摘しておいた.本報では1965年と1966年における調査結果を述べ,先の結果と併せて吟味してみたいと思う.本稿を草するに当り, 日頃ご指導ご鞭撞をいただく阿部襄教授に感謝の意を表する.また調査水田の管理資料は附属農場の五十嵐弘教官からおかりしたので, ここに記してお礼を申し上げる.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.189-193, 1957-02-25

In the primary report,the author considered that,some individuals of the egg parasites may occur twice a year. On October in 1953, the author collected one egg pod in which were enclosed 15 individuals of Scelio tsuruokensis, though it seemed to have passed through the period of the appearance in that year, and was impossible to the emergence (MURAI 1954). Thereupon, the author has continued rearing of this individuals. On the other hand, the adults of Scelio nuraii, which were collected on the ridges of the paddy field, were reared in the laboratory. Thus,the author has gained some knowledge as to the number of times of the occurrence. ln the present paper the results of the ecological studies of adults of the egg parasites are shown. A special study was made on the number of times of theo ccurrerence and the longevity.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.65-72, 1959-02-28

1) 両卵寄生峰の産卵能力は主として温度条件に左右され(関係湿度70%以上において),適温下では能力の増強が認められる.交尾,未交尾の雌の聞には産卵能力に著しい差異は認められない.また,両卵寄生蜂とも平均して1雌,約140個の卵をその体内に臓しているが,実際に寄主卵内に産下されるのは100-110卵位と推察される.2) 両卵寄生蜂とも単寄生と,多寄生をする場合とがあるが,野外においては前者が普通のようである. 後者の場合,それは所謂過寄生で,寄主卵内で首尾よく発育を遂げ脱出してくる成虫は1個体に限られる.多寄生により脱出した成虫は,その体躯小さく,抱卵数もまた少ない.寄主卵内における両卵寄生峰の分布様式は寄生蜂成虫の出現期間内(普通8-9月)の調査では大体中間型分布を示すが,越冬した寄主卵(10月以降産卵された寄主卵を含む)での調査の場合には,寄生率の高低によって集中分布-中間型分布となる.したがって,寄生様式は調査の時期,各地の寄生率などによって変化するものと考えられる.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.81-94, 1959-02-28

1)両卵寄生蜂の生活環は胚子の発育同様の寄主卵を供試し,同様の環境条件下で飼育した場合には,殆んど差異を認めない.しかし,野外においては寄生の時期,寄生後の環境条件(特に温度)などによって生活環は変化するようで,大部分の個体は年に1世代しか経過しないが8月中に羽化して直に寄主卵に寄生を完了した個体は年に2世代を経過する.越冬は第1令幼虫でなされる.2)両卵寄生蜂とも,その後胚子発生は極めて類似しており,各ステージの体長,休巾,活動習性などにおいては著しい差異を認めることは出来なかった.ただ,現在のところでは,第1令幼虫及び蛹化後の形態的特徴において,僅かに両卵寄生蜂の区別がつけられる程度のようである.したがって,将来更に詳しい両卵寄生峰の未成熟ステージでの区別点と,両種の血縁関係などについて調査する必要があるものと思われる.一方,両卵寄生蜂の発育速度は,寄生の時期,寄生当時の寄主胚子の発育状態,寄生後の環境条件(特に温度)などによって影響される.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.319-322, 1960-03-30

【摘要】 両卵寄生蜂に関するこれまでの研究は,主として蜂の利用を目的として研究がおしすすめられたが,同時にScelio属すべてに未知だった問題についても解決されるところが少くなかった.この継続した研究の間,著者は両種の類縁関係に少なからぬ興味をいだき,主として生態学的立場から追求を試みたが,両種には多くの共通性が認められた.本報においては,遺伝学的立場から追求の手はじめとして試みた両種の交配結果が示された.即ちScelio muraii♀ x S.tsuruokensis ♂,S.tsuruokensis ♀ x S.muraii ♂ の場合においても,著者の実験ではその子孫は何れも母親の形質を表現した.これは正常遺伝とは異った型のものである.しかし寄生性膜趨目の性決定機構,遺伝方式は定まっていないので,両卵寄生蜂のそれらについても更に多くの交配実験と,細胞学的あるいは遺伝学的立場からの検討が必要と思われる.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.169-178, 1957-02-25

Introduction: The author carried on further investigations on the ecological differences of adults of both species,but on the diumal activity,the period of the appearance,etc.,as is recorded in the primary report,no remarkable differences were seen.As to the distribution area, except Shonai district,Yamagata Pref.,where both the species occur together, the only area newly known is the neighbourhood of the city of Takada, Niigata Pref.,where Scelio muraii alone occurs. In the present paper, the results of the ecological studies of adults of both species are shown. A special study was made on the emergence of adults, the seasonal prevalence,the rate of appearance and the sex ratio. The investigations have been done from 1953 to 1956. Before going further, the author wishes to express his sincere thanks to Prof.Dr. Noboru ABE for the kind guidance given to the author during the course of the present study, and to Dr. Chihisa WATANABE of Hokkaido University,Dr. Tei Ishii of Tokyo University of Agriculture and Technology, and Mr. Shizuo KATO of National Institute of Agricultural Sciences for the kindness given to the author in naming the species and the literature.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, 1958-03

両卵寄生蜂とも単為生殖を行ないうるが,このような場合には雄ばかりのprogenyを産出する(第1表及び第2表).しかし野外自然状態下ではかかる単為生殖は極めて稀な場合にしか起らず,野外で採集,あるいは目撃される雄のほとんどは交尾した雌の不授精卵が発育したものと考えられる.卵寄生蜂の分布地域として,両卵寄生蜂の棲息する山形県庄内地方,ムライクロタマゴバチだけ発見された新潟県高田市附近(第2報参照)のほか,新たに著者の調査により,両卯寄生蜂が山形県新庄市,秋田県鹿角郡花輪町附近に,またツルオカクロタマコバチが岩手県盛岡市附近にも分布することが確認された.なお,両卵寄生蜂とも第1令幼虫で越冬するが,生活環については詳しく後報する予定である.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.101-105, 1959-02-28

【摘要】 本誌の第1報から第9報まではムライクロクマゴバチとツルオカクログマゴバチの成熱,未成熟ステージの主として生態学的研究の結果を報告した.一方イナゴ仔虫及び両卵寄生蜂に対する農薬の影響,日本におけるイナゴの分布と発生状況,イナゴ卵塊の分布密書度,深度と大きさなどについては別誌(山形農林学会報)にそれらを報告しておいた.本報は上の基礎研究から両卵寄生蜂の利用価値を推論したものである.1) 日本の場合,両卵寄生蜂は寄主成虫の分布に伴い,各地の水田地帯に広く分布していたものと思われる(北海道は未確認).しかも両卵寄生蜂ともイナゴ(Genus Oxya)の卵のみを寄主選択し.大部分の個体が単寄生をするので,寄生峰の大量生産には大量の寄主卵を必要とし,これを集める労力と費用は莫大で,現在のところ満足な量を集めることは困難である.また,人工的寄主を他に求めることも今のところ不可能である.したがって,両卵寄生蜂に著しい成果を期待することはむつかしい.しかし,野外から採集した寄主卵,あるいは室内飼育の成虫から得た寄主卵に両卵寄生蜂を寄生させ,増補した蜂を野外出現期間の8~9月の間,それに正常出現期ではないが,話動可能な10月中の20℃以上の日時に野外に放飼い寄生率を現在より高めることは可能である.2)外国の場合,両卵寄生蜂の分布するか否かは将来の調査を必要とするが,熱帯及び亜熱帯地方では寄主の発生回数も日本におけるよりは多く,両卵寄生蜂の活動,繁殖にも一層好適だと思われるので,将来両卵寄生蜂が発見されない場合には利用価値は充分あるように思推される.