著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.311-317, 1960-03-30

【摘要】 第1報においては卵寄生蜂の新種Scelio sp.として日週活動と温度反応などを報告したが,翌年渡辺博士により数多くの送付標本から形態的に若干の差異ある個体が見出され,ムライクロタマゴバチとツルオカクロタマゴバチの2新種に分けられた.著者はその後種類別に追調査を行い2種の日週活動と温度反応にも著しい差異のないことを第2報【緒言】にのべたが,詳しいデーターは示さなかった.本報は両種を同一日時に,しかも同様環境条件下で調査した結果を示し,第1報と併せ考察したものである.1)両卵寄生蜂の日週活動については著しい差異は認められなかった.しかじ1957年8月13日の追調査時には降雨による活動抑制が観察された.前回の,そしてその後の調査から,両種の日週活動には気温と日射量が1次的な影響を及ぼし,風雨などは2次的な影響を及ぼすものと思われた.一方照度は日中の気温が活車有効温度以下(約200℃以下)に降る時期には2次的に働くが,日夜活動有効温度内(約20℃以上)にある時期には活動支配の要因に変るようである.2)温度反応においても,両卵寄生蜂に著しい差異は認められなかった.即ち両種とも95%信頼限界値の平均では,9℃前後で微動をはじめ,18℃前後で正位となり,約20℃前後で匍匐あるいは歩行をはじめる.更に飛翔は23℃前後ではじまり,33℃前後で興奮状態となり,46℃前後で不正伎となり転倒,47℃前後で熱死する.もし,匍匐あるいは歩行開始から興奮状態に至るまでの間を正常活動とみなすならば,その温度範囲は約18℃となる.一方微動から熱死に至るまでの活動可能限界範囲は約40℃となる.これら両種の温度反応の結果は,他の多くの昆虫のそれに較べるとイネツトムシ成虫のそれにかなり似ている.

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