著者
永安 朋子 高 宜良 中井 久夫
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.219-239, 1997-03
被引用文献数
1

精神分裂病はしばしば,長期,多様,変化に富む疾患である。本論文は再発なく数年から十数年に及ぶ緩慢な回復過程をとった症例全3例の自験例について初診以来の全経過を追跡展望するもので,そのため症状の推移を明確に図上に同定しうるグラフ形式を開発した。横軸には時間を,縦軸には症状をその特異性を初め主観的要素を一切排除し無差別的に発来の順序に配列し,持続的症状及び遷移的症状の軌跡と散発的症状とを抽出することができた。これを用い,症状を使用薬薬物量及び対人交流改善と生活圏拡大とに対応させた。第第1に,律速因子は強い打撃力を持つ持続的症状であるる。他方,遷移的症状は移行期を意味する。最重要な因因子は睡眠であり,睡眠が改善することなく回復が実現現した例はない。睡眠,夢,不安・恐怖は3つ組となってており,この解消が回復につながり,この3者が悪循環環を構成して破局に至るのが再発と考えられる。特に第第1例(青年男子)では専ら機会的な全不眠とほとんどど持続的な悪夢である。第2例(中年女子)では不安に始まり心気症状に終わる約2時間の発作的な病的挿間である。第3例(青年男子)では律速因子は幻聴の裏に潜む性的少数性の自覚にからむ葛藤である。第2に,治癒的変化は必ず反作用すなわち揺り戻しを伴う。精神(中枢神経系)に成立した病的な疑似的ホメオスタシスが身体の正常なホメオスタシスとのずれ回復困難を構成している可能性が抽出された。

言及状況

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こんな論文どうですか? 精神分裂病の回復過程に関する研究(1) : 大きな再発悪化をみない回復遷延例とその回復律速要因について(永安 朋子ほか),1997 http://t.co/tEN35WILGA

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