著者
梅谷 健彦
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.23-27, 1994-12

著者は低価格(1本当り約200円)で入手しやすい試薬を用いたカラーリバーサルフィルムの自家現像処理法を考案し,比較的良好な結果を得ているので紹介する。フィルムの現像処理は28℃の温度下で以下の手順で行う。1.第1現像液(フェニドン0.6g,ハイドロキノン8g,無水亜硫酸ナトリウム40g,炭酸ナトリウム1水塩46.8g,臭化カリウム2g,チオシアン酸ナトリウム2g,O.2%硝酸6ニトロベンズイミダゾール水溶液15mlを蒸留水に溶解して1000mlにした液), 13分。2. 流水で水洗5分。3.反転露光。4. 発色現像液(燐酸3ナトリウム12水塩40g,水酸化ナトリウム1Og,ベンジールアルコール5ml,硫酸エチレンジアミン6g,シトラジン酸2g,硫酸ジエチルパラフェニレンジアミン4gを蒸留水に溶解して1000mlにした液),15分5.流水で水洗,5分。6. 清浄液(メタ重亜硫酸カリウム20gを蒸留水に溶解して1000mlにした液),5分。7.流水で水洗,5分。8. 漂白液(フェリシアン化カリウム80g,臭化カリウム2g,燐酸2ナトリウム12水塩25.3g,炭酸ナトリウム1水塩4gを蒸留水に溶解して1000mlにした液),8分。9.流水で水洗,5分。10. 定着液(ハイポ160g,メタ重亜硫酸カリウム10g,燐酸1ナトリウム2水塩11.6gを蒸留水に溶解して1000mlにした液),6分。11.流水で水洗8分。12. 安定液(ホルマリン6ml, ドライウェルなどの湿潤剤1Omlを蒸溜水に加えて1000mlにした液),1分。
著者
田中 究
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.337-350, 1997-03

幻覚,特に幻聴は,通常,分裂病を中心に精神病症状の病理を典型的に現すとされているが,外傷後ストレス障害,境界性人格障害,身体化障害,あるいは解離性同一性障害をはじめとする解離性障害など,神経症圏の疾患にみられることもまれではない。シュナイダーの一級症状による鑑別では分裂病とこれらの神経症性の疾患が誤診されることがある。しかし,かれらの幻聴を観察すると知覚性が高く意味性に乏しいこと,幻聴の他者を世界内に位置づけ得ることで分裂病性の幻聴から区別することができる。こうした神経症性の幻聴は観察によれば聴覚性のフラッシュパック,想像上の友人によるもの,交代人格によるものの三種類に分類され,これらの鑑別が診断に結びつく。しかし,これには注意深い観察と面接を要する。また,幻聴を有する神経症圏内の患者には健忘,離人症,現実感喪失,同一性の混乱や変容といった解離症状が認められる。これは心的外傷,小児期の虐待の後遺障害と考えられる。幻聴はこの解離に関係しており,幻聴を持つ神経症患者においては解離症状を疑い,その背景にある心的外傷に注目することが治療の端緒になる。またこうした幻聴には薬物がほとんど無効で治療の中心は精神療法である。
著者
九鬼 克俊 柿木 達也 高宮 静男 前田 潔
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-53, 2001-12-20
被引用文献数
1

阪神淡路大震災の高齢者における精神疾患への影響を明らかにするため, 被災地中心部と周辺部に位置する総合病院精神科外来を受診した65才以上の高齢者の特徴を, 外来診療録をもとに後方視的に調査した。中心部, 辺縁部ともに痴呆・せん妄, 気分障害が多く, さらに, 中心部では身体表現性障害が, 周辺部では post-traumatic stress disorder (PTSD), acute stress disorder (ASD) を含む不安障害が多数を占めていた。地震後, 周辺部病院群ではPTSD・ASDの有意な増加がみられた。震災を契機に発症した例では, 痴呆・せん妄および身体表現性障害は周辺部病院群より中心部病院群において有意に高率で, PTSD・ASDは逆に中心部病院群より周辺部病院群において高率であった。被災地中心部では, 痴呆の顕在化に対処する体制が必要とされるとともに, 精神的ストレスが身体症状として現れることが多いため, 身体科と精神科の連携を強化する必要があると思われた。周辺部でPTSD・ASDの受診率が高かったことは, 避難先での精神保健活動の必要性が高いことを示唆していると考えられた。
著者
宋 建華 福島 春子 胡桃澤 伸 田中 究
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.145-177, 2001-03-31
被引用文献数
1

精神分裂病患者で成育歴に心的外傷体験を持つものは少なくないが, このような患者には精神分裂病固有の症状に加え, 心的外傷に起源をもっと考えられる症状を認めることがある。著者らは, 神戸大学精神神経科外来に通院する90名の精神分裂病患者に対して, 解離症状質問票 (Dissociation Questionnaire ; DIS-Q) および解離体験尺度 (Dissociative Experience Scale ; DES) を用いて, 心的外傷に関連した症状とその頻度を調査し, 検討した。さらに簡易精神症状評価尺度 (Brief Psychiatric Rating Scale ; BPRS) を用いて解離と精神症状の関連について調査した。この結果, 精神分裂病患者においても, 健常群や他疾患群と同様に解離傾性を認めた。高解離群では精神分裂病の発症年齢が有意に低く, 心的外傷後ストレス障害にみられる症状を認めた。また, 心的外傷を有する群は解離傾性が高く, 心的外傷のない群より, 離人感, 現実感喪失および行動, 思考, 感情の制御不全が生じやすく, 心的外傷のない群では情動の平板化, 感情緊張の低下, 感受性や興味, 関心の欠如といったいわゆる陰性症状が優位に見られた。また, DESとDIS-Qは強い相関を認め, 精神分裂病の解離傾性を解析するのにDISQはDESと同様, 有用な検査法であることが示された。現象的に精神分裂病症状の中に心的外傷起源の幻聴 (解離性フラッシュバック) が含まれ, 言語的あるいは非言語的な刺激, 特定の状況, それにともなう感情を想起したときに, 思路障害が生じる場合があることを示し, 精神病理学的な検討を試み, 心的外傷を考慮した精神分裂病治療が必要であることを述べた。
著者
日野 高睦 井口 哲弘 原田 俊彦 水野 耕作
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-20, 2000-12-20

目的 : 五十肩の病態を解明するためその器質的ならびに機能的変化をMRIを用いて評価し, 臨床症状と比較検討することである。方法 : 対象は38例42肩 (40〜69歳) であり, ほぼ同様の症状を呈する腱板不全断裂患者24例24肩 (40〜70歳) を対照群とした。MRI像にて肩関節周囲の浸出液貯留像, 腱板の輝度変化と厚み, 関節症性変化の有無につき評価し, これらの所見と疼痛の性状, 関節可動域, JOAスコアなどの臨床症状との関連を検討した。結果 : 五十肩に特有な器質的変化は見いだせなかったが, 異常所見としては関節内外の浸出液貯留像がみられた。また発病初期には上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の貯留像が多くみられた。そして腋窩陥凹部に貯留のある群は有意に夜間痛を多く訴えていた。しかし腱板の輝度変化や厚さ, 肩峰下面の骨疎, 肩鎖関節の関節症性変化, 上腕骨骨頭の骨嚢腫像は臨床症状となんら関連がなかった。また腱板不全断裂群との比較では肩甲上腕関節内での浸出液貯留像はほぼ同様にみられたが, 肩峰下滑液包での貯留は有意に少なかった。結論 : 腋窩陥凹部での浸出液貯留は, 関節内圧の上昇を来たし, 五十肩の特徴である夜間痛の原因となっていると考えられた。また上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の貯留は初期に多く見られ, 五十肩の初発像である可能性がある。
著者
田頭 政三郎
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.73-90, 1979-05

When I have observed the cultural circumstances of Okinawa from the viewpoint of transcultural psychiatry, I can realistically recognize a culture dominated by shamanism still subsisting within the bottom of the Okinawan culture and also acting as an emotional undercurrent of the people of Okinawa, on the one hand, and on the other, the confusion and conflict of the two different cultures which have experienced historically various cultural shocks and have been permeated by the culture of highly modernized technology especially after the end of the Second World War. In psychiatric treatment under the present cultural circumstances of Okinawa I can clearly elaborate a friction between the traditional witchcraft treatment based on shamanism and the modern psychiatric treatment. I have good reason to say that this friction has been concentrated on the attack and the condition of mental illnesses such as schizophrenia indigenous to Okinawa. For this reason, I have made direct contact with five Yuta persons (shaman) and, by referring to psychiatry, have investigated the structure of their personality, the initiation, the frame of the spiritual world believed in by Yuta persons, the witching practices, and their spiritual obstacles. I have met 88 psychiatric patients and 81 members of their families and have examined their involvement in Yuta practices and the influence of shamanism on psychiatric treatment in Okinawa. As a result, I have reached the following conclusion : 1. The domination of shamanism in the field of psychiatric treatment in Okinawa is still great. 2. In the frame of the spiritual world sustaining the witchcraft practices of Yuta persons there is a dual structure that contains the existence of various Kami (Gods) in the mythology of Japan and that of ancestral spirits. There are many points of view quite inconsistent with the theory of Mr. P. Lebra. As for their spiritual obstacles, Yuta persons assert that mental disorders take place in connection with the spirits of ancestors although they approve of the existence of mental illnesses in reality. In the local disorders of Japan mental disorders as a retribution are being attributed to possession with or Tatari (an evil spell) by the spirits of the animals such as fox and badger, or by Ikiryo (a wraith). But such practices have not been observed in the local shamanism of Okinawa. Moreover, judging from the pathogenecy of psychiatry, the cases diagnosed as schizophrenia and the analysis of the attacking condition of patients under the present cultural circumstances of Okinawa indicate that many mental patients are caused by their failure in identifying themselves with the identity crisis of the peculiar based on shamanism and the modern culture mainly represented by the U. A. S., once exposed to the crisis. The contents of the patients' delusion also disclose the reflection of their reaction to the two different cultures; the schizophrenic patients of Okinawa have been exposed to a cultural inconsistency. I have made clear the four cases mentioned above according to psychopathological mechanism.
著者
高 宜良 永安 朋子 内藤 あかね 中井 久夫
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.287-336, 1997-03

直接治療に関与した強迫症の長期外来治療例全例9例の記録とグラフ表現とによって治癒過程を研究した。その際,本症を全生活障害と捉えて身体診察とアートセラピーを行い,また症状の改善にもまして生活の再開と拡大とを重視した。治癒過程は特徴的に症状中心期,感情表出期,生活拡大期の3期と,各段階の移行期に分けられ,段階ご存に「病圧」が格段に低下する。全体を通じての治癒的因子は,睡眠,薬物に対する心理的受容性,必要薬物の比較的少量,症状の生活阻害が部分的であることである。治療者側の基本的態度は超自我的脅威と専門家的不関性とを避けて基本的信頼の維持を態度で示すことである。これは特に治療中断後の再開時に重要である。また,症状中心期においては,目標は患者の意識における症状の脱中心化と患者の士気の維持向上である。治療の反作用として身体的動揺と身体症状の発現,症状の激化,行動化とが出現するが,いずれも一過性であり,治療に活用しうる。続く移行期にはしばしば治療上意味のある患者の「一時雲隠れ」が起こる。その意義は土居の甘え理論によっても森田の精神交互作用によっても理解しうる。感情表出期においては症状よりも,生の苦悩と苦渋な生活状況とが中心となる。治療的セレモニーの雰囲気の醸成のために音調の重視,アートセラピー,身体診察が貢献する。生活拡大期においては患者を信頼し,支持的態度とタイミングについての助言でよい。
著者
上原 弘三
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.141-147, 1997-03
被引用文献数
1

日本の家屋におけるアレルギー性ダニの最近の分布状況を明らかにするため. 61戸のダニアレルギー患者(主として喘息患者)家屋と比較対照のために11戸の健常人家屋から屋内塵を採取し,コナヒョウヒダニDermatophagoides farinae HughesとヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinus (Trouessart)の抗原レベルを比較した。掛け布団と枕においては,対照家屋より患者家屋の方が高い抗原レベルを示したが,敷き布団,カーペット,畳および板間については差がなかった。年間で見ると春から秋の期間(4〜10月)が他の時期に比べて材料の表面1m^2当たり10μg以上の抗原レベルを示したサンプルが多く,年間を通じて観察された掛け布団とまくらにおける患者家屋と対照家屋との差異が, この期間においても確認された。患者家屋の掛け布団,敷き布団,枕,カーペットおよび畳において木造家屋の方がコンクリート家屋より高い抗原レベルを示した。患者家屋の環境要因とダニ汚染の関連について考察した。
著者
池川 隆一郎 中江 史朗 中村 毅 斎藤 洋一
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.89-97, 1996-11

大腸癌61例を対象とし,AgNORsスコアの算定および免疫組織染色によりCD44v6の発現の有無の検討を行い,臨床病理学的所見との関連を検討した。大腸癌のAgNORsスコアは3.12〜4.55に分布し,平均は3.84±0.29(mean土S.D.) であり,正常粘膜60例の2.70±0.22より有意に高かった(p<0.05)。深達度では,ss a1以上ではmp以下より,P (+),H(+),n(+),ly(+)は各々陰性例より有意にAgNORsスコアが高く(p<0.05),特に肝転移の有無とは密接な関連がみられた(p<O.01)。CD44v6の発現の有無と臨床病理学的所見の比較では明らかな関連性はみられなかったが,異時性も含めた肝転移との検討ではCD44v6発現陰性群6/34よりCD44v6発現陽性群10/27で肝転移症例が多くみられる傾向があろた(p<O.1)。両因子を組み合わせた検討では高AgNORsかつCD44v6陽性では肝転移の頻度は7/16 (43.8%) と高率であり,低AgNORsかつCD44v6陰性では17例全例肝転移はみられなかった。またCD44v6の発現とAgNORsスコアの間には有意な関連はみられなかった。以上よりAgNORs染色が良悪性の鑑別に有用である可能性があり,両因子を組み合わせて検討することは肝転移の予測推定に有用であると思われた。またAgNORsスコアによって示される増殖活性と,接着因子CD44v6とは各々独立して肝転移に関与している可能性が示唆された。
著者
陳 明裕
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.35-45, 1992-06

低出力レーザーの効果について主に三つの研究を行った。初めに,低出力レーザーの除痛効果が,矯正治療時の痛みに対しでも有効であるのかどうかを検討した。その結果,この場合においても,レーザー照射は極めて有効であることが認められた。つぎに,マウス培養知覚神経節の神経線維伸長に対する低出力レーザー照射の影響について検討した。神経線維の伸長はレーザー照射によって,顕著に抑制された。レーザー照射は,単離した神経細胞の神経線維伸長も抑制し,特に小型,中型の神経細胞に対する影響は著明であった。また,免疫組織染色による観察から,サプスタンスPおよびCGRP含有神経線維が強くレーザー照射の影響を受けていることも示された。これらの結果は,低出力レーザーの除痛効果を解明する上で非常に興味深い。次に,生体のラットの歯に低出力レーザー照射を行い,歯髄内のサプスタンスPおよびCGRP含有神経線維に対する影響を免疫組織化学的に調べた。その結果,検出し得る変化はなかった。
著者
横田 誠
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.911-918, 1982-05

β-Endorphin (β-EP) is known to be the most potent among the opioid peptides present in human and animal brains. However, the significance and physiological role of β-EP remain unknown so far. Therefore, to obtain a clue about its function in human, extracts of discrete areas of human brain and pituitary were radioimmunoassayed for β-EP and ACTH contents. The concentration of immunoreactive β-EP was highest in the pituitary (anterior and posterior lobe combined together) (16.1 ng/mg weight {w.w.}), followed by pedunculus cerebellaris superior (226± 104 pg/mg w.w.) (mean±SEM), nucleus ruber (220±65.9 pg/mg w.w.), pyramis (191±93.9 pg/mg w.w.), corpus callosum (182±87.5 pg/mg w.w.), nucleus dentatus (145±80.3 pg/mg w.w.), globus pallidus (138±61.8 pg/mg w.w.), pedunculus cerebellaris inferior (135±111 pg/mg w.w.), capsula interna(120±67.1 pg/mg w.w.), nucleus subthalamicus (107±70.5 pg/mg w.w.), hypothalamus (102±38.5 pg/mg w.w.), crus cerebri (88.4±83.5 pg/mg w.w.) and nucleus olivaris (87.8±41.5 pg/mg w.w.). Almost as similar as observed with β-EP, immunoreactive ACTH content was highest in the pituitary then followed by limbic systems, pyramidal and extrapyramidal systems and so forth. By gel chromatography on a Sephadex G-50 superfine column (1×50 cm), immunoreactive β-EP of the pituitary eluted as three peaks, starting in the void volume corresponding to a common precursor, followed by β-LPH, whose peak was the largest, and β-EP. Chromatography of hypothalamus extracts gave rise to two peaks corresponding to a small component of β-LPH and a large one of β-EP. Pyramis extracts, chromatographed, showed a single peak between the elution position of <125>^I-β-LPH and that of <125>^I-β-EP while zona incerta extracts eluted as a peak in the void volume. Globus pallidus extracts showed three peaks corresponding to the fraction in the void volume, β-LPH, and β-EP, respectively. Crus cerebri extracts had two peaks ; small one in the void volume and large one in the same fraction of <125>^I-β-LPH. Pons extracts disclosed two peaks corresponding to β-LPH and β-EP while extracts of corpus callosum and capsula interna had a broad peak eluting over those of β-LPH and β-EP. These results suggest that immunoreactive β-EP is widely distributed in human brain and also that there is the size heterogeneity in β-EP immunoreactivity in the brain. However, whether immunoreactive β-EP eluting in the fraction corresponding or not necessarily corresponding to the three known components, a common precursor, β-LPH and β-EP are due to authentic β-EP, β-EP-related peptides or crossreactive substances present in human brain remains to be further elucidated.
著者
砂川 武
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.89-99, 1989-03

ラット肝ミクロゾームにおけるtestosteroneの5α-dihydrotestosteroneへの代謝と4-androsten-3-one-17β-carboxylic acid (17β-C)によるその阻害機序を検討するため,代謝物を誘導体に導くことなしに,メガボアカラムを装着したgas chromatography-mass spectrometry (GC-MS)で分析した。5α-reductaseの安定剤としてNADPHをホモジネート作成時より添加して実験を行なった。肝ミクロゾームでtestosteroneをインキュベートすることにより5α-,5β-水素還元体が得られ,他に17-ケトン体及び水酸化体も検出された。肝ミクロゾーム(雄ラット,9週齢)のtestosterone代謝速度は8μg/mg湿重量/時であった。肝ミクロゾーム中の50μgのtestosteroneは同量の17β-Cの存在により代謝阻害された。モルモット皮膚スライスを含む反応液中のステロイドも同様に分析された。Testosterone,estradiolの主代謝物は対応する17位のケトン体であった。反応系の酸化還元平衡は酸化体生成方向に傾いており,脱本素化速度は両基質とも2μg/g皮膚スライス/日であった。17β-OH化合物のtestosterone,estradiolはそれぞれ対応する17α-OH異性体より酸化されやすかった。Testosterone propionateは加水分解された後,17-ケトン体,5α還元体に代謝された。Ethinylestradiol,methyltestosterone等の17β-OHは酸化されなかった。
著者
永安 朋子 高 宜良 中井 久夫
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.219-239, 1997-03
被引用文献数
1

精神分裂病はしばしば,長期,多様,変化に富む疾患である。本論文は再発なく数年から十数年に及ぶ緩慢な回復過程をとった症例全3例の自験例について初診以来の全経過を追跡展望するもので,そのため症状の推移を明確に図上に同定しうるグラフ形式を開発した。横軸には時間を,縦軸には症状をその特異性を初め主観的要素を一切排除し無差別的に発来の順序に配列し,持続的症状及び遷移的症状の軌跡と散発的症状とを抽出することができた。これを用い,症状を使用薬薬物量及び対人交流改善と生活圏拡大とに対応させた。第第1に,律速因子は強い打撃力を持つ持続的症状であるる。他方,遷移的症状は移行期を意味する。最重要な因因子は睡眠であり,睡眠が改善することなく回復が実現現した例はない。睡眠,夢,不安・恐怖は3つ組となってており,この解消が回復につながり,この3者が悪循環環を構成して破局に至るのが再発と考えられる。特に第第1例(青年男子)では専ら機会的な全不眠とほとんどど持続的な悪夢である。第2例(中年女子)では不安に始まり心気症状に終わる約2時間の発作的な病的挿間である。第3例(青年男子)では律速因子は幻聴の裏に潜む性的少数性の自覚にからむ葛藤である。第2に,治癒的変化は必ず反作用すなわち揺り戻しを伴う。精神(中枢神経系)に成立した病的な疑似的ホメオスタシスが身体の正常なホメオスタシスとのずれ回復困難を構成している可能性が抽出された。
著者
大川愼吾
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.87-92, 2003
被引用文献数
1

末梢性顔面神経麻痺では眼輪筋麻痺による眼裂の拡大だけでなく前頭筋麻痺による眼裂の狭小が重要な所見である。顔面神経支配の前頭筋は上眼瞼の挙上に関して補助的に働くので, その麻痺により上眼瞼の下垂 (眼瞼下垂) が起こると考えられる。このため, 前頭筋麻痺による眼瞼下垂が軽度であれば眼輪筋麻痺による眼裂拡大が前景に立つが, 重度になると逆に眼裂狭小が起こることになる。この眼裂狭小が時に非常に重度となることから, 上眼瞼の挙上に関する前頭筋の役割は極めて重要であると思われる。このことを説明するために, 上部顔面の皮膚の状態に注目した。すなわち, 高齢者では上眼瞼や額の皮膚の弛緩によって上眼瞼の下垂 (偽眼瞼下垂 pseudoptosis) が起こりやすいが, 前頭筋の働きによりこれが代償されると眼裂狭小にならない可能性がある。このような ''潜在化'' した眼裂狭小がある場合に前頭筋麻痺が起こると眼裂狭小が重度になると思われる。前頭筋麻痺による眼瞼下垂と上眼瞼挙筋麻痺による眼瞼下垂を鑑別する方法として, 験者の手で他動的に麻痺側の眉毛を釣り挙げて眼裂の大きさの変化をみる「眉毛挙上試験」が単純であるが非常に有用と思われた。
著者
梅田 正博
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.45-62, 1987-03
被引用文献数
8

ハイドロキシアパタイトセラミックス(HAP)の人工骨としての有用性を検討するため,HAPの家兎頸骨内移植実験,脱灰骨基質(DMBM)およびHAPのラット皮下混合移植実験を行った。頸骨内移植実験においては,移植後早期よりHAP表面には骨芽細胞の配列がみられ,HAPを核として骨形成は進行し,移植部全域に新生骨形成が認められたが,90日後においても新生骨に吸収像は認められなかった。一方,骨削除のみの対照群においては,骨削除部を中心に活発な骨形成が生じるが,骨髄腔内の新生骨は吸収され. 90日後ではほぼ術前の状態にもどっでいた。皮下移植実験においては.DMBM単独移植では,良好な軟骨,骨誘導がみられたが,HAPとDMBMとを混合すると,軟骨,骨形成は低下することが認められ,一方,新生骨とHAPとの直接の接触もみられなかった。以上より,HAPは骨伝導能を有し,口腔外科領域における人工骨材料として有用性が高いものと考えられるが,その適用範囲に関しては,今後さらに検討する必要があると思われた。
著者
中村 哲也
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.149-158, 1989-03

ラット膵ラ島腫瘍細胞株RIN-rおよびRIN-m5Fを入手し, RIN-rからは新たなクローンを得て,これらの細胞におけるホルモン分泌,およびその遺伝子を比較検討した。すべての細胞において,インスリン,グルカゴンともに分泌し,両遺伝子の発現を認めたが,それぞれの程度は異なっていた。RIN-rのクローンはすべて,long♯1,long♯3を共通のマーカー染色体として持ち,同一細胞由来であることが確認され,これらの細胞が,ホルモン産生の面で多面性を持つことが示唆された。RIN-m5Fも本来は同じ膵ラ氏島腫瘍由来の細胞であるが,ホルモン分泌および遺伝子発現ともに他の細胞より著しく,染色体構成も大きく異なっていた。すべての細胞において, Ha-rasの有意な発現を認めたが,遺伝子増幅やDNAレベルでの組換えを認めず,またホルモン分泌ならびにホルモン遺伝子の発現との関連は不明であった。グルコース刺激に対し,RIN-rおよびRIN-m5Fは,正常ラット膵ラ島と異なった反応を示し,これらの細胞はホルモンの分泌モデルとしては不適当であると思われたが,遺伝子発現の研究上,有用な材料となり得ると考えられた。
著者
中野 修
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.121-130, 1991-07

epidermal growth factor (EGF)が胃粘膜において,如何なる機序で損傷粘膜の修復機転あるいはその恒常性保持に関与するのかを胃粘膜細胞を用いたin vitroの系で検討した。静止期に同期させたモルモット培養胃粘液細胞を10%血清存在下でEGFと共に刺激すると,細胞数及びDNA合成は対照に比し刺激時間及びEGFの濃度に依存して増加し,その最大効果はlOng/ml EGF刺激24時間で観察された。細胞を0.5%血清下で[3^H]-アラキドン酸で標識しつつEGFを加え上清を薄層クロマトグラフィー(TLC) 法で分析すると,上清中にプロスタグランジン(PG)E_2を主とするアラキドン酸(AA)代謝産物の産生が認められた。ラジオイムノアッセイ(RIA)法によりPGE_2量を定量すると,10%血清下でEGF刺激によりPGE_2分泌は刺激後6時間まで時間及びEGFの濃度に依存して増加し,その最大濃度は4.18X10^<-7>Mであった。又,シクロオキシゲナーゼ(COX) 阻害剤であるインドメタシン(IND)をEGFと同時添加すると,EGFにより刺激されたPGE_2分泌はほぼ対照レベルまで抑制された。INDは又,EGFの細胞増殖刺激効果をも抑制したが,さらにPGE_2を同時添加することによりINDにより惹起された増殖抑制はPGE_2の濃度に依存して有意に解除された。従って,EGF刺激により分泌されたPGE_2がEGFの増殖刺激作用に関与する可能性が考えられた。次に,どのような機序でEGFがPGE_2分泌を刺激するかを検討した。EGFは0.5%血清下で,添加したAAの濃度に依存してPGE_2分泌を刺激した。又,EGFは刺激後の細胞の破砕液を酵素源として[14^C]-AAからの[<14>^C]PGE_2への転換率より評価したCOX活性を亢進させ,かつウエスタンプロット法によりEGF刺激細胞においてはCOX酵素蛋白質の誘導が認められた。これらはEGF刺激により,COX蛋白質誘導,その活性冗進及びPGE_2分泌の順序で認められ,これら3者間に明確な時間的相関性が認められた。一方, EGFはCOX刺激を認める同条件下で評価した細胞のホスホリバーゼA_2活性には影響を与えなかった。以上より胃粘液細胞においては, EGFはCOX蛋白質合成過程を刺激し,かつ外液中のAAを利用することによりPGE_2分泌を刺 激するものと考えられ,このようなPGE_2を介した増殖刺激機序がin vivoで認められるEGFの胃粘膜保護作用の一部を担う可能性が示唆された。
著者
高田 正三
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.43-58, 1991-07

脊髄損傷者に,社会復帰後の生活状況をアンケート調査し,社会復帰に影響を及ぼす要因を検討した。対象は頸損54例,胸損43例,腰損21例の計118例で,退院後,87%が自宅生活をし,日常生活動作や車いす動作で介助を要するものが,それぞれ41%,31%で,介助者の多くは配偶者・親・子供で86%を占め,介助者のうちの65%が50才以上であった。社会福祉サービスの利用は19%と低く,住宅改造は72%,就労は41%,有配偶者率は51%で,11%が結婚し,11%が離婚していた。車の保有率は76%で,免許証取得者は73%であった。脊髄損傷者の社会復帰に影響を及ぼす要因は,損傷部位,年齢も大きな因子であるが,介助者の存在・住宅改造の有無・就業の有無・運転の可否・配偶者の有無などの社会的要素も大きく関与し,これらは個人的努力はもちろん,社会的合意のもとに,公的制度により解決が図られるべきものと考える。
著者
黄 志良
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.45-52, 1990-06

健康な男子学生77名,先天性盲人高校生3名,および交替制勤務に従事する看護婦4名を対象とし,生活時間調査を行なうとともに腋窩温の連続測定によってその概日リズムを記録し,学生については体格,体力,1日当たりの歩数,および課外運動の経歴をも調べた結果,1.学生について体温リズムのメサーは36.6±0.2℃,頂点位相は18時10分±2時間22分,振幅は0.52±0.16℃ (いずれも,平均土標準偏差〉であった。2.起床時刻と就寝時刻の間には有意の椙関を認めず,睡眠時間は起床時刻よりも就寝時刻に強く規定されていた。3.体温の頂点位相は就寝時刻とは関連せず,起床時刻と有意に相関していた。4.看護婦は夜勤時に昼勤時よりも振幅の低下を認めた。盲人高校生では健常な学生と比べて振幅が減少じでいた。5.1日当たりの歩数と起床および就寝時刻は逆相関じていた。6.体温リズムの振幅は歩数および近年の課外運動め程度と有意に相関し,身体活動の大きい者では振幅も大になるととを認めた。
著者
野村 曜子 山崎 克人 河野 通雄
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.239-245, 1998-03-31

^<99m>Tcガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸 (^<99m>Tc-GSA) は, 肝実質細胞のアシアロ糖蛋白受容体結合性肝シンチグラフィ製剤である。この^<99m>Tc-GSAの新しい体内動態解析法を考案した。本法では^<99m>Tc-GSAは血中と肝の間で双方向の移動のみ存在するとし, 全血液と肝の二つのコンパートメントとそれぞれの速度定数k1 (血液→肝), k2 (肝→血液) の二つのパラメータからなる2コンパートメント2パラメータモデルを設定し, 各コンパートメントの微分方程式を解いた。更に心, 肝の時間放射能曲線を解析し, k1, k2を算出した。その結果k1/k2は肝に対する^<99m>Tc-GSAの結合能を表す指標となった。また理論的最大肝摂取量としてVLmg (mg/3mgGSA) を定義した。次に肝障害が疑われた6例を対象として従来の指標 (HH15, LHL15, LHL/HH, LU15) と2コンパートメント2パラメータモデルに基づくk1, k2, k1/k2, VLmgを算出した。そして各指標と肝機能検査値との相関, 各指標間の相関を検討した。その結果, k1/k2とVLmgはLU15以外の従来の指標と良好な相関を示し, 肝機能検査値では血清アルブミン値, LAPと良好な相関を示した。2コンパートメント2パラメータモデル法はこれまで報告された動態解析法の中でも最も簡便かつ非侵襲的であり, 得られるk1/k2及びVLmgは肝機能指標として臨床応用の可能性が示唆された。