- 著者
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國枝 マリ
- 出版者
- 北海道東海大学
- 雑誌
- 北海道東海大学紀要. 人文社会科学系 (ISSN:09162089)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.131-147, 1988
本論文ではニューヨーク在住の日本人ならびに韓国人子女をとりあげ, それぞれが示すアメリカ文化への同化の現象と日本・韓国文化の獲得と維持の状況を究明しようとする。まず注目すべきは, アメリカ文化浸透の度合いは, 両親の将来設計の違いによるところが大であるという点である。すなわち, 一方では, 日本人の両親は, いずれ日本に帰国することを前提として子供の将来を考える。従って, 理想は別として, 現実には日本人としての知識, 教養, 受験競争力を身につけてほしいと考える。他方, 韓国人の両親は自分たちがアメリカ永住を考えているため, 道具としてのアメリカ文化, 言語能力は歓迎するが, 心だけは韓国人としての誇りを忘れない人間に成長してほしいと願っている。これを反映して, 日本人の中でも, 特に全日制の日本人学校に学ぶ子供はその生活のほとんどが事実上日本のそれと大差なく, アメリカ文化の影響は非常に限られている。一方, 週日は現地の学校でアメリカ人と共に学び, 週末のみ日本の補習授業校に通う子供は, アメリカ滞在が長期化するにつれ, アメリカの文化を身につけ, 同時に日本文化の維持が困難となる。その境界は滞米4〜5年と見られる。ところが, 韓国人子女の場合は, ほとんどがアメリカ文化の影響を強く受けている。しかし, 親の強い希望もあり, 韓国人としての自覚は, 家庭と韓国人学校とで人為的に子供たちの心に植え付けられつつある。