- 著者
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橘 智子
- 出版者
- 川崎医療福祉大学
- 雑誌
- 川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.1, pp.49-56, 1993
「選ばれし女性たち」は, やや怪気的な幻想風の物語詩である.主人公の回想によって過去に五人の女性との不毛の恋愛を匂わせながら,実は唯一人の理想の女性を希求しての観念的な愛の遍歴である.つまり女性に対する自我理想の投影と追求であり, 永遠に満たされない結果的ドンファンの物語である.この小論では, 五人の女性の顔が融合して変容する六番目の「理想の女性」が現実のものではなく, 男性のidealizationによる幻影であるとして捉え, 五人が合体して初めて「究極の女性」になりうるとの比喩の観点からこの詩を論じる.